第9話 同期ー青菜店長

店に近づくにつれて、まず驚いたのが外装。ハンバーガーチェーン店なんて、どこも同じだと思っていたのだが二人ともびっくりだ。

洒落た喫茶店といった感じ。看板も他の支店は派手な大きな文字で目立っているが、近くに来てやっとここがワイルドハンバーガー店だと気づく。

「びっくりしたでしょ。部長に何度もお願いしたの。それはもう耳にタコができるくらいに。そしたら、全国で1位の売り上げだせたら改装費出してやるって言われて…もう、みんなで死ぬほどがんばったわよ」

「聞いたか?」店長は、私に確認をとる仕草をする。


「えぇ」


「さすがあ。昔から、青菜は努力の人だったもんなー」店長は、昔を思い出したように親し気な口調で話す。


「何いってるのよ。貝地くんこそ他の問題のある支店を改革してまわってるんだって⁉ 若いのにやり手とかカリスマとか、噂でもちきりよ」


「まあな。俺なりに、努力してきたから」まんざらでもない様子。


「今日は私もシフトに入っているからゆっくりお喋りはできないけど、またゆっくりこの3人で会おうよ」


「わっ、わたしも?」


「そうよ。私達社員でもあなたの掲示板や、新メニューは好評なのよ。もっと、自信をもっていいのよ‼ 会えるの楽しみにしていたんだから。今日は、私のおごりだから好きなの食べていってね」そうにこやかな笑みを浮かべてから、スタッフ部屋に入っていった。


「皆に書いてもらった掲示板や、新メニューは会社のホームぺージにもあげたんだ。」


「そんなのずるいです。勝手に。恥ずかしいじゃないですか」


「まあ、青菜もいっていた通り好評だからいいんじゃない?それより、何か食べない。奢りって言ってたし…」


それにしても、店内に入って気が付いたのは植物がすごく多い。緑のつる草など。とてもリラックスできるし、配置にセンスが感じられる。入ってすぐの1階は親子づれ向けの店内になっている。

いたるところに、工夫がしてあって感心する。あの、バーガーショップにありがちな声を張り上げての注文がない。「こんにちわ。注文はおきまりですか?」と、最低限の言葉かけ。それと、コーヒーだけは喫茶店の価格とさほど変わらない。ぼくらは、ホットコーヒー2つと焼き肉のバーガーと、照り焼きチキンバーガーを2個づつと、ドッキングは、お任せ菜で頼む。注文番号を渡され2階の階段をあがる。


「すごい、まるでお洒落なカフェですよね。」2階も植物がいたる所に置いてあるが、絵画も飾ってある。


「やってくれたな。最近ホームページでも、ちらほら見てたんだけど、これほどとは。あのメニューは近くにある喫茶店や農家と契約しているそうだ。だから、バーガーに挟む野菜も四季折々の旬をお任せ菜として客は楽しめる」


「すごいですね。もう、感動ものです。」


「だろ。だから、君にも見せたかったんだ」二人とも、意気揚々に盛り上がっている。その心とは反対にいまだに目の前の店長とメールのやり取りをしていた、つうてん様と同一人物だったなんて、信じられない。






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