33話【配信】:負けず嫌いは時に伝説を生むかもしれない
==ほら、泣かないで
==大丈夫、皆が分かってた事だから
「何にも良くない。その優しさが僕を傷つけるんだ」
思いっきり頬に空気を溜め込んで、悔しい気持ちを抑えながらカミをの方を見る。
彼女は勝ち誇った顔で、僕を見下ろしながらVサインを手で作りながら、僕に見せびらかす様に何度も突き出して来た。
「ははは、策士策に溺れるとはこの事であるな。我を罠に嵌めようとするからそうなるのだぞ、助けて欲しいか? ほれほれ、頑張れ頑張れ」
「見てな、別にっ、カミの助けがなくたって切り抜けてみせるから、な⁉ ひゃ、体力が一気に削られた、何でよ。ちゃんとガードはしてるのに」
==そのレベルさだとジャスガしないと食らうな
==体力が削りで減らされていくんだよ~
僕の知らない知識を教えてくれるのは嬉しいんだけど、コメントを見ている余裕は無い。
「ジャスガってなに? どういうこと⁉」
僕とは違ってカミの周りには雑兵しかおらず、そこまで敵も居ない。
タイミングを見ながら、リスナーさん達のコメントをゆっくりと読んでくれている。
「ふむ、じゃすとがーどというそうだぞ。敵が攻撃をした直前にがーどのぼたんをチョイ押しすると、攻撃を弾き飛ばす仕様だと言うておるな」
「いやいや、皆は何を言ってるのかな。対峙している英傑さんを見てくれるかな? あの攻撃モーションを見切れと? なんでそんな反応力を求められなきゃいけないのさ⁉」
そもそもカミのヤツが早く僕を助けてくれれば、別にこんな苦戦する事はないと言うのに、なんでこんな初期レベルのキャラで縛りプレイ的な事をしなくちゃいけないの。
さっきから「助けろよ」という意味を込めて睨みつけているのに、カミは飄々としながら、別の場所を駆けずり回って、倒しやすい武将達を狩って進んでいる。
絶対に僕が挟み撃ちを受けている場所には近付かない様に、離れた位置から狙いに行っているので、絶対に故意だと誰の目から見ても明らかである。
「そんなに余裕でウロウロしてて良いのかな~。こういうイベントは実はここだけじゃあないんだからね。絶対に同じ目に合うんだからね」
「確かに待ち伏せは多くあるが、そこまで困った事にはならないのう」
あれ? なんでだろう。
僕が前にプレイしてた時にはもっと沢山の待ち伏せやら、トラップが大量に設置されていた記憶が確かにあるのに。待ち伏せにはあっているけど、カミのレベルでも捌ける程度の敵が増えていくだけだった。
「なんでだろう、僕の時には英傑やら武将たちがわんさか出て来たのに」
==あぁなるほどね、それってステージは確かに同じ場所だけど、別キャラだね
==確か、逃げるシナリオの時だっけ?
==今回は助ければ簡単に終わるイベントだからね。本来なら
==でもさ、これで勝てたらレア武器を入手できるじゃん、頑張れ悠月ちゃん
「ほう、れあと言うのは、いま使っている武器よりも強いモノなのだな。それは是非とも欲しいのじゃ、頑張って倒してたもれ」
「なら手伝いなよ! 僕だけで勝てる訳がっ――あっぶな⁉」
何とか距離をとって、回避行動で攻撃を避ける事は出来ているけど、これはやられるのは時間の問題だろう。何時まで僕の集中力が持つかがカギになってくるな。
「取らないと、罰が待っておるぞ」
「は? なにを――そういうのは卑怯って言わない⁉」
父さんとカミがお互いに視線を交わして、頷いてみせる。
チラチラと僕の女の子バージョンの立ち絵を視界の端にチラつかせてきた。
==それはそれで、俺らは満足
==どっちに転がっても美味しいじゃん
==自分的には、そのままでも良いのよ
==う~ん、どっちも捨てがたい
「皆が僕の事を裏切るんですけど、誰か僕の味方は居ないの?」
そう叫ぶと、多分だが女子達は「そのままの姿で……でも、頑張っている姿もみたい」的なコメントが多数流れてきた。
腐りかけな女性達からしたら、僕の反応が大きくなる現状維持をご所望らしい。
僕が使っているキャラとの、密な関係が溜まらないそうである。
「こうなったら、皆の期待を裏切ってでもクリアーしてやるもんね」
殆どヤケクソに近いが、ジャストガードだって狙って積極的に相手に攻撃を仕掛けにいく。下手な攻撃は一切せずに、ヒットアンドウェイを繰り返して、絶対に相手が隙を晒すタイミングでしか攻撃せずに、英傑キャラの体力を徐々に削っていく。
==すご、よくやるよ
==本当に倒せそうで、ちょっと感動してる
==いいね~、タイミングも段々と掴んでるみたいで、ジャスガの制度も上がってる
==本来はキャラを強くしてから挑むのにね
==それなりにやり込んでいるだけはあるみたいじゃん
「ほう、思わず見入ってしまっていたが、これは配信としてはアリなのかのう?」
==ありでしょう。熱い展開じゃん
==まぁこういうのもアリだね。別に常に喋るっていうキャラでもないし
==集中してやっても、普通はやられるからね。ここは勝って欲しいな
最後まで油断せずに、倒せてから我に返ると。確かに配信だというのに全然喋ってない。慌ててカミや父さんの方を見ると、物凄くニコニコしている。
配信画面を見ていると、物凄い量の拍手コメントで画面が埋め尽くされていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます