76話:企画と計画とホラーな館





 前の配信で有耶無耶になってしまったけど、カミが何かをハル社長に相談したことは分かっているんだから、素直に聞けば良いと思ったのだが……返って来た返事は「秘密」という短文とハートマークが付けられたコメントだけだった。


「ねぇカミさんや、教えてくれても良くないかな」

「ハル社長が『秘密♡』と言ったなら秘密という事だぞ」

「相談したのはカミでいしょう。なんで秘密にするのさ」


「もちろん理由は色々とあるがのう。それも話してしまっては秘密を話してしまった事と同じなので、やはり教える事は出来んのう」


 自分でも分かるくらいにムスッとした顔でカミを見つめる。


 けれどカミの方はニヤニヤしながら見返してくるだけで、逆に相手を楽しませているだけの気がしてきた。深めの溜息をワザとらしく吐き出す。


「まぁ楽しみに待っていると良いぞ」


 今の所は二つのゲームを交互にやっているが、そろそろロボ戦は終わってしまうだろう。


 中盤の自由な冒険というサブクエストと装備品集めが終われば、一気に終盤まで進んでしまう。盛り上がりとストーリーが気になり過ぎて、カミの性格だと終わりまで進みそうだ。終盤手前にも世界を自由に駆け回れるけど……そっちの話は教えて良いモノか悩むな。


 サブストーリーも熱い展開があるし、それをクリアーしていると最終局面での話も変わるから、それを見てみたくもある。


 僕自身も、二人プレイでのクリアーはした事がないから、ソロの時とは違った展開が楽しみでしかたがないんだよね。


「次の配信はロボ戦じゃろう。そろそろ物語を進めた方が良いのかのう」


「ん~、好きにして良いと思うけど…… サブストーリーも楽しいモノが多いからね、そっちを見てみたいって人も多いと思うよ」


「なるほどのう。少し進めてからサブストーリーを見るという事は出来ぬのか?」


「それでも悪くはないけど……良い所まで進んじゃうから、先が気になって戻れなくなるかな。ちなみに、僕が前回やっていた時には戻れずにそのまま終わりまで行っちゃったよ」


 その後にサブクエのストーリーが気になったから、強くてニューゲームでやり直したけど……装備が終盤のモノが揃ってしまっていたから、戦いが呆気なさ過ぎたんだよな。


 配信の事も考えるなら、メインストーリーは進めずに前みたいな熱い展開で戦ってくれた方が面白いだろうし、見ている方も楽しいと思う。


「やっぱりサブクエストを進めようか。メインは次の機会って事でさ。多分、あと二回、多くても三回くらいで終わると思うよ」


「ふむ、紬がそういうならば、そっちの方が良いな」


 次回にやる僕等の配信は決まった。

 それなら今度はコラボの配信を考えておかないとだな。


「皆と出来るゲームで遊びたいのう」


「初めてだし、簡単なパーティーゲームで良いんじゃないかな。長くなりそうなのは、ハル社長と少し相談して、他の皆ともしっかり話し合ってから決めないとだし」


 単発の配信で出来そうなモノを選ばないといけない。


「最初の二週間くらいはコラボが出来ないのじゃろう?」


「そうだね、しっかり自分の配信を頑張ってもらって、色々と模索しながら色を探すって感じになるってハル社長も言ってたよ。同時にデビューしたメンバーならコラボしながらでも良いって話だったけどね。僕等は先に活動してたから、駄目だね」


 おんぶにだっこっていう状態にならない様にって感じだとは思う。


「そういえばさ、先輩達とのコラボって予定どうなってるか聞いてる?」

「それは調整中じゃろう」


 この流れでカマをかけてみたが、引っ掛かってくれなかった。


 ちょっと危なかったという表情はしていたけどね。

 しっかりとカミには回避されては、聞き出すことは無理そうだ。


「仕方ないのう、ちょっとだけ教えてあげようかのう」

「えっ! 良いの」

「しかし、内容は教えんぞ」

「別に良いよ、そこはもう楽しみしておくからさ」


 全然楽しみに出来ないんだけどね……僕の嫌いなホラーゲームをやるんだって事を知ってるんだから。


 日取りが分かれば何とか逃げられないかなとか考えているのだが、家族全員が敵らしく、絶対に逃がしてもらえない。何せ、やる日は秘密だと口をそろえて言うんだもんな。


「やるゲームは決まったぞ」

「…………それだけ?」

「それだけしか教えられんぞ?」


 そんな、なにを当たり前な事を聞くなっていう顔で見ないでもらいたい。


「もうすぐ引っ越しだし、自分の荷物でも纏めようか」

「我も此処に居るようになって、意外と自分の私物が増えたぞ」


 僕の部屋だった場所の半分を占領してるもんね。


 そりゃあカミの私物だって沢山だろう。

 むしろ僕の私物よりも多いのではないだろうかと思えてくるから不思議だ。


 まぁ、僕のヤツって殆どが僕のモノじゃあない衣服とか、小物が多かったりするんだけどね、なんでだろう本当の私物は小さめの段ボール箱が二つ一杯なのに、母さんや父さん、それにカミなんかが用意した僕用の衣装と女物服や小物が大き目の段ボール箱三つ以上だ。


 おかしくないだろうか、というかこれ以上に増える可能性があるってどういう事だろう。

 主に母さんの趣味と社長さんのせいでコスプレ衣装が大量に増えそうだ。






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