~4~
スルトが部屋に入ってきた時、トール以外のメンツは揃っていた。
その部屋は、暗かった。パソコンのディスプレイの明かりしかない机の形状は、丸。席は決まっているらしく、部屋には二人の男性が座っていた。
「すみません、遅くなりました」
「だいじょぶ、だいじょーぶ。俺らも来たばっかしだし」
茶色い髪をハーフアップにしている男性がそう言ってカラリと笑うと、その隣に座っていた片桐に負けず劣らずの大柄の男性も同意した。
「トール様はまだおいでになってないのですか?」
その名を出すと、二人の間にピリリとした空気が変わる。
「今回の招集って……」
「トール様のご意向です」
「まーじですか」
「やべぇな」
茶髪の男性——ミドガルズオルムが両手を上げて上体を後ろに逸らすと、大柄の男性——フェンリルが冷や汗をかいた。
湊が攫われるのは初では無い。その頭の使い道を知っている悪党共が、こぞって奪い合いをしている程だ。小柄で非力な少年は、電脳世界の外ではか弱い少年でしかない。その度この円卓で三人が必死に探し出し、助けている。
だが、そこにトールが混ざることは無い。
彼は捜査一課の頭脳であり、指揮官だ。円卓のメンバーに捜査は投げて、得た情報を元に一課を動かすのが彼の役目のはずだ。
その彼が、わざわざ足を運ぶ。よりによって、この『円卓』に。
どうやら、今回の件で流石のトールも怒髪天に来たらしい。
二人は心の中で犯人に合掌した。普段はのほほんと笑っている綾木が笑みを消した時の恐ろしさは、ここに居る全員が知っている。
「皆さん、お揃いですか」
淡々とした口調で入ってきたトールに、思わずミドガルズオルムは姿勢を正した。豪胆が売りのフェンリルでさえ、顔を強ばらせている。
「我ら三名、全て揃っております」
唯一スルトだけが普段と変わらないように見えたが、彼女も緊張しているのが見て分かった。
円卓の上座にあるトールの席に彼が着くまで、誰も何も話さなかった。
コツコツとした足音、ギッと椅子の軋む音。それら全てに畏怖を感じる。
「またも我らが『カミサマ』が奪われました」
静かな声に確かに怒気を滲ませ、トールは告げる。
「これを機に、我らの『カミサマ』に手を出した輩にはどのような制裁が待っているのかを知らしめたいと思います」
ビリリと空気が凍る。具体的な内容などを進んで聞きたがる猛者はここには居ない。ただただ静かに怒りを滲ませるトールの様子を伺うことしか出来なかった。
「スルトさん、ロキくんのGPSを追ってください」
「拝命致しました」
「ミドガルズオルムさんは監視カメラのハッキングを」
「了解です」
「フェンリルさんはすぐ出れるようにしてください。それまではこのデータをクラッキングを」
「分かりました」
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