第10話 怖い
ATMから引き出した札束…日頃は、通帳の数字でしか意識したことがないから余計に厚みのあるピン札を目の前にしたときは現実味を感じた。ATMの周りには、詐欺に注意しましょうという注意喚起のための目立つデザインのシールがいたるところに貼ってある。
これだけのお金があれば、流行りの服やバックを買えるし旅行にいってもいい。それを控えめにして貯めてきたのに。それもすぐ人手に渡るのだけど。私ってばかなんだろうか?
このお金は戻らないだろう。私もばかだけど、凛も大ばかだ。どれだけ、あのしょーもない男につくせば気がすむの? 私にはわからないそんな愛し方なんて。あの占い師のいうことは当たったな…。
本当は当たらない方がよかったんだけどね。
夕方の雁団通りは、いつもながら人気がない。細い道路わきには、大きな黒のワゴン車が止まっていた。私の姿が見えるとライトを点滅させてサインを送ってきた。車に近づくと、ワゴンの横のドアをスライドして一人の男が出てきた。「どーも、洋子さん?僕、凜さんに頼まれて」と、出てきた男は細い顔立ちで派手なプリント柄のシャツを着ている。
「はい」凛の名前をだされたので、言う通りお金を渡す。それで帰ろうとしたが、凜が待っているので車に乗ってほしいと言われその通りにする。
車に乗り込むともう一人男が乗っていてあっという間に二人に抑さえられ、突然のことに抵抗もできず粘着テープで口や目隠しをされ拘束される。それから、車は発進した。
(私、これからどうなるの?お金だけ渡せばよかったんじゃないの?無防備すぎた。怖い…)心臓が激しく鼓動し、恐怖に襲われる。緊張のためか、しばらくすると睡魔に襲われた。
ガクンとブレーキを踏む衝撃で目を覚ます。
どれくらい、寝ていたのだろう。「さあ、着いたぜ。降りろよ}と男の声に朦朧とした頭から現実に呼び戻される。目隠しをされているのでなかば、ひっぱられながら車から降ろされた。
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