第28話 ドラゴン征伐 4
「レッサーとは言えドラゴンを3頭瞬殺…か。『彼奴こそ真の
そう言う皇太子殿下は実に上機嫌だ。
だが領主たるアンバー辺境伯は己が領都エラムから冒険者を派遣する事を早々と決め、結果
その義弟予定准男爵が予想外の実力を示してみせた。最早危険!と言える程。
「確かに強力な人材は必要です。…ですが彼はあまりにも強すぎます」
「フム。そうだな。彼が皇家転覆、或いは国を興すと考えた時、それを防ぐ術は無いな」
本当に理解しておられるのか?
笑いながら言う事ではありません、殿下。
「貴女はどう思いますか?彼は
そう。皇太子殿下の執務室に珍しい客。
帝国正教会法皇キティアラ=マルク・クロノ公爵。
若干16歳ながら、その類い稀なる神聖回復魔法の使い手として法皇と公爵家当主の座についた少女。その為彼女の地位は皇帝陛下の次だ。皇太子でさえ敬意を示さねばならぬ相手となる。
「彼は有り難い事に『魔女の息子』ですわ」
「成る程。そう言う事ですか」
は?どういう事だ?
魔女の息子?そう。確かに彼は『
「ファブリ。彼の為人は君も知る立場ではないのかい?」
「私の両親は会った様ですが、私はまだ彼と直接会った事は…」
「成る程。処で君はその『滅びの魔女』についてどういう認識だい?」
「は?どういうとは?今議論しているのは、その子供の事では…」
「頭硬過ぎない?側近としてどうなの?」
な?法皇様とは言えそこ迄言われる覚えは?
「かの魔女は、国家転覆や国を興す処か世界を支配し得る実力だ。それこそ『魔王』とも呼べる程にな。だがどうだ?彼女は塔に引き篭もって国家権力すら全く興味を持たなかった」
「そして、その息子もね。ロディは王処か貴族である事すら面倒と思っている素振りがあるわ」
あ!そう言われてみれば…。
「それはさておき
「私、売られた喧嘩は買う事にしてるの」
法皇様は一族の嫁に手を出したと激昂し、実行犯たる騎士ファラン家を取り潰してしまわれた。主家たるブロン准男爵家、延いてはガスター侯爵家にも飛火する事態となり宮廷は激動したのだ。
通常ならば秘密裏に行う処遇。法皇様は敢えて事を大袈裟にしてしまった。その上で自ら皇太子殿下の元へ、こうして赴いて来た。
これは今迄中立を保ってきた法皇家が、ハッキリと皇太子殿下の派閥に肩入れした事を世間に示す事となった。
もう、第2皇子が太子となる芽は無い。
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「何たることだ…」
「申し訳ございません、侯爵閣下。我が陪臣の先走りの為に…」
平伏して謝罪するブロン准男爵。
が、こうも劇的に状況が変わっては最早何も手が打てない。
「これまでの様です、父上。かくなる上は皇太子殿下に帰順を申し出る事こそ肝要かと」
そう父を説得してみる。
こちらを睨み付ける父の血走った目は?
これは父の隠居も視野に入れねばならないか?
「致し方あるまい。ここ迄事が決してしまえば、これ以上は大逆の意とも取られかねん。エミリオ、仔細は任せる。事ここに及べば、儂は隠居でもせねば世間は治るまい」
ホッとした。
まだ父は国家の重責を担う判断力をお持ちだ。
後日、ガスター侯爵家の家督相続の届出が宮廷に出された。
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「感謝するよ」
「其方の願いと我の望みが等しかった故だ、小さき者よ。礼には及ばぬ」
静かに暮らしたい竜の親子と竜に関わりたく無い人族の思惑が一致して、何とか棲み分けに成功した形。この辺ならば穀倉地帯にも関係ない。
「いずれ何か困る事があれば手を貸そう、小さき者よ」
トライドルに帰ったオレはドラゴンとの約束をギルマス・ヘインズさんに話した。
「分かりました。本当に感謝します、ロディマスさん」
「これで依頼達成だな。竜征依頼って聞いて一時はどうなる事かと思ったが」
そう言うブレードさんに、オレは少し恨み言がある。
「何でオレが3頭瞬殺したって言うんですか」
「事実だろ?嘘は言ってねぇ」
「うわぁ。何の為にランクAパーティに付いて来たんだか」
「ほぉ?俺達に成果を丸投げする気だったのか」
「オレにとってはそれがベストだったんですよ」
「悪いが、もう少し実力通りの働きと立場を示してくれや」
オレはこの世界でのんびりとスローライフを送るつもりだったんだけどなぁ。
そんなオレの想いとは裏腹に、皇都ではガスター侯爵家の家督相続等政界の激変があったみたいで…。
その渦中…って言うか中心にオレがいるんだ。
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