錬金術? いいえ、アイテム合成です!~合成スキルでゴミの山から超アイテムを無限錬成!~
十一屋翠
第1章 加護の目覚め編
第1話 神様のペットを助けました
--あれ? ここは?--
気が付くと私は真っ白な空間に居た。
『気が付きましたか間山香呼』
何もない空間に慈愛に満ちた女の人の声が聞こえた。
--誰!?--
『私は女神です』
すると私の前に女の人の輪郭をした光が現れた。
--女神様? 貴方が?--
女神様って光るんだ。
『人間に私の本当の姿を見せると魂が壊れてしまうの。だからこうやって人間でも耐えられる形にしているのよ。人間風に言うなら解像度を下げるというやつね』
解像度って……女神様意外と俗っぽい話題もいけそうな感じ。
『さて間山香呼、貴女は自分がどうやって死んだか覚えていますか?』
私がどうやって死んだか? ええと確か学校帰りに……そうだ! 車に轢かれそうになってる猫、いや犬、いやフェレットを助……あれ? 私何を助けたっけ?
あの時私は確かに何かを助けたんだけど、何を助けたのかを思い出せない……
『間山香呼、貴女は私のペットを救って死んだのです』
「ペット?」
え? あの生き物が神様のペット?
『その通りです。あの子ったら、外は危ないって言ったのに何も告げずに出かけちゃうんだから……ん、んんっ!! 私のペットは神界から抜け出して貴女の暮らす世界で散歩していたのです』
なんと、流石女神様のペットだけあって散歩のスケールも大きいなぁ。
でも女神様の家? のセキュリティはガバガバなのはわかった。
にしても意外だ。私自分が死んだのにあんまりショックを受けてないような……? もしかして私って自分で思っているより物事に動じない人間だった?
『それは私の力で貴女の精神が平静に保てるように調整したからです。でないと人間の脆弱な魂では死の衝撃で発狂してしまいますからね』
--ひえっ!? 発狂!?--
うおお、マジですかぁ……女神様ありがとうございます……
『さて、納得した所で話を戻しましょうか。間山香呼、貴女には私のペットを助けたお礼として、私直々に転生させてあげましょう』
--転生……ですか?--
『そうです、異世界に記憶を持った状態で転生させてあげます』
異世界に? 何で? 生き返らせてはくれないんですか?
『残念ながら、貴女の世界は別の神様の管轄なので勝手に生き返らせる事が出来ないのです。具体的に言うとよそ様の家にペットが入り込んで盆栽を割ってしまった感じなのです』
神様いちいちたとえがマンガチックだな。しかもお父さんの本棚にあるような古い漫画みたいな。
『黙らっしゃい、んっ、んん。生き返らせることはできませんが、代わりに私の管理する世界への転生なら可能と言う訳です。いわゆる慰謝料と言うやつですね』
慰謝料として転生かぁ、女神様の慰謝料は規模が大きいなぁ……
『とはいえ、私の管理する世界は魔物もいる過酷な世界です。今のまま貴女が私の世界にくるのは自殺行為。ですから貴方には加護を一つあげましょう。人間風に言うならゲームのスキルのようなものですね。このリストから選ぶがよいでしょう』
と女神様の前にゲーム画面の様なリストが現れると私の前にやってくる。
リストにはご丁寧にスクロールバーまでついており、私の意思に合わせてリストがスクロールしてゆく。
リストには剣技、槍技、火魔法、水魔法、回復魔法といった戦いに使えるスキルから、鍛冶、料理と言った生活に役に立つスキルまで様々だ。
うん、ホントにゲームみたいでちょっとワクワクしてきた。
というか本当なら今日は新作ゲームの発売日だったんだよねぇ。
うん、自慢じゃないが私もそれなりにゲームをやるんですよ。
まぁ運動神経無いので、RPGがメインなんだけどね。
私が買いに行こうと思っていたゲームはエリゼの工房っていうアイテムをクラフトする長寿錬金術ゲームの最新作だ。
アクションゲームが苦手な私だったけど、お父さんの部屋にあったこのシリーズの第一作メリーの工房をプレイして大ハマリしてしまったのだ。
何の役にも立たない素材アイテムをメリーが調合すると、それがさまざまな効果を持つアイテムになるのが楽しくて楽しくて、ついつい現実でもメリーを真似して醤油やらジュースやら混ぜて自作ポーションとかを作ったものである。……あとでお母さんにバレて物凄く叱られたけど。
うん、あの時はお尻がすっごく痛かった。
さすがに冷蔵庫の液体全部混ぜたのは自分でも悪かったと今では反省している。
ともあれ、その新作買いに行く途中で神様のペットを助けた事で、ゲームの世界ならぬ本物の異世界に行くことになるんだから正にゲームみたいな展開だよ。
まぁ死んでるから割とシャレにならないんだけど。
……うん、神様の力で強引に冷静にしてもらえてよかった。
もしやってもらってなかったら色んな意味で大変なことになっていただろう。
ともあれ、そんな理由もあってでゲームの様なスキルが貰えるというのなら、ワクワクしないわけがない。
いやまぁ、現実逃避ともいうんだろうけど。
でもいいじゃない、こんな状況なんだから現実逃避くらいしたって。
という訳で私はリストをスクロールしてスキルを見繕う。
と言っても私はある程度自分の欲しいスキルに目星がついていた。
だってこの状況で私が欲しいスキルって言ったら一つだからね!
えーっとこれは合成で……その下は……あった、これだ!
--神様、私はこのスキルが良いです!!--
私が選んだのは『錬金術』スキルだった。
そう、折角好きなスキルを貰って異世界に行けるのなら、私もエリーみたいにアイテムを調合できる錬金術師になりたい!!
現実には存在しないポーションやエリクサーを本当に作り出せると思うとワクワクするうよ!
それに私は戦うのは得意じゃないしね。
だから異世界で使うなら町から出ずに済む錬金術が良いだろう。
町でお店を開いてアイテムを調合しながら暮らすのだ。
『本当にそのスキルで良いのですね?』
--はい! このスキルでお願いします!--
私は勢いよく錬金術スキルを指差して頷いた。
『いいでしょう、では貴女にはそのスキルを授けましょう』
女神様は鷹揚に頷くと私に向かって告げる。
『では行きなさい間山香呼よ。それとサービスで言語や読み書きは理解できるようにしてあげます。また生前の肉体の性能では生きていくのは困難ですから、元の肉体をベースに向こうの世界の人間の平均値に調整しておきます。ついでに虫歯も治しておいてあげましょう』
--おお! 女神様超親切! あっ! ついでに胸ももう少し大きくして……--
『健やかに私の世界を楽しんできなさい、間山香呼』
--あっ、待って! だから胸を!!--
だが要望を伝えきる前に、私の意識は闇に沈んでいったのだった。
『……ふぅ、一仕事終わったし一杯ひっかけてから帰りましょ。あー、女神ムーヴ疲れたぁー』
女神様! ボイチャ? 切れてないですよ!!
◆
「う……」
意識を取り戻すと、光が目に飛び込んできた。
「うわっ」
一度目をつぶり、ゆっくりと目を開く。
最初に見えたのは緑。
うっそうとした木々と、その隙間から洩れた光だ。
「ここは……森?」
どうやら私は森の中に居るみたいだった。
「ええと……確か私は死んで、女神様と出会って異世界に来たんだよね……」
私は深呼吸をしながらこれまでに起きた事を思い出す。
ってことはここが異世界?
周囲を見回せば、見た事のない植物。
見覚えのある植物に似ているものもあれば、明らかに地球の植物とは思えないものもある。
「おお……本当に異世界に来たんだ……」
さすがにこんな物を見れば、実は壮大なドッキリとかではなく本当に異世界に来たんだなと実感する。
「……はっ! そうだ胸!!」
私は急ぎ自分の胸を触って確認する。
「サイズは……ちっ、同じか」
残念な事に女神様は私の胸のサイズアップをしてくれなかったようだ。
サービス悪いな女神様。
自分の胸を触って気づいたけど、布の感触が違う。というか服が違う。
元の世界の私は学校帰りだったので制服を着ていたのが、今の私は見た事もないファンタジーな服を着ていた。
服はうす茶色の布地に赤の染料で模様が描かれている。
なんというか民族衣装って感じだ。
「それに鞄」
カバンの中を見ると、中にはナイフが一本と皮製の水筒がひとつ。更に小袋の中にパンが入っていた
どうやらこれは神様からのサービス、ゲームで言う初心者キットというヤツだろう。
おっと神様の口調が移った。
「さて、手持ちの装備は確認したし、これからどうするかだよね」
まず第一の目的は森を出て人里に行くことかな。
さすがに一人で森の中を歩くのはヤバイ。
「でもその前にすることがあるよね」
私は近くに生えていた草を二本引き抜く。
「錬金術スキルで薬を作っておけば、町で暮らすための軍資金になる!」
そう、最初にすることは錬金術スキルの実験だ!
「ええと、スキルってどうやって使うんだろ? 神様ゲームみたいな説明してたし、説明画面とかでないかな? なんか出ろー!」
私がスキルの説明をしてくれーと念じると、目の前に半透明の板が現れた。
「おおー! ホントに出た!! ゲーム画面みたい! さてさて、錬金術スキルの使い方はっと?」
『合成スキル:Lv1』
書かれていたのはそれだけだった。
というか……
「合成?」
え? 待って待ってなんで合成? 私が選んだのは錬金術だよ?
「……はっ!? まさか私錬金術じゃなくてその上の合成を指差してた!?」
そ、そんな! ほんの数センチずれてた所為でスキルを間違えちゃったのぉーっ!?
「んなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
森に絶叫が木霊した。
そうだよ、私の絶叫だよ!!
「合成って! 合成でどうしろっての!! 何を合成しろっての!!」
『アイテムとアイテムを合成する事で新しいアイテムを生み出す』
叫んだら再び目の前に半透明の画面が現れた。
「アイテムとアイテムを合成する事で新しいアイテムを生み出す? それってつまり錬金術みたいなものって事?」
心の中に希望が生まれる。
「じゃあこの草とこの草を合成する!!」
両手に持った草を合成すると念じると、二つの草が光を放つ。
そして一つの草となった。
「この草はなんて草なの!?」
『凄いサーク草:凄い雑草。生命力に満ち溢れた凄い雑草』
「ゴミかっ!!」
私は瑞々しい雑草を地面に叩きつけたのだった。
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