第21話 防壁を守れ!!

 薬草を売る為、私は商人ギルドにやって来た。

 だけどギルド内はいつもとは違った喧騒に包まれていた。


 騒がしいのはいつもの通りなんだけど、剣呑な空気がギルド内に渦巻いている。

 更に受付を見ると『非常事態につき本日の取引は中止させて頂きます』と書かれた張り紙が張られていた。


「これは困った」


 せっかく薬草を売りに来たのに、これじゃあ買取を頼むことができないよ。

 まずは職員の人に相談するべきかなと思って周囲を見回すと、丁度いつもの受付のお姉さんの姿があった。


「とにかく手当たり次第に店に出向いてため込んでいる薬草とポーションを吐き出させなさい! 店に薬を卸している錬金術師の所にもいくのよ! 行商人にもあたりなさい!」


 お姉さんは他の職員の人達に指示を出しているみたいだ。

 指示を出せるって事は意外と上の役職だったりするのかな?


「すみません。隣町の商人が町の商人とトラブルになったと苦情が……」


「非常事態だって張り紙を見せて追い返しなさい!」


 おおう、かなり忙しそうだなぁ。

 でも薬草は欲しいと思うから、勇気を出して話しかけてみよう。

 要らないなら持って帰ればいいだけだし。


「すみませーん」

 

 私が近づいて話しかけると、お姉さんはすぐにこちらに気が付いてくれた。


「だから今日は……あらマヤマカコさん。申し訳ないのですが本日は非常事態で取引は出来ないんです」


 私の姿を見たお姉さんは急に柔らかい雰囲気になると、かがみ込んで私と視線を合わせながらそう言った。

 ……いやね。なんというかこの対応、凄く小さな子を相手にしているように感じるのは気のせいですか?

 ま、まぁ良いや。門前払いにはならなさそうだし。


「薬草の買取りをお願いしたいんですけど」


「ですから本日は……薬草?」


 薬草という言葉にお姉さんの目がクワッと開く。いや迫力凄っ!?


「は、はい。魔物の群れが近づいてきて騎士団や冒険者さん達が戦ってるんですよね? だったら怪我人も出ると思ったんで、採取した薬草を持ってきたんですけど」


「採取したんですか!? どこで!? ああいえ、今はそれは良くないけどいいんです。それよりも薬草はどれくらいあるのですか!?」


 お姉さんはずずいっと薬草を見せてくれと詰め寄って来る。


「えっとですね……」


 私は魔法の袋から取り出した薬草を近くのテーブルに乗せてゆく。


「こ、こんなに採取出来たんですか!? しかも高品質な薬草まで!!」


 ふふふ、メイテナさん達と森に行った時に採取した薬草も持ってきたからね、結構な量でしょ。

 それにこの薬草のお陰で最高品質の薬草も良い感じに誤魔化せてるんじゃないかな?


「森の外周にはまだ薬草の群生地が数か所ありましたから、これでも足りなければ採取に行くといいですよ。向こうの街道を真っすぐ進んで西の森が見えたらすぐに森に入ったら外周部に群生地がありました」


「そんな近くに!? というか採取地を教えて良かったんですか!?」


 あー、これはもしかして言わない方が良かった奴かな? 採取する人達にとっては群生地って秘密の穴場みたいな感じなんだろうか?

 でも私が作ったなんちゃって群生地だしね。


「構いませんよ。今は非常事態ですから。それに私達は旅人なので、いずれ居なくなるのに秘密にしておく必要もないでしょ。その内誰か見つけるでしょうし」


「は、はぁ……」


 お姉さんはそれで良いの? と目をパチクリしていたけれど、すぐに状況を思い出したのか薬草の査定をしに奥へ走って行った。


するとそう時間もかけずにお姉さんは戻って来る。


「お待たせしましたマヤマカコ様!」


「随分早いですね」


 いや実際早いよ。この町に来て最短タイムだ。


「今日は他に査定待ちの客はいませんから。それに非常事態ですので、略式で査定させて頂きました。勿論買い叩くような真似は致しません。薬草の群生地の情報代と非常時の協力的対応を加味して買い取り額を上乗せさせて頂きました」


 おおっ! 太っ腹!!


