40話:次のゲームと引っ越し先の設備





 未だに僕は女性のままで、そろそろ戻して欲しいんだけど、一緒に寝るのがお気に入りになってしまったカミは、今日も一緒に寝てくれれば、明日には戻すと約束してくれた。


 その代わり、苦手な食べ物尽くしは止めてあげる事を約束させられてしまった。

 ちょっと残念だが、仕方がないだろう。


 連休中だから、という訳でも無いんだけど。思いのほか誰かと騒ぎながらゲームをしていると、時間を忘れてプレイしてしまう。気付けば殆どキャラシナリオを終わらせてしまっていて、二週間も経たずに隠しキャラまで網羅してしまった。


 二人でプレイしているから、次のキャラシナリオを始める時には、後半の能力値くらいは強くなってしまっていて、全クリするまでの時間もどんどんと短縮されていった。カミ自身もプレイが上手くなっているので、初期の頃と比べると別人レベルで上達している。


 それとプレイ時間も異様に長くやっていた。そもそも、家の良心からして色々と論外だからゲームは一時間とかいう事も無く、切りの良い所まで永遠とやり続けてしまった。


「むぅ~、もう終わってしまうのは、やっぱり寂しいのう」

「後はやり込み要素くらいだからね。雑談中にやるとかなら別に構わないんじゃない?」

「ほう、それは良いのう。今では雑談しながらでも普通に遊べるしの」

「カミっては本当に上手くなったもんね」


 僕みたいにコンボルートを自分で探りながら、キャラ毎にある特性なんかも理解して、攻め方なんかも変えられるようになった。


「しかし、それならば今度の配信はどうするのじゃ?」


「次やるゲームのアンケートかな。一期生のメンバーが揃うまではサンドボックス系統のオープンワールドゲームは禁止だって社長さんが言ってたしね」


「興味があるのう、その呪文みたいな言葉のげーむとやら。しかし出来ないのか~、早く決まって欲しいものだが、まだまだ掛かりそうなのだろう?」


 僕もその辺の事を知りたい。

 カミと一緒になって母さん達を見る。


「う~ん。なんか本社の方で手伝ってくれるってメンバーが何人か居てね。一期から二期まで一気に絞り込む感じで動き出してるって言ってたから、早ければ今月には、情報が出てくるんじゃないかしら。それよりも、今日も一緒に寝るの?」


「鍵は掛けておくよ」

「あらまぁ、紬ちゃんにしては、物凄く大胆じゃない」

「なにやら桃色の雰囲気を想像しておるぞ」

「あぁなった母さんは放置しておくに限る。下手に絡むと大変だよ」

「う、うむ。分かったのだ」


 別に脅しで言ってる訳じゃあないんだけど、母さんの妙なハイテンションにはカミも引き気味で、自ら地雷原を踏み歩く愚か者じゃあないという事だろう。


「それよりも父さん。次やるゲームってさ、何をやって良いの?」

「そうだな、ピックアップをしたのは、この三つだな」


 そう言って、父さんがソフトを机の上に並べてくれる。


 一つは戦闘機の新人パイロットとして、エースを目指すもの。

 二つ目は核戦争後の滅んでしまった世界を旅する、シューティングゲーム。


 三つ目は人形を戦わせるゲームで、ストーリーを進めていくと色々なパーツを揃えていける。育てるパラメーターによって射撃タイプ、格闘タイプ。特殊タイプなどの変化も可能で、属性値を上げれば、魔法使いの人形だって作れる。


「ふ~ん、普通だね。ホラー系のゲームとか用意してくるかと思ったよ」

「あぁ、それらは引っ越してからだな」

「……は? なんで? 僕は絶対にやらないからね」

「なんじゃ、お主は霊の類が怖いのかのう」

「五月蠅いな、別に怖くないもん」

「紬ちゃんはお化け屋敷とか絶対に入りたがらないもんね」

「別に、何が楽しいのか僕には分かんないだけだし」

「ん~、しかし紬は霊に好かれやすいタイプだと思うがのう」


 カミの様子を見ると、別に揶揄っている様子が全くない。

 急に変な事を言うもんだから、なんか背筋の辺りに寒気が走ってしまった。


「なんで、引っ越してからなのさ?」


「本格的なのは、事務所の施設が出来てからが本番なんだがな。最新技術のARシステム技術を使った代物をやりたいんだよな、拡張現実やら立体映像を駆使した感じのリアリティあるモノも、模索している最中だよ」


 父さんが関わっているとなると、本当に碌でもない事に技術を注ぎ込んだ、とんでもないホラーゲームをでもさせられるんじゃないだろうか。


「スタジオが出来れば、歌ったり演奏したり出来るし、遊べる幅が広がるでしょう」

「普通にゲームしてよ。良いじゃんこのまんまでさ」

「我はどっちも楽しいから、両方やれば良いのではないかと思うがのう」

「そうね、両方していけば良いのよ」

「特性スタジオなんか、お金の掛かる様な場所を早々に準備なんて出来ないでしょう」


 まだ大口のスポンサーが付いている訳じゃあなさそうだし、非現実的すぎるね。

 僕がそう思っていると、何故か母さんはニコニコとしているだけで、何にも言ってこない。


「まぁ楽しみに待ってろよ」


「楽しみに待ってたくないんだよ。良いって、普通にバーチャルライバーでゲームしてるだけでもさ。カミの神社だってちょっとずつ復興して行けば良いんだし」


「そうね、別に否定してないじゃない」


 なんか母さんの態度が怖いから言ってるんだよ。絶対に何かを隠してるだろう。





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