魔神の契約者~「呪われたスキルを授かった忌み子のお前は魔神の生贄にしてやる!」と言われた僕は、奈落の底で魔神と契約し、【魔神化】の力で無双する。国と実家が刺客を送り込んできたので徹底的に潰します!~

路紬

第1話 呪われたスキルそして追放

「レイヴン。忌み子のお前をエンデュミオン家に置いておくわけにはいかない。お前を追放し、魔神の生贄にする!!」


 それは十八歳のある日のことだ。僕はあるスキルを授かったことで、全てを失い、見捨てられて、僕は実家を追放されて、魔神の生贄に捧げられることとなる。



***


 僕——レイヴン・エンデュミオンは緊張していた。何故なら今日はスキル授与の日だからだ。


 この世界では十八歳になると神からスキルを授与される。僕はエンデュミオン家の五男として優れたスキルを授与されないといけない。邪神の脅威が日々増して、魔物が活発化している今、僕に求められるのは戦闘系のスキルだ。


「安心しろレイヴン。お前はなんたってこの【剣皇】のスキルを持つ俺の息子!! 優れた白兵スキルを授与されるはずだ!!」

「いえいえ、魔法系のスキルも馬鹿にできませんよ。【賢者】のスキルもいいですわね」


 両親は僕がどんなスキルを授かるのか楽しみにしている様子だ。


 両親が僕に期待するのは当然だ。何故なら、僕の兄上達はみんな優れたスキルを授与されている。【剣聖】、【魔法剣士】、【錬金王】など。レアスキルを超えたユニークスキルを授与されていた。


「レイヴン・エンデュミオンのスキルは……え? いやこれは!?」


 僕の前で儀式を行う神父が驚いている。近くに置いてあった本を慌てて開いて、何かを確認しているようだ。


「神父さん、うちのレイヴンはどんなスキルを手に入れたんですか?」


 父が期待した声でそう聞いてくる。その場で一瞬の沈黙が流れて——。


「れ、レイヴン・エンデュミオンのスキルは【魔神の器】です!!! な、何ということだ!! 何千年と現れなかった呪われたスキルだ!!!」


 僕はその場で立ち尽くすことしか出来なかった。すぐに両親の方に振り向く。両親の眼は酷く冷めきっていた。まるでゴミを見るような——両親だけじゃない。ここにいるみんなが。


「おいおいエンデュミオン家の息子が忌み子だって」

「【魔神の器】ってどんなスキルなんだよ?」

「何せ何千年といなかったスキルらしい。だけど、神託書には呪われたスキルってあるんだろ?」

「忌み子っていうことは、教会の掟で魔神の生贄にされるんじゃないか!?」


 【魔神の器】、それはこのルミナス王国では呪われたスキルと呼ばれている。何千年前に同じスキルを持っている者が現れて、その人が後に世界を滅ぼす魔神に転じたからだ。


 そして神託書に呪われたスキルと記載されているスキルの持ち主は、この国の慣習として封印された魔神の生贄に捧げられる。魔神は呪われたスキルの持ち主——つまり忌み子を好んで食すからだ。生贄に捧げることで、魔神の怒りを鎮め、封印を維持するため。


 僕はそんなスキルを授かってしまった。父と母は何も言ってくれない。その事実に身を震わせることしか出来なかった。


「おお!! この子は凄いぞ!! 【勇者】のスキルだ!! 孤児の子がユニークスキルでも最高峰のスキルを手に入れたぞ!!!」


 僕の次にスキル授与を受けた子がどうやら勇者のスキルを授与したらしい。この場の話題は一気に彼へと向かう。


「【勇者】のスキルだって!? 初めて見たぞ!!」

「ということは邪神討伐隊に編成されるのかしらあの子!! 孤児っていうけど、精悍な佇まいね!!」

「どこぞのボンボンとは違うな!! 勇者の誕生は一大事だぞ!!!」


 貴族で忌み子の僕と、孤児で勇者の彼。みんな僕を嘲笑い、みんな彼を持ち上げている。なんだこれ……!?


「君の名前はなんで言うんだ? 君をエンデュミオン家に迎え入れてあげよう!!」


 父が僕を無視して、孤児の彼にそう話しかける。勇者の登場に父だけじゃなく両親の心は彼に釘付けにされていた。


「チートです。その話本当なんですか?」

「ああ、チート!! お前は今日からチート・エンデュミオンだ!!!」


 盛り上がる中で、僕は誰からも見られることはなかった。



***



「忌み子なんて……お前はエンデュミオン家の恥だ!!! 教会の連中を待機させてある! お前は早くこの家から出ていき、魔神の生贄になれ!!!」


 父は僕に対してそう怒鳴り散らす。窓から外を見ると、教会の人達が僕をまだかまだかと待っていた。


「おいおいがそう言っているのに、お前はいつまでグズグズしているんだ? そんなんだから呪われたスキルを授かったんじゃないのか!?」


 父の隣に立っているチートがそう言ってくる。彼は目つきを鋭くして、僕をにらみつけていた。


「全くチートの言う通りだ。考えてみれば、お前は昔からハッキリしない、愚図だった!! 見てみろチートを!! 出会ってすぐだと言うのに、私の意見に同調し、お前の無能さを見抜いた!! それにハッキリと物が言える! チートこそ俺の息子に相応しい!!!」


「ギャハハ!!! 父上はそう言っているぜ? まあ、安心しろって。お前の代わりは俺がやっといてやるからよ」


 僕はこの時悟った。もうこの家にいることは出来ないと。


 父はスキル至上主義だ。自分が優れたスキルを授かって成り上がったのもあるのだろう。人の価値はスキルで決まっていると思っている。


 だから、呪われたスキルを授かった僕を罵倒して、勇者のスキルを授かったチートを盲目的に評価しているのだ。もう父にとって、僕は子供でもなんでもなくて、邪魔な存在になったのだ。


「何をうずうずしている!!! ええい!! そんなに生贄になるのが嫌か!? 忌み子のお前がこの世に貢献できる最大のことだ!! 最高の栄誉を最後にくれてやるというのだ!! 自分が恵まれていることに感謝しろ!!!」


 父がしびれを切らして、そう怒鳴りつける。その瞬間、多くの人が部屋に入ってきた。教会の人達だ。


 忌み子の僕に出来ることは魔神の生贄になることだけ。それ以外は存在価値すらない。むしろ、我が子とはいえ、忌み子を容赦なく差し出した自分に酔っているのだろう父は。


 それを察して何もかもがどうでもよくなった。僕は無抵抗のまま、教会の人達に連れ去られるのであった。



————


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