「薬草は半数が最高品質、残りも買取に問題ない品質でしたので、金貨150枚で買い取りさせて頂きます」


「おおー!」


 うひょー! 初めてこの町に来た時より高く売れたよ!


「薬草の群生地に関しては確認が必要ですのであまり高額は出せませんが、現物がある以上薬草の群生地があるのはほぼ確定です。全て取り尽くしたりはしていませんよね?」


「はい。どの群生地でもある程度のこしてあります」


「大変結構です。群生地が確認できましたら追加で報酬を支払わせて頂きますね」


「あっ、じゃあその分はギルドの口座にお願いします。あとこのお金も金貨10枚以外は全部口座に預けます」


「承知いたしました」


 よっし! かなりの収入になったよ!

 これ以上ここに居ても迷惑だろうから、さっさと宿に帰ろう。


「あの、マヤマカコ様」


「はい?」


 去り際にお姉さんが私を呼び止める。


「本当にありがとうございました」


 そう言ってお姉さんは深々と私に頭を下げ、周りに居た職員さん達が一体何事かとギョッとする。


「あ、いえいえ、当然の事をしたまでですから。気にしないでください!」


 実際の話、私も善意と言いつつ寄付ではなく買い取ってもらったんだから一方的な善意ではなく損得を考えた行為なわけで、なのでお姉さんが頭を下げる必要なんて全くないんですよ。


「じゃ、じゃあ私はこれで」


 これ以上ここに居たら変に目立っちゃうと思った私はそそくさと商人ギルドを後にした。

 けど、あんなに喜んでもらえるのなら来た甲斐があったよね!


 ◆


 さて、用事も済んだし早く宿に帰らないと。

 なんだか沢山の人の声がワーワー聞こえるし、かなり緊迫した空気を感じる。


「急げ! アイツ等は町の傍まで来てるんだぞ!」


「東側は最低限の人員でいい! 魔物が来る北西側の壁に人を集めろ!」


 「壁を破壊された時の為にありったけの建材を運べ!」


 衛兵さん達が大きな声で指示を出しては武器や木材を持った人達が走り回っている。


「おいそこの子供! 魔物が町に近づいて来てるんだ! 早く家に帰れ!」


 ええ!? この状況で子供が出歩いてるの!?


「キョロキョロしてんな! お前の事だお前の事!」


 そう言って衛兵さんが私の方に向かってくる。

 え? 後ろに誰か……居ない。


 ま、まさか……

 私は自分を指さして衛兵さんを見ると、衛兵さんはそうだと言わんばかりに頷いた。


「一体どこの子供だ? ん? なんで子供が鎧を身に付けてるんだ?」


 ってやっぱ私の事かぁぁぁぁぁ!!

 何でこの世界の人間は私の事を子ども扱いするんじゃぁぁぁあぁ!


「おい、どこの家の子供だ? 家まで送ってやる」


 うぐぐ、口は悪いが意外とこの衛兵さん良い人っぽい。


「ええと、私は旅の商人です。商人ギルドに取引の品を出してきたので今から宿に帰る所です」


「商人!? 子供に鎧を着せるとは随分と過保護な親だな!?」


 くわぁー! だから子供じゃないっちゅーねん!

 だけどこの状況で言い争いをしても周りに迷惑をかけるだけだし、私は大人の女だからね!


「宿にも自分で帰れるから大丈夫です」


「そうか? 今は町の外で魔物の群れが暴れているから、本当にすぐに帰るんだぞ。寄り道するんじゃないぞ」


 衛兵さんは宿に向かう私に何度も寄り道をするなと後ろから声をかけてくる。

 だから子ども扱いするなっちゅーねん!

 そして曲がり角を曲がってようやく衛兵さんの声が聞こえなくなった事でホッと息を吐く。


「うーん、私そんなに子供っぽかったっけ? いやいや日本じゃ普通、普通だったから。身長はクラスで下から数えた方が早い程度には低……かったけど一番下じゃなかったから!」


 きっとあれだ。海外の人から見たら日本人は子供に見えるってアレだよね! そうに決まってる!


