#34
隣町への用事があった。距離で言えばさほど遠くはない。
だが男は困っていた。街道などは当然なく、むしろ砂しかない。
つまり、砂漠の道無き道を行かねばならなかった。
やっとの思いで途中のオアシスまで辿りついた。
ちいさな宿場があり、心身ともに疲労した男は泊まらざるを得なかった。
日中は暑い、夜間は寒い。平地の比ではない。
足は取られる。毒を持った生物もいる。
出身が砂漠では無い男にとっては厳しい旅路であった。
宿屋の隣にいた商人らしき人物が声をかけてきた。
「おや、旅のお方。大層お疲れのようですな。当店自慢の品はいかがですかな? 良き旅になること請負ですぞ」
そこまで言うのであればと、男は商人から乗り物を買うと、翌日からまた旅に出た。
あれよあれよという間に進み、オアシス出発からそれほど時を置かずして、目的の街に到着した。
最初から買っておけばよかったと思った男であった。
――ラクダは楽だ
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