#8

隆丘の上に佇む弟子に向かって挨拶を投げやる。


「月下の晩秋に決闘を申し込もうとはな。貴様にも趣というものが芽生えたか」


色なき風が頬を激しく撫でる。だが老剣豪が声を上げると、聞き入らんとばかりに辺りに凪が訪れた。


「銀色に輝く叢薄には証人になってもらいたくて」


月を眺めていた彼奴がこちらに振り返り、そう言った。


「証人?」


「ええ、私が師匠を超えた、という事のですよ」


「フン、何をふざけたことを。ワシとワシのスーパー正宗IVに勝てたことなど一度もなかろう。御託も五目も並べるの好まぬ。さっさとかかってくるがいい!」


そう叫ぶと同時に大仰に抜刀し構える。

あぁ、なんて美しいワシのスーパー正宗IV。月明かりが反射して更に美麗さを増しておる。


「参ります。いざ!」


弟子も駆け出しながら抜刀する。それを見て、握りしめた柄糸にじっとりと汗が染み込んだ。嫌な予感がする。いつもと違うと勘が告げる。


二度切り結ぶ。たったそれだけで違和感の正体を掴んだ。ニヤリと笑う彼奴の手にあるのは。


「最新の・・・アルティメット村正∞・・・さては貴様、新しい




















――刀を買ったな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る