ハンバーガー愛の物語
クースケ
第1話 ダメな店員
「いらっしゃいませー、こんにちは,お持ち帰りですか? こちらでお召し上がりですか?」
「....」
「あのーお客様?」
彼は、顔をうかがいながら私に話しかけた。
「あっ、はい、」
後ろを見ると
なにせ、この駅前のワイルドハンバーガショップの昼食時はいつもの3倍の客で溢れている。広いレジカウンターまえにワッとやってきてワッと去っていく怒涛の時間帯だ。
それでも設立5年目を迎えて、当初メンバーを筆頭に手慣れた様子で列の波をこなしていく。その慌ただしい空気の中で急に時間がゆっくりと進んでいるのに気がついた。
アシスタントの京塚 莉菜は公休日だったが、真面目な性格ゆえに仕事場に立ち寄ってみた。外から自動ドアの前に立つとその異変に気が付いた。
皆をかき分けて前方にでるとそこには、花村 凛子とサブアシストの水木 玲奈が何やら、家族ずれのお客に対して平謝りを繰り返している。その後ろに待たされたお客の顔は苛立ちを隠せない。
私に気づいた玲奈は、目で救いを求めてくる。もう、お昼を食べに寄っただけなのにと思いながらも気が付いたら要領よくその場を収めていた。2時間の臨時出勤である。(ありえない)
場が収まって来てから同じ立場のアシストに「なぜ彼女、花村さんを接客にだしたの?」と問い詰めるとバイトが集まらなくて2年目の彼女を戦力にしたらしい。
それにしたってクビにしたいぐらいのダメなやつだった。それでも人が嫌がる土日祝祭日に出てくれるのでシフトには入れるが、いまだに新人でもやらないミスを繰り返す。パンを一つ頼むと1個持ってくるし(1つは、50個入りの1袋のこと)暗黙の了解なんだけど。マニュアルがあるにもかかわらず毎回ミスを連発する。当然いつまでたっても裏方。なのに…把握していないスタッフのメンバーのおかげでたまったものじゃない。
この日のことは当然、後日会議にかけられて彼女のことが問いただされた。
「彼女が入ると、ドジをした分の仕事が増えて大変なんです」
「何度言っても同じミスをくりかえすんです」
いくつもの不満がでて、予想はできてたつもりが褒められたことは一つもなかった。
いや、たった一つあるとしたら人がやりたがらない時間帯や日にちにも即答で出てくれること。それらの日は超忙しい日だけに、彼女が入る時は人員をたっぷりいれた時だけに限った。
当然やめてもらう方向性にきまりかけたとき、上司の一人が来月に店長が入れ替わるだろう!? 新しい店長に任せてみては…。といったん決まりかけた意見の流れが変わった方向を向いた。
残念ながら今日は来てないらしいが、若いのにもの凄くやり手の店長らしいと評判の彼に花村さんの指導を任せることに決まった。
)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます