第3話 名誉挽回のお菓子 前
城の出入り口付近まで逃げてきたミスティアに転生した千秋のミスティアの従者のノイン。
あと少しで外に出られる。後は帝国からの追手を振り切れば良い。
けれど、ミスティア(千秋)を抱えたままのノインの力だけではここからの脱出は難しい。
しかも脱出口の城門は頑丈な鉄で出来ていて彼1人では開けることができない。
そこでノインは連れてきた黒馬のオニキスを使って逃げようと試みた。
「ミスティア様。指笛でオニキスを呼んでもらってもいいですか?」
「え…指笛…」
「見ての通り私は今手が離せません。申し訳ないのですが…」
ノインに横抱きのまま城から脱出しようとする千秋は彼から指笛でオニキスを呼び寄せて欲しいと頼まれた。
しかし千秋は指笛という言葉に焦ってしまった。
彼は指笛をやった事なんて一度も無かった。
(指笛なんてやったことねーんだけど…?!)
「ミスティア様?」
「あ、いやぁ、その、指笛しなきゃヤバい?」
「そうですね…オニキスがいる所まですぐに辿り着ければいいのですが追手が少し多過ぎて…」
(うぐ…その通り過ぎてなんも言えねえや…そういえばミスティアも指笛で自分の馬呼んでたな…確かステラだった筈…)
「城門の件はどうにかします」
「えぇ…どうにかって…」
そうこうしている内にも追手は攻撃を止めるどころか更に激しくなってゆく。
幾ら聖女の魔法で攻撃を防いでいるとしても逃げ切れなければなんも意味がない。
今の千秋には選択肢は無いに近かった。
(ええい!!儘よ!!)
腹を括った千秋は右手の親指と人差し指で輪を作り、軽く口に含み舌先を指で押しつけた。
目をぎゅっと瞑り指笛をおもいっきり吹いた。
ピィーっという高い音が響き渡った。
(で、できた!!ミスティアの身体が覚えてたやつかもだけど良いや!!オールオッケー!!後は…城門問題とこの指笛がオニキスに聞こえてればのお話なんだけど…)
無事に指笛が吹けて安心していると2人を追跡していた衛兵が背後に現れた。しかも前も立ち塞がられてしまった。
ノインの腕の中のミスティアを見て衛兵は早く捕らえてしまえと忙しなく叫んだ。
「いたぞ!!従者を殺せ!!」
「チッ」
(げっ!!!本当衛兵どもしつけぇ!!まだ魔法効いてるけどこれはマズイ!!でもこのまま黙っているなんてぜってーやだな。あ!!せや!!良いこと思いついた♪)
千秋は再びミスティアの記憶を探る為目を瞑る。
盾の魔法以外の術がゆっくりとだが思い浮かび始める。それは攻撃の魔法。
「えっと…"火神リカルドよ、烈火の加護を我に与えよ!!"」
「え?あの、ミスティア様?何を…?」
「まあまあ安心してくれたまえ。これで脱出できるし、オニキスも来やすいやろ♪そして覚悟しとけよ衛兵ども」
「え?」
困惑するノインをよそに千秋は呪文を唱えた。
すると、千秋の左手に赤色とオレンジの色が混ざり合った光が込められた。その光は千秋の手の中でみるみる内に大きくなってゆく。
炎にも似たその光を鉄の城門に向かって解き放った。
解き放たれた光は閃光の如く城門に素早く向かう。千秋の手の中で込められていた時よりも光は巨大化する。
城門前にいた衛兵はその光の球を見て"に、逃げろー!"っと慌てて逃げ伏せた。
誰もいなくなったそこに光の球がぶつかった途端、頑丈で変わらない筈の鉄の城門と周りの外壁は爆発し粉々に崩れ去った。
周りは玉座の間で千秋が起こした魔法のように砂煙と燃えた草木で煙たくなっていた。焦げ臭い匂いといろんなものが混じった煙が充満している。
城門が破壊された今、後はこの帝国には何も用はない。
「す、す、すげー…」
「あの…ミスティア様…ちょっとやり過ぎでは…?」
「うっ、で、でも!!これで逃げやすくなったじゃん…って、ん?」
すると、千秋の耳に遠くから蹄の音が入ってきた。
その音はみるみる大きくなってゆく。
千秋はその正体をすぐに気がつくことができた。
(オニキスじゃね?!!やった!!成功やんけ!!)
