4LUK ラックと守護者とお食事と

「た、倒したね」


「倒したね……」


ミイとミルクは少しだけ疲れていました。


「ていうかミルク!!今のスキルすっごく強かったよね!!」


「ね!」


しかし2人ともその疲れを忘れるぐらいの感動を覚えました。


5人の男たちが立っていた場所はミイが根源の口腔オリジンで抉りとって、少し窪んでいる他に、リコが沢山落ちていました。


プレイヤー戦闘PvPでは、負けたプレイヤーは所持金の2割を奪われ、地面に置いていかれます。


それを誰が取るかは自由です。ほとんどの場合は戦闘に勝ったプレイヤーが取りますが、漁夫(注=第三者の介入。漁夫の利の略)などをするプレイヤーもいます。


相手が弱っている最中に倒すという卑怯な輩ですが、それもれっきとした戦略、戦術です。主にそれしかしないプレイヤーだって沢山います。


ミイとミルクはリコを取って街に戻りました。



***



「ミイ、どうする?」


空は黒く染まり、綺麗な星々が輝いています。つまり夜です。常に夜という場所もありますが、ヘキサヴィルは普通の街。


ちなみに、ゲーム内の時間は現実の時間の50倍の速度で経過します。なので、現実の時間の1時間はゲーム内での約2日です。


「うーん、そうだなー、あ!そうだ!さっき噂を聞いたんだ!」


「ん、噂って?」


ミイは人から聞いた話しました。


ヘキサヴィルの最北西の場所にはバス停のようなものがあり、決まった時間にバスが来ます。


そのバスはとても素敵なものだと聞きました。


「へえー、そんなものがあるんだ。戦闘ばっかだったし行ってみようか」


「うん!!」


ミルクの提案にミイは大賛成でした。



***



「これがバス停かな?」


「そうみたいね」


ミイとミルクはバス停までやって来ました。


そこはコンクリートのようなものでできている道が続いており、


道の先には赤色の小さなものが見えます。


ん?赤色の小さなもの?道の先に?


それはだんだん大きくなっていきます。いえ、なかなかの速さです。


小さなものは箱に、箱は大きな長方形に、大きな長方形はバスになります。


いえ、見えてきます。


向こうから近づいてきていたのはバスでした。


「ねえミルク!ほんとに来たよ!!」


「ほんとだ!乗ろ!」


バスはバス停の前で立っていたミイとミルクの前で止まりました。


運転手はいません。しかしハンドルは動いています。


プシューと音を上げてドアが開きました。


バスは天井がなく、空の景色がとても綺麗に見えました。


ミイとミルクはバスに入り、中を見て驚きました。


「「レストランみたい!!」」


中は普通のバスとは違い、パーティで使われるような細長いテーブルが真ん中にあり、その周りに白くて柔らかそうなソファが囲むようにありました。たくさんの人が乗れるようではないみたいです。


このバスは【Rumored bus】といい、名前の通り、噂のバスです。100日ごとに1度来るか来ないかという幻のバスです。すなわち運が良い人でないと乗れません。


そして、このバスは一種のクエストであり、レアミッションと呼ばれます。ミイが人と言っていたのはプレイヤーではなく、CPだったのです。とても運がいいです。


2人は向かい合ってソファに座りました。


バスは発進します。


2人の前のテーブルに料理とタブが現れました。


[ようこそいらっしゃいました。当バスは沢山の場所に行きます。その間、料理等を召し上がり、優雅な絶景を楽しんでください]


その下には、


【森の野菜パスタ】

【コーンスープ】

【キノコとフライ鳥の炒めもの】etc…


と書かれています。

どれも美味しそうです。


「わあー!!美味しそう!!ねえミルク、はやく食べよう!」


「うん!」


いただきます、2人はそろって言いました。


ミイは、見たことの無いような色とりどりの野菜が盛り付けられた、とても美味しそうなパスタを食べました。


もぐもぐ、おいしい。


ミルクは温かく、柔らかな口溶けのコーンスープを飲みました。


ずずず、うん、おいしい。


ミイは、こんがりときつね色に焼かれた鶏肉の上に、綺麗に切られたキノコが載っている炒め物を食べました。


もぐもぐ、うんうん、おいしい。


「ミイ!美味しいよ!」


「うん!ほんとに美味しい!」


そうして2人は料理をがつがつぱくぱくと食べ進めました。


すると、急にバスが道を走る音がしなくなりました。


ん?なんだ?


