第8話 占い師ー翔也2
腹が減ったので、ハーブスパゲッティを頼むことにする。しかし、まだあの娘(誘ったわりには、名前を知らない)から友達の執着(生霊)が解けていない。とっさに、邪気払いのためのお守りの役目をする水晶をもたせた。何かあったら、僕の水晶と対になっているので感じとることができる。何もないにこしたことはないが…。
子供の頃をまた、思い出す。婆ちゃんの修行を受けながらも、3分の1は自分のやりたいことはやっていた。テレビをみたりゲームをしたりと、普通の子供の生活だ。勉強は、母の役割でもあった。
父は、スポーツをやらせたがっていて休みの日にはボール遊びから始まって、年が進むとキャッチボールにもつきあってくれた。内緒と言われていたので幼稚園のことがあってからは常に僕は能力については周りの誰にも、そして父にも内緒にしていた。
そして、小学校も上級生になる頃には将来占い師としての仕事をすることに、意思は固まっていた。
常々、プチ修行の合間に自分の熱意は婆ちゃんには伝えていたが。
中学への進路指導の頃には、父にもその決意を伝えることになる。
「そうか。うすうすは、感じていたけどな。幼稚園の頃、友達のお父さんが血まみれで立っていたとか。あの日のお前は、化け物をみたような顔だった。その日に葬式あったしな。その前にも、犬のジョンが高齢で死んだときも、ありがとうっていってたってたどたどしい言葉でいってたし。他にも色々な。できれば、普通の暮らしをしてほしかったが…まあ、お前が決めた道なら。お義母さんもその道筋はつけてくれてたと思うし…」絶対、反対をすると思ってた父が意外に簡単に許してくれたので、皆は少し拍子が抜けた。
それからは、学業と並行して婆ちゃんの仕事場へ仮見習いとして同行していた。生半可な決意では長続きはしないので実地体験してもらおうということだ。
婆ちゃんには3人の弟子がいた。それぞれ1級、2級、3級と能力の等級をつけるとしたらだが。3級の犬神 佐井さんは、霊感はまあまああるがそれよりも、この占い家業を経理と、マネジメント面で支えている。2級の目多利 翼さんは霊感は強いし透しもできるが、除霊はできない。1級の原田 美空は、この中で群を抜いている。透しだけでなく除霊やお祓いだけでなく、浄霊などもできる。ここまでなら、限りなくパーフェクトなんだが…。
彼女は男に限りなく弱いのである。
「運命の人だわ」と彼女が口にすると、周りの反応は(ハァー、またかぁなのである)いたって冷たい。
それは年下であろうと不倫であろうと、かまわないのである。恋多き女は、困ったことにその時期は能力がまったく使えない。でもなぜか1度も長続きはしない運命の男達なのだが。
僕が独立した時に、婆ちゃんは彼女を専属につけてくれた。まあ、最近では男に懲りていてこの仕事に、人生を捧げる⁈ なーんて言ってはいるが。
僕の初めての店としては、彼女がいたら心強いことと1人分の給料を出すのもやっとのことだろうということで。何せ他の二人分の給料とほとんどかわらないのだから。
婆ちゃんはこの道ではかなりの有名人で、その跡取りの孫ということもあり最初からこの店は軌道にのっていた。それには、3級の犬神さんの策略もあったが。
「翔也くんは、ルックスがいいから人気が定着するまで若年層の占いを手はじめにしたら?」その案は大当たりだった。今やテレビでも雑誌でも取り上げられるほどに。
(ねぇ、やっぱりあの人。占い師の翔也だよね。さっきの人、だれだろう。でも、すぐ帰っちゃったね)
(なんか、おれやっぱりふられたのかな…。まあ腹もふくれたし、そろそろ帰ろっかな)伝票を、持ってレジに向かう。
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