 そんな時だった。

 突然、ドォォォォォォン!! と物凄い音と振動が走ったのだ。


「え!? 何々!?」


 一瞬地震かと思ったけど、もう震動は終わっているから地震じゃない。

 けれど再びドォォォォン!! ドォォォォォン!! と二度三度と連続して物凄い音と振動が走る。

 やっぱり地震じゃない。地震はこんな断続的にとぎれとぎれで揺れたりしない。


「何が起きてるの?」


 誰かに聞こうにも、町の人達は家の中に閉じこもっていてお店も開いていないし、忙しそうに走り回っている衛兵さん達に声をかけるのも迷惑にしかならない。

 考えられるのは一つ、魔物が町のすぐ傍で暴れているんだろう。


「ニャット、大丈夫かな……」


 それに冒険者が戦うって事は、メイテナさん達も戦ってる筈。

 しまった、薬草を全部売らずに皆の分くらいは残しておくんだった!


「でももう売っちゃった後だしな。とにかく今は宿に帰ろう」


 私は足早に宿へ向かう。

 しかし宿に向かうにつれ、音と振動の感覚が短くなっていく。


「急いで壁の近くに住んでいる住民を反対側に避難させるんだ!」


「くそっ、城壁崩しがあんなに居るなんて聞いてないぞ!」


「城壁崩し?」


 私は近くで話し合っていた衛兵さん達の話を物陰に隠れて聞き耳を立てる。


「このままだと城壁崩し共の角で壁を破壊されるぞ! そうなったら町の中に魔物が入り込む! そうなる前に町の住人を逃すべきじゃないのか?」


「逃すにしても護衛の数が足りん! 防壁が無い状況で魔物に襲われたら守れる者も守り切れん! 今の状況で出来るのは空いた穴から入り込む魔物を待ち受けて迎撃しつつ、バリケードを築いて外の本隊が魔物を討伐するまで耐えるだけだ!」


「そんな急場しのぎの方法じゃ時間稼ぎにもならんぞ!」


「分かってる! だがそれしかない!」


 ……これは予想以上にヤバいかも。

 城壁崩しってのは魔物の名前だよね多分。

 で、その魔物が町を守る壁を壊してると。

 そんで壁が壊れたらそこから魔物が入って来て、私達を食い殺……


「いやいやいやマジでヤバイじゃん! 宿に籠ってもどうしようもないよそれ!!」


 どうする? 町から逃げる? でも衛兵さん達が話していた通り、私一人じゃすぐに魔物に追いつかれておしまいだよ。

 鎧を買ったけど、魔物の群れに襲われたらどれだけ持つか。

 って言うか鎧で覆ってない部分から食べられるだけじゃん! 意外に鎧も使えないな!


「それに逃げ切れたとしても町の人達を見殺しになる訳で……でも私が戦ってもどうにもならないし……」


 何かいい方法は無いの? 壁が壊されるまでにニャット達が魔物を倒してくれる可能性は……さすがにこれは希望的観測が過ぎるってものだよね。

衛兵さん達だって戦ってるニャット達の状況を見てあんな話をしていたわけだし。


「となると自分達で何とかするしかないか……でも私に何が出来る?」


 私に出来るのは合成スキルだけで、攻撃魔法とかは使えない。

 合成スキルで分かっているのは、同じ素材同士を合成すると品質が上がる事、別種の素材同士を合成すると違う素材になる事、同じ魔物素材の装備および魔石を合成すると変異種の装備になる事、装備品に変異種の魔石を合成すると特殊な効果が付くことくらいかぁ。