ミイは不思議に思って窓から外をみて見ます。


すると、


「浮いてるー!!ミルク!浮いてるよ!!」


ミルクは外を見ました。


「ほんとだ!すごい!!」


それよりその風景はとても


「「きれーーい!!」」


でした。幻想的でもあります。夜空に煌めく幾万もの星が駆け抜けているようです。


そうして日は昇り、外の風景は夜とはまた違った美しさをかもし出しています。


そこには沢山の丘がそびえ立っています。例えるなら、雪舟の秋冬山水図のようです。


頂き、緩やかな斜面には緑があり、沢山の雲がかかっています。


下は木々が鬱蒼うっそうとしており、森のようです。


そしてそれからバスは進み、1つの丘の前で止まりました。


そしてドアが開き。


[ご乗車ありがとうございました。またどこかでお会いしましょう]というタブが現れました。


ミイとミルクはバスから降りました。近くには洞窟があります。


「ミルク、行ってみよ!」


「そうだね」


2人は洞窟の奥に進んでいきました。薄暗い洞窟の中をしばらく歩くと、やがて開けたところに出ました。開けたと言っても洞窟の中です。


そこにはとても大きな灰色の像があります。いえ、立っています。

剣を地面に刺し、両手をその剣の柄の先端に重ねています。


「ミルク、ここなに?」


「わからない…」


ゴゴゴ…


ん?なんの音かな


ゴゴゴゴゴ…


「ミルク、これなんの音?」


ミルクがなにか言おうとしましたが、今までと比べ物にならないぐらいの大きな音によって黙らせられました。


ズゴゴゴコーン!!


ミイとミルクは見ました。そこに立っている像が動き出すのを。


「ミイ!戦闘準備!」


「わかった!」


ミルクは杖を実態化し、ミイは腰に着けている鞘から剣を抜き、構えます。


モンスターの上にHPと名前が現れます。


【英雄の守護者】


ミルクはファイヤショットの次段階のファイヤスラッシュを繰り出します。


「ファイヤスラッシュ!」


杖から出た炎の刃は像に向かって飛んでいき、命中しました。


英雄の守護者のHPが少しだけ減りました。


「HPが多い!いや、防御力が高い!」


ミルクは少しだけ慌てます。


ミイは走り出します。像に向かって。


つまり、転びます。お馴染みです。しかしいつもと違うところがあります。剣は飛びませんし、ミイも滑っていきません。


すなわち、攻撃は相手には当たりません。


するとそのとき、ミイの上を灰色の塊が、グォォォォン!!と大きな音で風を切り裂いて右から左へとものすごい速度で通っていきます。そしてそれが通ったところは爆発していきます。


ズバババババババン!!


連続的な爆発でした。


その灰色の塊は像の手でした。もしミイが立っていたら即死だったかもしれません。当たらなかったのは幸運ゆえです。


「ミイ、デリベーションで足を刺して動きを止めるからそのうちに攻撃して!」


ミルクにわかった!と返事をします。


像の足元に白い球体が現れ、黒い槍、またはとげが飛び出てきて像の足を貫き、地面に刺さります。


英雄の守護者はその場から動けません。


そしてミイはどうしよう。と悩んだ結果、オリジンを発動することに決めました。しかし、一定距離は近づかないと発動出来ません。思いっきり走り出します。


まずは足を壊して体制を崩させよう。と思いオリジンを発動しましたが、慌てて走っている最中に発動しようとしたため転び、その瞬間に発動され、狙いは変な場所にいってしまいました。


オリジンが発動したのは像の胸の当たり、そして黒い球体は穴となり、全てを喰らい尽くします。


像の胸がだんだん抉れ、剥がれ始めます。そして少し剥がれた所には赤色の玉が見えました。なかなか大きなものです。


それは英雄の守護者の急所のコアです。人間でいうと心臓、機械で言うモーター、パソコンで言うCPUにあたります。


それもろともオリジンは喰らい尽くし、無に返しました。


心臓がなくなった人間、モーターが無くなった機械、CPUが無くなったパソコンはどうなるでしょうか。簡単に言うと、活動を停止します。


すなわち、英雄の守護者のHPメーターはとてつもない勢いで減っていき、無くなりました。


大きな大きな像はポリゴンを大量に散らして消えていきました。

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