第7話 占い師ー翔也
ウエイトレスの注文も断り、慌てて立ち去る洋子の後姿をぼんやり見ていた。
(ちょっと、ずうずうしすぎたかな)
でもあの時の強い静電気がはしったことや、その後の一瞬の映像が2年も経った今も俺の中に忘れられずに残っていた。そのことを家族に話すと、婆ちゃんは笑いながら「自分の未来はみれないのがこの仕事の定めだが、神様も時々粋なはからいをするもんだ…運命の人かも」なーんて笑いながら、いうものだから。
「まあ、そんな人がいるなんて。ぜひ、家につれてきなさい」母は、嬉しそうに話す。
「だから、客の一人でまったくあれから接点がないんだから、連れてくるも何も」
「お前がこの仕事を選んでからは、彼女とか嫁さんとかの話は迂闊にはできないと思っていたが運命の人とは、なかなかロマンチックだな」父も俺の仕事は専門外で口をはさまないが、こういった話ができるとうれしそうだ。
「お兄ちゃんってホモじゃなかったんだあ。安心した。きれいな顔してもてるのにさあ。全然女の人に興味ないんだもん」菜実も、調子にのってつっこむ。
「ホモって、菜実ちゃん」母が、怒る。
「まあ、この商売してるといろんなものが見えたりするからな」と婆ちゃんは、しみじみ語る
俊也は冷めたコーヒーをかき混ぜながら、思い出していた。
俊也
そう、俺は家族に助けられて生きている。また、この能力を仕事に発揮できてるのもそのおかげだ。
「オギャー」と生まれて人の顔が認識できるようになった頃、婆ちゃんと母は俺の能力に気がついたという。家族以外に、何かを意識するように追っていたらしい。婆ちゃんは、跡取りが出来たと喜んでいた。娘は能力のかけらもなかったが、それはそれで普通の幸せを歩んでいるのを見守るのが幸せだった。その娘から、予期せぬ能力者が生まれた。その時から、婆ちゃんと母による特別メニューによる教育が始まる。いっけん周りから見てわからないだろう。そう、その意図には父の眼をそらす目的もあった。
お寺の修行僧のように部屋の掃除や、プールに遊びにいっても水の中でしばらく息を止めていたり、小さい頃から近所の山に登っては森林浴、精神統一をしたりといったことを遊びの一環として学んでいった。
心のケアも、もっとも重要事項として並行していった。なにせ、気が付くと周りのお友達の背後に色んな色が光っている。花実ちゃんは、青なんだね。というと、何言っているのってことになる。
俊也君は変なことをいうと周りから徐々に疎外されつつあったが。小さい子供には、見守りながら少しずつ、そのつど理解させていかなきゃいけないと母と婆ちゃんは思っていた。
そのきっかけとなった出来事はある日幼稚園で友達のお父さんが、血だらけになって園庭に立っていた。そのことをたどたどしい言葉だが、激しく興奮気味に園の先生に訴えつづけた。電話を受けていつもより早めに迎えに来た母は担任の先生から話を聞き「怖かったね。がんばったね」と、僕をぎゅっと抱きしめた。まだ怖くてしかたがなかったがその時、母は理解者なんだって幼いながらも悟った。
家に帰ってからは、婆ちゃんが初めて真剣にこの能力のことについて僕にわかるように語って聞かせた。
この能力は普通の人には使えないことや、見えても決してこれからは母と婆ちゃん以外には口にだしては言ってはいけないこと。そしてこの能力を持っていることは恐ろしいことでも気味がわるいことでもなく、将来は人の為になることもあるので怖がらなくてもいいこと。これまでも、少しずつ聞いた言葉もあったが、怖いおもいをした後は特に頭に入ってくる。
その日の夜、友達のお父さんのお葬式があった。交通事故で、前方の車による居眠り運転に巻き込まれての事故らしい。僕が見た姿は、きっと子供のことが気がかりだった父親だったのだろう。
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