第7話 店の事情は 

ヤンキー風な彼女らが一生懸命に掃除をしている姿をみて、この店の事情を聴いてみることにした。


彼女たちは万引きの常習犯だったり学校も行かずフラフラとこの店で、時間つぶしをしていた。それでも、店のオーナーはやさしく接してくれていつのまにかオーナーの顔を見たくて常連になっていたという。ジュース1杯とかの注文でたいした貢献にもならないが。

1年前ぐらいから、オーナーは店に顔を見せるのが少なくなり、その代わりに店を任されていたサブ店長の白戸 水藻が代理で店をしきっていた。だが性格がかなりきつくて、スタッフを育てるのにも向かないらしくそれが原因でスタッフもお客も激減していった。


昨日その白戸と口論になり『そんなにこの店が好きならあんたたちが勤めたら』と、捨て台詞を吐いて出て行ってしまった。その時に唯一残っていた彼女の取り巻きスタッフ達も、全員出て行ってしまう。取り残された彼女たちはどうしていいかわからず、家に帰れない者もいるのでとりあえずは店にとまったらしい。


「私らなんとかこの店を助けたいと思って。白戸サブ店は、性格が荒い人でその上レジからお金や食材をチョロマカスって他のスタッフも言ってたから見かねて注意したんだよ」この中で一番年上だろうか。困り切った顔で話し出す。


「とにかく、誰もスタッフがいないんじゃあ」じっと聞いていた佳代子が呟く。


「それよりも、このことをオーナーに報告しなきゃ。この状況をどれだけ把握しているのかわからない。連絡先は知っている?」店長も口を挟む。


彼女たちは、全員首を横に振る。


「まじかあ」


「ありえない‼」


とにかく、店長はオーナーの連絡先を探すべく2人の若者と手分けする。

佳代子は、残りの3人に付け焼刃てきにハンバーガーの作り方や飲み物の入れ方を教えることにした。


その手始めとして賞味期限の在庫の確認を徹底的にする。


連絡先が見当たらない店長達が途中から加わる。


基本バーガーの試作品を、彼女たちに教えながら作る。許可はとっていないがこの店で労働したということで、作ったバーガーは皆のランチになった。もちろん店長立て替えとしていったん支払うが。


「私達落ちこぼれで仕事も続かないし、だから久しぶりに働いたって感じ」一番年上の雨野 晴がまんざらでもない様子で、答える。


「掃除なんて、ほとんどしないもんね」


「そうだな」

他の子たちもジュースやバーガーを食べながらうなづく。


「おれ、なんで知らない人に怒られてんのかって思いながらハンバーガー作ってたよ。でも、自分たちで作ったものはとっても美味しい」緑色の髪とピアスが目を引く芦野 厳がまんざらでもない様子で3個ものハンバーガーを平らげていた。

そう、佳代子にとっては教える時は誰であれ手加減しないのである。


和気あいあいとお喋りをしていたら、お客さん⁈ が4、5名入ってくる。


「いらっしゃいませ」店長が席を立ち接客をしようと近寄っていくと、


「あなたは誰?人の店で何やっているのよ」その客たちは怪訝そうにいう。


「あっ、垣地さん達こそ、勝手に辞めるって出て言ったんじゃないですか。今日は、白戸サブ店は来てないみたいだけど…」晴が、気が付いて奥から近寄ってくる。


「だからって」


「まあ。ここに来たのは荷物を取りにきたのよ私達。白戸サブ店と私達違う店に移ることに決まったの」


「そうよね。もう関係ないわ」


「もう、あんたたちみたいなのに居座られたんじゃねえ。つぶれるのも時間の問題だし」と、口々にいろんなことを口走りロッカー室へと入っていく。


「ちょっと待ってくれないか、聞きたいことがあるんだ。何か手助けができないかと思って、僕たちはオーナーに連絡を取りたいんだ。連絡先を教えてくれないか?」つかさず、チャンスとばかりに店長が声をかける。


「なんで、私たちが見ず知らずのあなたに連絡先を教えなきゃいけないの」

「まったくそのとおりだ。客だが事情を聴いてる内におせっかいを焼きたくなったもので」と、かいつまんで話す。


「お願い、垣地さん」晴は、懇願する。


「まあ、あんたが言うんだったら連絡先ぐらい教えるわよ。もう、私達にはこの店のことは関係ないからね。それと店の外と中あんたたちで掃除したのね」他にも、何かいいたそうだったがカバンから携帯を出してオーナーの連絡先を教えてくれる。





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