1.ラブコメの変遷と作品の質

※この記事は2022年2月1日に公開されたものを転載しています。あらかじめご了承ください。


 本作を書いていくうえで、自分がずっと大事にしていたことがあります。それは「作品の質」を落とさないこと。


 これは個人の好みという話とはまた違った部分であって、かなり説明が難しいのでこのまま提示するしかないのですが、とにもかくにも「ハッピーエンドや、既存のラブコメっぽい話に持っていくために、質を落とすのは出来るだけやらないようにしよう」という風に心に決めて書き進めていきました。


 ただ、ここでひとつ問題が生じます。この話は既存のラブコメとは違って「寝取り計画」から話がスタートしています。


 自分が常々言っていることとして「作品の基本設定から導かれる結論は決まっているもの」ということがあって、この「寝取り計画」をスタート地点としてしまったことで、既存の「主人公が複数のヒロインの間で揺れ動いて、誰かと付き合って、その後にひと悶着起きて、解決して、エンディング」という、現在のスタンダードと言っていいラブコメのラインに乗せることがかなり難しくなってしまいました。


 その為、そう言った「既存のラブコメ」のラインにどれだけ乗れているかを評価基準にしている場合、恐らくこの作品は評価されにくいと思います。


 そして、実際に自分が読者として見たとしても「評価を付ける」という行為は恐らく保留すると思います。


 なぜなら、自分の評価基準は概ね「過去に見た作品との相対的な位置関係」で決定されている部分が大きいからです。


 その基準で行くと、「史上最低のラブコメ」と同じラインを通って、かつこのくらいのシナリオ進捗まで目立った間違いがない、というのはおおよそ初めてなのです。そのため、正直書いている自分にも「これでうまくいくのだろうか」という不安はあります。


 ただ、歴史を振り返ってみれば、ラブコメや主人公の形というのは変遷するものです。


 恋愛アドベンチャーゲームは過去、主人公と特定ヒロインが付き合ったことでエンディングを迎えるというのが主流だったように思われます。


 しかし、現在は付き合って、その後に2人で乗り越える困難があって、エンディングというのがメジャーで、恐らく最新の作品を適当にチョイスしてもこの構造は変わらないでしょう。


 恋愛アドベンチャーゲームで言えばもうひとつ、「WHITEALBUM2」というゲームがあります。これは「二股こそしないものの、割と浮気じゃない?っていう動きをする」という作品で、その「どちらかで揺れ動く」という部分を精緻に描き出したという作品、だと自分は解釈しています。


 それ以外で、ネタバレになりすぎてしまうのでタイトルは伏せますが、「二股を公言してなお、主人公の評価が下がらない」というラブコメ作品にも最近出会いました。


 それらは既存のラブコメラインからすれば禁忌で、踏み入れれば失敗しやすいと(恐らくは)思われていたラインなのだと思います。


 何が言いたいのかというとこれはもうひとつで、「史上最低のラブコメ」は自分の意図とは外れる形で、そういった「禁忌」に手を出している作品ということ、なんだと思います。


 なんだか他人事のようなコメントですが、執筆が終わって、一晩経って、自分なりに「読者」として、解釈した結果がこれ、だったりします。


 だからどうだとか、擁護してほしいとか、そんなことを言うつもりはありませんが、自分としては「質」を追求して、「禁忌」だろうと手をだして、そこにある人間関係に関して妥協をせずに描いていったつもりだ、ということは一応、書いておくべきかなと思った次第です。

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