#5

「なぁおい! 聞いておくれよ! 」


「こんな夜更けに訪ねてきたと思ったら、一体何の用だっていうのだ?」


「今日は山で摩訶不思議な出逢いを三度もしたって訳だ。ここはひとつ酒の肴にでも聞いておくれよ」


「私も鬼ではない。お前の摩訶不思議とやらを聞いてやろうじゃあないか」


「それではひとつ。そもそも今日は山へ薪割りに行った。途中、喉を潤しに川へ寄ったんだ。そこで痩せた男に出会ってね、相撲に誘われちまった。この通り体躯に恵まれた俺の圧勝だったがな」


「そこまで摩訶不思議とも思わぬがな」


「いやはや、川から出てきた彼は全身に藻を纏っていたのさ。変にぬるぬるさせていた。その後もな、山道で赤ら顔の鼻高修験者に、山奥では虎皮の腰巻きを巻いた大男に、それぞれ出逢ったって話さ。二人とも鰾膠もなく去ってしまったがね」


「それは災難だった。そしてお前がここにいる理由もわかった。一度魅入られてしまえば逃れることは儘ならぬものよ。……ところで、三人目の顔は……こんな顔だったかい?」




















――妖怪に用かい?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る