第180話 目覚めた神秘の種火

 後継者の宝珠の所有者登録をしたことで、久しぶりに私のスキルがレベルアップした。

 いや、そんな言うほど久しぶりでもないかな?


『合成スキルが成長しました。現象合成が解放されました』


「げんしょーごうせい?」


 なんぞやそれは?


『現象合成:火、光、風といった本来合成素材として使えない現象を合成素材にできる』


 おおー、なんか新しい合成項目が出てきた!

 しかも触れない現象が合成素材になるの!? それは更なる高次元の合成が出来る予感だよ!


「なんか面白そう!」


 光や火ならすぐに用意できるし、ちょっと試しに合成してみるかな!“


「よーし、それじゃあさっそく新しい合成を試してみよう!」


 私は早速火を用意すると、数本の細い枝に燃え移らせて準備する。


「火を合成! そして鑑定!」


 火を合成するとオレンジだった輝きが蒼くなる。


『強き炎:通常の火よりも高温の炎。色は青に変わり炎の純度が増している。鍛冶をする際の炉の炎として使える』


 おおー、鍛冶で使う火になった!

 よく刀鍛冶の人が鉄を熱するときの映像に出てくるかまどの火みたいな奴だよね多分!


「なるほどなるほど、それじゃあ今度は一括合成!」


 私は全ての火を一括合成で合成する。

 火を最高品質にしたら一体どんな火になるんだろう?

するとまばゆい輝きと共に白い朝日のような火が生まれた。


『真龍の火:神によって生み出された原初の龍の火。あらゆる不浄を焼き尽くし世界を浄化する白の裁き。すべての鍛冶師が求める究極の火。この火の前にはどんな金属も飴のように溶け落ちるだろう』


 おお!? なんか凄い火が出来た!


「ニャ!? おニャーニャにしてるのニャ!?」


 と、私が新しい力の実験をしていたらニャットが血相を変えてやってくる。


「新しい力が使えるようになったから試してたの」


「一体ニャニをしたのニャ!? とんでもニャー力を感じるのニャ!」


 妙に興奮するニャットを宥めつつ、私は合成した炎を指さす。


「えっとね、炎とか光を合成できるようになったら火を一喝合成して最高品質にしたんだけど、そしたら真龍の火っていうのが出来たの」


「……?」


 私が説明すると、ニャットは眉をひそめて首をかしげると黙りこくってしまった。


「……ってニャニーッ!? 真龍の火ぃぃぃぃぃぃ!?」


 あっ、再起動した。


「真龍の火って本当ニャのかーっ!?」


「うん、鑑定先生がそうだよって」


 と、私は地面で燃え続ける真龍の火を指さす。

 って、あれ? なんか地面に沈んでない?


「なんか沈んでる?」


「沈んでるんじゃニャくて地面を燃やしてるのニャ!!」


 え? 地面を燃やす? どういう事?


「これが本物の真龍の火なら、それは世界を滅ぼす裁きの火ニャ! 周囲のある物を地面だろうと何だろうと燃やしてしまうのニャ!」


 え? って事はこのままだと地面を燃やしてそのままズンズン落ちていっちゃうって事!?


「最悪このまま周辺の大地に燃え広がってゆくのニャ!」


「ヤバいじゃん! 早く消さないと! ミズダ子、水ぶっ掛けて消して!」


「え? あー、まぁやってみるけど」


 けれど何故かミズダ子は気が向かないような様子で真龍の火に大量の水をかける。

 けれど、真龍の火はミズダ子のかけた水をジュワアアアアアと沸騰させてあっというまに蒸発させてしまう。

 なのに真龍の火は勢いを弱める様子さえ見せなかった。


「あーやっぱり無理かぁ。まぁ真龍の火だもんね」


 え? ミズダ子の水でも駄目なの? もしかしてヤバイ?


「もっと大量の水で消せないの?」


「無理無理。存在の格が違うもん。同じ水でも真龍に匹敵する存在の水じゃないと」


え、ええともしかしなくてもヤバイ?


「どどどどうしようニャット!?」


「こんな時だけニャーを頼るニャ! おニャーが作ったんだからオニャーがニャんとかするのニャ!」


 どうにかって言っても水で消えないものをどうしたら……そうだ!


「真龍の火を『解体』!」


『ブブーッ!』


真龍の火を解体しようとしたら、先ほど聞いたような音が鳴り響く。


『本アイテムの状態は不可逆です』 


「げー! これも解体できないの!? 解体スキル仕事してーっ!!」


 解体スキルが通じないならもう他に出来る事なんて……


「このバカコ! 残念精霊の水を合成するのニャ!」


 はっ! そうだ!


「ミズダ子! 水を頂戴!」


「おっけー」


 ミズダ子は私の意図を組んで水の球を複数生み出す。


「水の球を一喝合成!」


『世海魚の雫:神によって生み出された原初の魚の水。あらゆる命の源にして万物を洗い流す無慈悲の顔を持つ。すべての命を育む究極の水たりうる』


 よし、なんか凄そうなのが出きた!


「消えろー!」


 合成した水を桶ごと地面の穴に放り込むと、ジュドォォォォォ! というすさまじい音とと共に間欠泉のようなものが天へと昇っていった。


 むわりとした熱気が辺り一面に漂う、それが森を抜ける風によって吹きちらされたところでニャットが穴を確認にいく。


「……消えたニャ」


「……よかったぁー」


 どうやら真龍の火は無事に消えてくれたらしい。

 ミズダ子の水様々だよ。


あわや大惨事となりかけた事で、私は冷や汗を流しながら地面にへたり込む。


「ほんとうにトンデモニャーもんを作ってくれたのニャ」


「そんなこと言っても、知らなかったんだよー」


 いやホント、あんなとんでもない火が出来るとは思ってなかったんだって。


「おニャーの力は不透明なところが多いのニャ。これからは新しい事を試す前にニャー達に相談するのニャ!」


「はーい」


 こうして、軽い気持ちで新しい力を試した私は、すっかりお怒りになったニャットに絞られるのだった。


『……本当にこの人間に宝珠を渡してしまってよかったんだろうか』


 ん? 誰か何か言った?


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これにて魔獣族領域編完結です。

次回から新章となります。

また次回から隔週連載となりますのでご理解お願いいたします。

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