第11話 悲しい現実

目隠しをして連れてこられた場所は、クーラーの効いている涼しい場所だった。

「おやじ、連れてきやした」

目隠しをはずされて、視界にうつったものはオフィスの待合室のようだった。

黒皮のソファーの真ん中にいた、ずっしりとした存在感のある男がおやじと呼ばれて

いた。

「ごくろうだった」ドスがきいた声は、緊張感をさらに煽った。

その周りには、3人のガラが悪そうな男たち。そして、床にはボコボコにされた男⁈ と、女⁈が口と手を紙テープで拘束されて転がっていた。

私に気がついたのか、女の方がしきりに声を出す。

男から金を受け取って確かめたおやじは、床の男女の口のテープをはずずように命じた。

「今時、奇特な嬢ちゃんだな。こんな糞なお友達の為に、お金もってわざわざこんなところまでくるなんてよ」

糞って…よく見ると、床にころがされていた男女は凛とその彼氏だった。

「洋子 あり がとう。来てくれて。本当 に ありがとう」口のテープをはずされて顔の原型がわからなくなる程に殴られていたが目からは涙が溢れていた。

「凛、あなたたちどうして…こんな」近寄ろうとすると「ごめ んね。ごめん。私、ご めん」凜は、ころどころ切れた顔や唇に血が滲んでいたが、言葉を発するのを止めようとしない。


「さあ、再開ごっこは終わりかあ。おい、おまえら。約束通り拘束をといてやれ」と、さきほどのおやじの声がする。

「二人とも、自由にしてやる。だが、毎月の支払いはちゃんと払えよ。いいか、俺らから逃げようなんて考えるなよ」先ほどの派手なシャツの男がいいすてる。体中が痛いのか、二人は庇いあいながらこの部屋から出ていこうとする。

「あっ、待って」と、二人の後を追うように歩きだすと

「嬢ちゃんには、まだ用があるんだ」目つきの悪い男が私の前に立ちはだかる。

「本当に…ごめん、洋子」と立ち去りながら、同じ言葉をつぶやくように繰り返す。


そして、ドアを閉めて出て行ってしまった。何がなんだかわからなかった。

私、おいて行かれた⁈

「本当に、悪いやつらだなあ。お前を好きにしていいらしいよ。お人よしもここまでくるとなあ。」6人の男たちは声をたてて笑った。

「さあ、つったっとらんでここへ座れ。あと、これとこれに名前と拇印を押して」机の前に書類が置いてある。(こんなのに、承諾したらとんでもないことになることぐらい、私にだってわかる)「悪いが嬢ちゃん、おまえに、選択権はないんじゃ、早くかかんか」脅迫されて、振るえる手で書類を書き終えて拇印をおす。

「いいか、これはおまえの友達の借金の連帯責任の公約書だ。これによって、おまえからも金の取り立てが出来る」

やっと、自分に何が起こったか理解した。お金を持ってここまで来て…。信じられない。何がごめんよ。情けないったら。

そう思ったら、涙が溢れてきて嗚咽も止まらない。

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