第168話 魔物迎撃大作戦開始!

「おーいトリー」


 ネッコ族の村に滞在して数日が経ったある日、トッリ族が村にやって来た。


「何か用かニャ?」


 やって来たトッリ族をネッコ族の長達が迎える。


「最近森を荒らす魔物達の事で話があって来たんだトリ」


 曰く、最近魔物達がやたらと興奮しているせいで多くの種族の村が被害を受けている。

 私の作った魔物寄せのおかげで村から引き離すことが出来るようになったけど、それぞれの村が自分達の村から離れた位置で魔物寄せを使うと他の村の近くに魔物を集める事になってしまって新たな騒動になってしまっているというものだった。


「それで近隣の種族で協力して魔物をおびき寄せ、一掃する事にしたんだトリ。ネッコ族も参加して欲しいトリ」


 なるほど、お互いに魔物寄せを使って相手の村に迷惑をかけてちゃそれが後々のしこりになっちゃうもんね。

 皆で魔物を一掃しようという考えは良いと思う。


「ニャー達は構わんが、具体的にはどこに集めるつもりニャ?」


 長が尋ねると、トッリ族の使者は頷いて答える。


「まずトリ達が魔物の来る方向を調べ、その方角に最も近い村周辺で罠を張るつもりトリ」


「魔物が来る方角?」


「どゆこと? 魔物はこの魔獣族領域に住んでるんじゃないの?」


「おお、女神の巫女殿トリ! 元気トリか?」


「はい、元気ですよ。でも女神の巫女じゃないです」


「はははっ、最近森を荒らす魔物達は明らかに数が多いんだトリ。明らかに昔からこのあたりに住んでいた魔物達以上の数なんだトリ」


 だから魔物達はこの魔獣族領域の外から来ているとトッリ族の使者は睨んでいると答える。ところで私の言葉を笑って誤魔化さなかった?


「ニャる程、魔物は外から来ているって事ニャ」


「トリ達はそう思ってるトリ」


 トッリ族の言葉に長は少し考えこむと、ウムと声を上げて頷いた。


「分かったニャ。ニャー達も協力するのニャ」


「助かるトリ。それじゃあトリは他の種族にも声を掛けてくるトリ」


 長の協力が得られると、トッリ族は喜びながらも他の種族勧誘の仕事に戻っていった。


「聞いたか皆の者! ニャー達も魔物狩りに参加する事にしたのニャ! 各々準備をするのニャ!」


「「「「ニャーッ!!」」」」


 ネッコ族達が前足を上げて雄たけびを上げる……んだけど、はたから見るとその光景は空き地で見かける猫の集会みたいで、ちょっとほっこりしてしまったのは内緒だ。


「という訳で白夜の魔猫様、お手数ではありますが、力を貸してはいただけませんでしょうか?」


「構わんのニャ」


「おお、これはありがとうございます!」


 長の要請を二つ返事で受けるニャット。


「じゃあ私は……」


「オニャーは留守番ニャ」


 ですよねー。


 ◆


 それから数日後、戦いの準備が整った事で、ニャット達は魔物と戦う為に村を出て行った。


「いってらっしゃーい」


「行ってくるニャ。ニャーが居ない間はそいつの傍を離れるんじゃニャーぞ」


 と、ニャットは私の横のミズダ子を指さして一緒に居ろと釘を刺してくる。


「まっかせなさーい! カコは私が守ってあげるから、貴方はそのままくたばっても大丈夫よー」


「ぬかせニャ! おニャーこそ居眠りして地面に吸われないように気を付けるニャ!」


 ……これはこれで仲が良いのかな?


 ともあれ先頭を飛ぶトッリ族に導かれ、ニャット達は戦いへと赴いた。


「でもこうなると手持無沙汰だねぇ」


 村に残ったのは子猫と老猫、そして子猫を守る母猫達で、だいぶ村は人気が少なくなっていた。

 いつもまとわりついてくる子猫達も大人達の戦いの空気を感じ取っているのか、ゴロゴロモードではなくちょっと尻尾が立っている。


「ほっほっほっ、大丈夫ですニャ肉神の巫女殿」


 と、村の様子を眺めていた長が話しかけてくる。


「いや肉神の巫女じゃないですから」


 っていうか、もしかして冗談じゃなく本当に肉神っているの? いないよね!?


「この魔獣族の領域は強力な魔物が良く出現しますので、村の男達が集まって狩りに行くことは珍しくありませんニャ。子供達も怯えているのではなく、早く自分も狩りに行けるようにニャりたいと興奮しているのですニャ」


 なる、ほど?


「それに今回は白夜の魔猫様もいらっしゃいますからニャ。何も恐れる事はニャいのですニャ」


 そうだそれだよ!


「あの、そのニャットの事について聞きたいんですけど」


 そうだよ、長ならニャットの事何か知ってるかも!

 よくよく考えたら私ニャットの事何も知らないし、そのニャットの故郷にやって来たと思ったら白夜の魔猫とか呼ばれて崇拝してるし、一体ニャットって何者なの!?


「白夜の魔猫様の事ですニャ?」


「はい、ニャットはこの村で生まれたんですよね? なのに何であんな王様みたいに崇拝されているんですか?」


 普通に考えたらニャットが村長か村長の息子みたいなポジションなのかなって思うけど、その割には当の村長までニャットを崇拝してるんだよね。


「いや、白夜の魔猫様はこの村の者ではニャいニャ」


「え!?」


 うそっ、ニャットってこの村の住人、いや住猫じゃないの!?


「白夜の魔猫様はある時突然この地に現れたのニャ。そして瞬く間に近隣種族全てを倒し、この地の頂点に達したのニャ。闇夜に輝く白き体毛が数え切れぬ猛者達を軽々と投げ飛ばしてゆくその様から、いつしか白夜の魔猫と呼ばれるようになったのニャ」


「しかも全種族に喧嘩を売ったの!?」


「ここじゃよくある事ですニャ。若い衆がよそ者に力比べを挑み、負けたら他の者が挑む。そして噂を聞きつけた他種族も勝負を挑んできて、最後まで立っていた奴が強いとなるのですニャ」


 なんか最後バトルロイヤルになってませんでした!?


 つまりニャットはこの魔獣族の領域で手当たり次第に戦いまくって頂点に立ったから、ネッコ族達に崇拝されているって事?

 うーん、そう考えるとイッヌ族がニャットを敵視するのもちょっとだけ分からないでもない。


「ニャー達にとって強いということは何よりも重要な事ニャ。だから白夜の魔猫様はこの森で一番偉いお方なのですニャ」


「な、成程……」


 うん、なーんにも分からんかった。

 分かったのはニャットが昔の不良漫画みたいな地域最強決定戦をしたって事だけ。

 結局ニャットの正体は謎のままって事?


「あれ? でも前に誰かにニャットについて重大な情報を聞いたような……」


 なんだったっけ? 記憶がおぼろげで思い出せないや。


「って、あれ? それじゃあ何でニャットは私をここに連れてきたの?」


 ニャットの故郷だったからじゃないの?

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