 あとは一括合成だけどそれは今回役には……ん? 待てよ。

 私は魔法の袋から今日採取したボールスライムの変異種の魔石を取り出す。


「ボールスライムの変異種の魔石を合成した際の効果は衝撃を和らげる効果が付く。じゃあそれを町を覆う防壁に合成したら……?」


 私は一番近くに見える防壁に向かって走り出す。

 上手くいくかはわからない。全く役に立たないかもしれない。でももしかしたら役に立つかもしれない。


 防壁にたどり着いた私は、魔法の袋からボールスライムの変異種の魔石を取り出すと、防壁に押し付けて声を上げる。


「防壁にボールスライム変異種の魔石を合成っ!!」


 次の瞬間、防壁が眩く輝いた。


「どうだ! 鑑定!!」


『壊れかけの防壁:町を守る為に作られた石とレンガの防壁。ボールスライム変異種の魔石の力でわずかに衝撃を和らげる効果があるが気休め程度』


 よしっ! 効果が付いた! でも気休めって……


 ドゴォォォォォォン!!


「全然効果ないーっ!?」


 あわわわっ、全然音も振動も小さくなってないよ!

 いやまだだ! 防壁に対して使った素材の量が少なすぎたのかもしれない!

 私はありったけのボールスライム変異種の魔石を防壁に押し付けると、再び叫んだ。


「合成!!」


再度防壁が眩く輝く。今度こそどうだ!?


 ドゴォォォボヨヨォンッ


「おおっ!?」


 今、明らかに音が変わったよね! それに振動も殆どなかった!


 ドボヨォォォン!! ドボヨォォォン!!


 やった! 完全に音が変わってる!


「やった! 成功だ!!」


 よかったー!これで防壁が破壊されるのを防げた! 防げた筈だよ!!


「……」


「よし、向こうの防壁の傍に行って衛兵さん達の話をっ…………ムグッ!?」


 突然私の口が何かに塞がれる。

 な、何事!?

 次いで聞こえたゴッという音と共に、私の意識は掻き消えたのだった。


 ◆ニャット◆


 町を出たニャー達は騎士団が戦っている平原に向かっていたニャ。

 そこで騎士団と合流して共に戦う予定だった……のニャが。


「魔物の群れだ! 総員戦闘準備!!」


 予定していた平原にたどり着く前に魔物の群れと遭遇してしまったのニャ。


「不味いぞ! 町のすぐ傍じゃないか!」


 予想以上に町に近い場所での戦闘にニャッてしまったために冒険者達に動揺が走ったニャ。 


「嘆いていても状況は変わらん! 戦う場所が変わっただけだ!」


 そこで声を上げたのは、カコに短剣の扱いを教えていた女冒険者だったニャ。確かメイテニャと言ったかニャ?


