この二人なら楽しい旅になるに決まってる!
きつねのなにか
第1話 始まりはいつも夢見るところからなのじゃ!
「あんたがあたしに勝てるだなんて一兆万年早いんだよ!」
ゴブリンを処理したあとに出てきた熊。そいつが繰り出した右フックを上体の移動だけで華麗に避ける。
「〈
避けるために体を後方にひねった、その状態からの切り上げ。カウンターだ。あたしの魔のサーベル「
熊の右手が肘から切り飛ぶ。血がぶしゃー!
一瞬の間が開いたあと、
「グアァァァ!?」
熊がその状況を把握して恐怖の声を上げる。
「あとは……そこだぁぁぁ!
サーベルが鋭い光を放って熊の眉間に突き刺さる!
「爆!」
バァン!
サーベルから衝撃波が発生し、脳内をめちゃくちゃにする。
熊は即死だった。
「あたしに勝つなら3メートルくらいの大きさになるんだね、熊さん」
……あれ、わたしまたなにかやっちゃいました?
――――――――
「一流になるにはくまをたおすべし……ぐへぐへぐへ……」
「熊ねえ。私のことかねえ。ボタン、そろそろ起きないと薬草取得のノルマが達成できなくなるよ!」
「ひゃ!? 今のはひゅめ……。ああ女将さん今から仕度しゅまひゅから!」しっぽびーん!
「黄金色の色をしたきつね族ってこんなに堕落してる種族なのかねえ」
「や、きつねはかしこいのでそんなことはないです」
きっぱりと否定。
「しっぽとみみが、これでもかっていうくらいでっかい、ユニークなきつね族であるあんたが変なだけかねえ」
「や、あたしはかしこいのでそんなことはないです」
きっぱりと否定。
「いや、そんなことあるだろうさ。 背も高いし肌も白い。体のラインも良いと、とても良い体をしてるのにねえ。もったいない。顔もとびきりキレイなんだけどねえ。……さ、労働の準備はできただろう? さっさと行ってきなっ」
「はーい、いってきまーす」
ということで労働してきまーす。でももったいなくないでーす。顔はおめめパッチリだぞ!
労働といってもこの村の特産品である、薬の元になる草を収集するだけだけどね!
調合しないとただの草らしい。へぇー。
その草は森の奥にわりかし生えているんだけど、見た目はただの雑草。
雑種のイネ科かな? という程度の見た目なので人間族では見つけにくい。見つけるためのヒントは草から独特な香りがすること。それを頼りにすれば私ら鼻が利くタイプの獣人や亜人だとみつけるのは簡単。森の中を駆け抜けるための【ステータス:敏捷値】も一般人の2倍強である250と高いし、スキル〈嗅覚〉も精神の中に存在する〈〈スキルスロット〉〉にはめてある。
今日も森を駆け巡りお鼻クンクンしながら草を採取するのだ。
「はーい女将さん、本日は50本の収穫でしたー。ボーナスください」
仕事を管理しているのは女将さん。私が所属している生活協同組合の、村の組合長なのだ。
スッと左手を差し出す。
「ボーナスなんて無いよそんなもん! 確かに50本あるね、50ゼニーの支払いだよ」
「えー今回はあの冒険者ギルド様のご依頼なんですから少し高くー。あたしは生活協同組合レベルなんですよー」
スッと左手を差し出す。
「だめだめ! そんなにお金が欲しいなら剣以外の装飾品でも売っちまえば良いのさ。腕輪に指輪、ネックレス」
「た、大切な品なのでそれは出来ませんよー」
「ならとっとと部屋に行って大切な剣でも磨いてな!」
「しょんぼり」
50ゼニーの魔導小切手をもらい、きつねのしっぽをたらしながら部屋に戻ります。
そして愛用の剣「片手・両手兼用サーベル・
こやつは人だけではなく、各種魔物とも対峙できるように大きめに作られたサーベル。刀身の曲がり方はキレイな緩やかさ。でもその絶妙な曲がり具合のおかげで、よく切れるししっかりと突けるんだよっ。
片手での扱いが主体なんだけど、いざというときに両手持ちして強烈な一撃を与えるために、持つところである
『てへじゃないだろう、ちゃんと刀身で切れるような訓練をしろ』
「へい」
花草水月ちゃんに痛いところをつかれた。よく喋る剣だ。
花草水月ちゃんはインテリジェンスソードで、知恵がある剣なんだよね。魔剣だね。
「花草水月ちゃんは私の素晴らしい助手だね、助手」
『結構主任をやっていることも多いと思うがな』
そんなこんなでぼちぼちな生活を送っていたわけ。
本日も晴天なりーと、女将さんの愛情だけはたっぷりな、野菜くずとミジンコみたいなベーコンの入ったスープを食べているときに――、
「おい、賊だ! 賊の集団が出たぞ!!」
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