ぶるるっとここに来たと合図をするように鼻を鳴らす馬。千秋の予想通り2人の前に現れたのはノインの黒馬のオニキスだった。
転生する前にゲーム内で見た時よりも立派で凛々しく毛並みがとても美しかった。
(かっけ〜…マジで今からこれに乗って俺ら逃げるの?ヤバ…泣きそう…)
「偉いぞオニキス。さぁ、もうここには用はありません。行きましょう」
「あ、うん。行こうぜ」
緊張した面持ちでノインの助けを借りながら千秋はオニキスに乗馬した。ノインは千秋を守る形で後ろに乗り込んだ。
「行くぞオニキス。ミスティア様を守り抜くぞ」
(やばぁ〜!!なんかテンション上がってきた!!!オニキスに乗って脱出とかヤバい!!なんかもうヤバいしか言葉出ねーわ!!)
ノインの決意がこもった言葉を聞いたオニキスはそれに応える様に甲高く鳴いた。手綱を引くとオニキスは来た時同じ様に勢いよく走り出した。
さっきの爆発で逃げていた衛兵達は慌ててボウガンをオニキスに発射するが盾の魔法が効いていた為矢はすぐに塵と化した。
「このまま城下町を突っ切るしかないですね。関係ない方には申し訳ないですがここから生き延びる為ですから」
「まぁ…正直そんなこと言ってる場合じゃないしな…」
城下町はいろんな店があり賑わっていたが千秋達が起こした城の騒ぎで帝国の民はざわついていた。
千秋達はそんなことお構いなしに城下町を颯爽と走り抜けて行く。さまざまな人間の悲鳴と驚きの声を聞きながら帝国と外の世界の境目の門へと急ぐ。
「ミスティア様。もう一度炎の魔法を放てそうですか?」
「さっきの?う~ん…あと1回ぐらいなら大丈夫かな……多分」
「まだ眠くないですよね」
「え…?別に平気だけど…つか、こんな状況じゃ眠くもならんて」
「なら大丈夫です。もし眠くなったら無理しないでいいので」
(なんだぁ?さっきから眠くないとか聞いて?よく分らん…)
千秋はノインの問いかけに首を傾げた。なぜそんな事を突然聞いてきたのか全く分からなかった。ノインはもし眠いのならそのまま眠ってしまっても構わないという言いようだったのも引っかかった。
こんな緊迫とした命がけの逃亡時に眠くなるなんてありえないと千秋は思っていた。
千秋の目に少しずつ門が見ててきたことで一旦その考えを払拭し、軽く深呼吸をした後落ち着いてノインに頼まれた通り炎の魔法の呪文を詠唱した。
「"火神リカルドよ、烈火の加護を我に与えよ!!"」
千秋の手に再び炎の光が宿る。先ほどよりも光の球が大きくなるのが早くなっていた。
「いっけーー!!!」という千秋の叫びと共に光の球は門に向かって放たれた。
門番は城の衛兵のように怯えながらその場から逃げ出した。
巨大な球となった炎の光は城門を壊した時よりも激しく爆発し大きな穴を開けた。
追ってきた衛兵と避難していた門番はとても青ざめた様子で破壊された門と外壁を見ていた。
(よっし!!!!)
「よ…よくもこんな…」
「もし我々に当たっていたら確実に死んでいたぞ…!!!」
「なんて女だ…!!」
(ざまぁ。帝国にも皇太子にも一泡吹かせたしスカッとしたわ)
そんな彼らを見て千秋は心の中でガッツポーズを決めていた。
これからもっと後悔する様なことが起きるだろうと思うと余計にテンションが上がってしまう。
帝国に尽くしてきたミスティアを粗末に扱った報いの序奏とさえ思えた。
ノインは手綱を引きオニキスをさらに加速させる。爆発が原因の煙なんて閃光の様にかけて行くオニキスにが起こした風で吹き飛ばす勢いだった。
やっと外へ出れると考えていると突然千秋に異変が起こりはじめていた。
「これで外へ行けますね」
「……」
「ミスティア様?」
「まずい……なんか眠くなってきた…」
「え?」
「ちょ…調子こき過ぎたかも…」
帝国の門を爆破し、いざ脱出と意気込んでいた千秋に激しい睡魔が襲いはじめた。必死に目を開けていようとするも段々と瞼が重くなってゆく。
ノインがさっき言っていたまだ眠くないですよねの意味がなんとなく分かってきた。それは…
(魔力の使い過ぎ…!!確かに元から結構ギリギリだったもんな…あー…何やってんだろ…)
「さっきも言いましたがここまで来ればもう大丈夫ですよ。後は私に任せてください」
「だ、ダメだ…!!そうしたら盾の魔法が…」
「大丈夫です。安心してください」
「ノイン…」
千秋はノインにそう促されても起きていようと必死になったが、オニキスの揺れるリズムがゆりかご代わりになって更に眠気を誘う。背後では遠くで衛兵の怒号が聞こえてくるが眠気のほうが勝って集中できなかった。
かけていた盾の魔法の優しい白い光がノイズみたいに不安定になってきてしまった。
「ま…まずい…魔法が…」
「ほとんど体力も気力もない中でここまでやってくれました。後はもう休んでいてください。ミスティア様」
「ごめん…の…イ…」
「私達の味方は大勢いますから。次に目覚めた時はきっと…」
「………」
重かった瞼が完全に閉まるまでにそう時間はかからなかった。千秋は猛烈な睡魔に勝てることなく眠りについた。
最後に覚えていた記憶は衛兵の追跡から魔法なしでも逃げ切れると言いたげな自信に満ちたノインの顔だった。
千秋は何故か城下町の広場である光景を見ていた。
そこにいるのは皇太子のハロルドとヒロインのドレミカと城の家来と大勢の野次馬。
そして、石やゴミを投げつけられるミスティアの姿。近くには先に殺されていたノインの首なしの死体が転がっていた。
脱出したはずの彼女らが更に悲惨な状況で人生の最期を迎えようとしていた。
「私じゃない!!!私は毒なんか盛っていません!!ドレミカさんを殺そうなって私は考えてない!!お願いです!!信じてください!!!」
「うるさい!!聖女と偽った上に私の大事なドレミカを殺そうとした貴様をこれ以上生かしておくわけにはいかない。とっとと死ぬがいい」
「殺せ!!!」
「邪悪な女を早く殺してしまえ!!!」
「ちがう…!!!本当に違うのに…!!!どうして…」
千秋は絶望するミスティアを助けようと身体を動かそうとするが全く動けない。声も出せすただただ惨劇を見守るしかできなかった。
玉座の間の時と同じようにハロルドが持っていた剣を振り上げる。
ハロルドの傍らで怯えているような様子だったドレミカの顔を見て千秋とミスティアは愕然とした。
ドレミカは声を出さず口の動きだけで言葉を発した。
『さようなら。本物さん』
その言葉を発した時のドレミカは邪悪と欲に満ちた満面な笑顔だった。
振り上げられた剣は素早く振り下ろされミスティアの首をいとも簡単に切り落とした。
千秋は彼女の長い漆黒の髪が首と共に切り落とされるのと、あふれ出る夥しい量の赤い鮮血を見て絶叫した。