「そういうこった。そもそも俺達冒険者はどこで魔物と会おうが戦う事に変わりはねぇだろ?」


 イザックとか言った冒険者も剣を構えて声を張り上げるニャ。

 ニャフフ、コイツ等は戦士としての心構えがしっかりしているみたいだニャ。


「そ、そうだな! どのみち戦うのは変わんねぇもんな!」


「よし! 行くぞお前等!!」


「「「「「おおーーーーーっっっ!!」」」」」


 流石は上位冒険者だニャ。簡単に他の連中の心を掴むと、イザック達は魔物に向かって突撃を開始したのニャ。


「ニャーも行くニャ!」


 ニャーは雑魚には目もくれず大物を狙っていくのニャ! ネッコ族の戦士は強い敵との戦いを求める……って設定だったニャ。


「ニャーッ!」


 分かりやすくデカくて他の連中が苦戦しそうな魔物を狙うと、ニャーはその体を素早く駆け上り首を爪で切り裂いたニャ。


「グッッァッッ!?」


 喉を切り裂かれた魔物は呼吸を封じられ、声を上げる事も出来ずに地面に倒れ伏したのニャ。


「す、凄ぇ。オーガを一撃で!?」


 ニャーは次々と大物と明らかに強い個体を狙って倒していくニャ。

 どれだけ強かろうとも、所詮下界の魔物はニャーの敵じゃニャいニャ。


「とはいえ、数が多いのは問題だニャ」


 ニャー一人でも全部倒す事は出来るニャが、流石に力を抑えたままじゃ時間がかかるニャ。 本気を出すと怒られるしニャア。


「突出するな! 近くにいる連中と連携を取れ! 複数で一体に挑め! 負傷者は後ろに逃がせ!」


 そんな中、メイテニャの仲間達が苦戦する冒険者を援護して回っていたのニャ。

態勢を立て直した冒険者達はメイテニャの指示を受けて戦線を拮抗させていくニャ。


「うーむ、流石は元騎士だニャ。堂に入った指揮の仕方ニャ」


上位冒険者であったこと、そして仲間達が連中を援護して回っていたのも功を奏したニャ。

命を助けられた冒険者達は素直にメイテニャの指示に従い始めたのニャ。


「あれなら雑魚は任せても大丈夫ニャ。ニャーはもっと奥の大物を狙うべきかニャ」


魔物の群れの襲撃はボス個体を狙うか、一定の割合でいる大物個体か指揮個体を一定数倒す、もしくは群れの大多数を倒す事で逃走を始めるのニャ。


この場合群れの大多数を倒すのは現実的じゃニャいから、ここはボス個体狙いで指揮個体と大型個体を見かけたらついでに倒していく感じかニャ。


そうニャーが方針を決めたその時だったニャ。


 ドゴォォォォォォン!!


 突然町の方角から轟音が響いてきたのニャ。


「大変だ! 城壁崩しだ!」


「ニャンと!」


 驚いたことに籠城戦の天敵である魔物、城壁崩しの群れが町を襲っていたのニャ。


「しかし城壁崩しくらいの大物がいたのニャら、ニャーが気付かない筈が無いニャ!」


「本体からはぐれた小群だ! 別方向から突撃してきやがった!」


 この状況で城壁崩しだけが都合よくニャ!? ありえないニャ!

 本当に偶然なのかニャ!? それともニャニ者かが意図的にやったのニャ!?


「いニャ! 今は考えている暇はないニャ!」


 既に城壁崩しは防壁を破壊すべく突撃を行っているのニャ。

 

「まずはあいつ等だけでも倒すニャ!」


 防壁が破壊されるまでにたどり着けるかニャ!?

 ニャーは速度を上げて町に向かうニャが、度重なる城壁崩しの突撃によって防壁には既に大きなヒビが入っていたのニャ。


「これは……いざとなったらカコだけでも」


 そうニャーが覚悟を決めたその時だったニャ。

 突然防壁が眩く輝きだしたのニャ。


「アレは!?」


 いや、ニャーは知っているのニャ! アレはあの馬鹿女神がカコに与えたバカみたいな加護の光だニャ!!


 更にもう一度防壁が光を放つニャ。

 すると……


 ドゴボヨヨォォォォォン!!


 ふざけた音を立てて防壁にぶつかった城壁崩しが弾かれたのニャ。


「「「「「なぁっ!?」」」」」


 状況が分からニャい冒険者達が驚きの声をあげるのニャ。

 だけどニャーだけは状況が分かっていたのニャ。

 何を使ったのかまでは分からニャいが、アレは間違いなくカコが防壁に何かを合成したのニャ!


「何にせよ、時間は稼げたのニャ!」


 防壁へとたどり着いたニャーは、即座に城壁崩し達を倒して回ったのニャ。

 壁を壊すのが得意なコイツ等は、至近距離での戦いにおいて小回りが利かないのが弱点だニャ。

 結果、そう時間を置かずして城壁崩し達はニャーの爪によって残らず討伐されたのニャ。


「ふう……」


防壁の上に飛び乗って戦場を見渡せば、ほぼ大勢は決しかけていたのニャ。

これならニャーが戦場に戻らニャくても大丈夫だニャ。


「やれやれ、本当ニャら叱らないといけニャい所ニャけど、今回は褒めてやるかニャ」


 城壁崩しを倒して疲れたと言う事にしたニャーは、目に見えて大勢が決していた事もあって早々に町に戻る事を許されたのニャ。

 けれど、カコの姿は宿にも、そして町の何処にもニャかったのニャ……

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