野次馬が処刑される瞬間を目撃して歓声を上げた。ハロルドとドレミカはようやく平和が訪れるなど言いながら抱きしめあっていた。
ミスティアの血が自分の足元にまで届いた時にバンっと何かが弾けた様な衝撃と眩い光をもろに受けたところで千秋は目を覚ました。
「うわあああああ!!!!……ってあれ…?」
叫びながら目覚めた千秋は慌てて首に触れた。ちゃんと繋がっているのを確認すると安心した様にため息をついた。
それと同時に今自分が見知らぬ部屋にいると思い知らされた。さっきまで乗っていた馬のオニキスの上ではなく、ふわふわの木製のベッドの上で彼は目を覚ました。
頭が真っ白なまま周りを見渡すとそこは掃除が行き届いた部屋の中だった。
ドレッサーとクローゼット、出入り口の扉付近にはスタンド型の姿見が設置されていた。
棚の上には花瓶に飾られた白い生花や、少し大きめの熊のぬいぐるみがあったりとまさに女の子らしい部屋に千秋は眠っていた。
(姉貴の部屋みたいだ…)
ドレッサーの鏡に映った自分を見た。やはり元の姿である高校生の瀧本千秋ではなく聖女のミスティア・カーラーだった。
そして、さっきまで見ていた悪夢は夢幻のままでノインと共にオニキスに乗って逃げ延びたのが現実なのだと実感した。
千秋は伸びているミスティアの髪をそっと掴み優しく引っ張った。
「生きてる…ちゃんと…」
千秋の目に涙が溢れ始めて視界が滲む。やっと運命を変えられたのだという喜びが溢れて今にも大声で泣きそうになってしまった。
(俺…やったんだ…ミスティアの運命を変えられた…!!)
必死に声を抑えながら千秋は溢れ出る涙を拭う。
まだ油断はできない。けれど今だけはこの気持ちのままでいたいと千秋は思った。
感情に浸っている彼の耳にコンコンっと扉の方からノック音が入ってきた。
千秋はもう一度強く涙を拭い慌てて返事をした。
「あ、えっと、はい!!」
「ミスティア様、起きられたのですね?おはようございます。よく眠れましたか?」
(ノインの声だ…無事だったんだな…)
扉の向こうから聞こえてきたノインの声に千秋は安堵した。
魔力を使い果たして眠ってしまった後のノインとオニキスの安否がとても気掛かりだった。けれど、ノインの朝の挨拶を聞いて千秋は安心していた。
「お、おはよう…!!よく眠れた…あ、あのオニキスは…!!」
「安心してください。オニキスは無事ですよ。今は馬小屋でゆっくりと休んでます。落ち着いたら見にいきましょう」
「うん。そうする。それとさ…急で申し訳ないんだけど風呂に入りたいんだが…あと着替え…」
起きたばかりの千秋の姿はまだワンピース型のボロボロの囚人服のまま。顔だけは拭かれていたが髪はゴワゴワしていてまだ洗っていない様だった。
「もう準備してあります。今から浴室にお連れしますのでついて来てください。こちらです」
「あ、うん。ありがと…」
千秋はノインの後ろをゆっくりっとついて行く。今いる建物が2階建てだと知るのは階段を降りた時だった。
元の世界ではあまり見られないおとぎ話に出てきそうな家。千秋はワクワクしながら周りを見渡した。
(下は…お店…?2階が住居スペースってことか?ミスティアは此処で何をしようと…)
ゲームの中では描かれていない出来事が再び発生していることに千秋は困惑しながらも必死に順応しようとしていた。
イレギュラーである自分がいる時点で全く違う展開になっているのだから余計にそう考えてしまう。
そんな千秋はノインは申し訳なさそうに話しかけてきた。
「本当はあの時、すぐにでも身体と髪を綺麗にしてあげたかったのですが、私が許可なく貴女の身体を触る訳にはいかなくて…申し訳ないです…」
「あ、いや…当たり前の事だから仕方ないって。命の危機が迫ってたらまた別だけど」
ノインのその判断に対し千秋は"やっぱりミスティアの従者らしいな"っと思った。
ゲームの中の彼も彼女が嫌がる様なことは必ず避けていた。例外なのは彼女に危機が迫っている時以外。
ノインにとって聖女の従者であることは人生であって支えでもあった。
ミスティアもそれに応える様に彼の傍を片時も離れなかった。
(ミスティアがノインの全てなんやろうな…)
あの2つのエンディング共死んだミスティアを見てノインは絶望していた。生きる糧と愛する人を失った彼にはとても残酷な結末だった。
けれど、そんな彼は今は隣で笑ってくれている。
(油断はまだできねーけど変えられたんだ)
いろいろ思い返している内に目的の場所についていた。ノインは扉を開けてここが脱衣所だと教えてくれた。
「このガラス扉の先が浴室です。バスケットの中に着替えの服が置いてありますから」
「お、あ、ありがと!出たらまた呼ぶから!」
「フフ。はい。朝食の準備をしながら待ってますね」
「え…えへへ…」
何故かよく分からない笑いが出て千秋は少し恥ずかしくなった。自分でも気持ち悪いと感じてしまっていた。
(テンパり過ぎぃ!!!落ち着け自分!!!)
「お風呂から出たらミスティア様が眠ってしまった後の事と、これからの事を食事をしながら話しましょう」
「そうだね。おれ…じゃなくて、私もいろいろ話したいことあるから」
「わかりました。ゆっくり入ってきてください」
「うん。ありがと」
脱衣所に入った千秋を見ながらノインはゆっくりと扉を閉めた。
千秋は深くため息をついた。
(どうしよう。心が痛い。中身がミスティアじゃないってバレたら泣くでアイツ…)
さっきの自分の中のノインの印象が罪悪感を煽る。
けれどいつかはミスティアの中身が異世界から転生してきた自分であることを打ち明けなければならない。そう考えると千秋は頭を抱え悩んだ。
もう一度ため息をつき気持ちを入れ替えた。
(……まぁ…とにかく今は一旦風呂入ろ…いろいろさっぱりさせたい…んで、風呂から出たらノインに聞きたいことたくさん聞いてそれから…)
脱ぎかけた囚人服を見て必ずしなくてはならないことがすぐに思い浮んだ。
ボロボロのその服は今まで見たミスティアの悲惨なエンディングの象徴。運命が変わり始めた今の彼女にはもう必要のない物となった。
(あの店みたいなところにあった暖炉。確か火がついてたはず。もうこんな物とっておく必要ないし…)
ノインが言っていたバスケットの中の衣服にこれからの彼女の新しい人生が詰まっている。
身体と心を洗い流し、綺麗な衣服を着た彼女の人生をやり直すのが転生した今の自分の役割だと千秋は思った。
もう元の世界で悔しい思いをしなくていい。偽者を信じた奴等に後悔する余地なんて与えるつもりもない。
そう決意を固めた千秋は囚人服を勢いよく脱ぎ捨てわざと踏みつけながらガラス扉の向こうの浴槽に向かうのだった。
扉を閉めた後のノインはすぐにはその場から離れていなかった。扉にもたれかかり天井を見上げる。
思い浮かべるのは帝国の者に捕まる前のミスティアの姿。
『まもなく私達の運命を変えてくれる方がこちらに来るでしょう。異世界で私達を知る方が私に転生して…。その時は彼を守ってあげてくださいね?約束ですよ?ノイン…』
それがノインとミスティアが交わした最後の約束だった。
「転生者様のことは私に任せてください。ミスティア様。必ず貴女の名を汚した者を私は…」
彼女の願いの為なら死ぬ覚悟がある彼に迷いなどなかった。愛する聖女の為ならどんなことだって。
ミスティアの夢が詰まったこの家に希望の光となった異世界からやって来た千秋。彼が現れたことで動くはずのなかった時間がようやく動き始めた瞬間だった。
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