2LUK ラックとボスと氷結と

「ミルク、次はどこに行くの?」


「そうだなあ、ダンジョン攻略でも行こっか!」


美人のお姉さん(ミルク)はそう言いました。


「そういえばミイ、あんた自分のアバターの顔見たことないんじゃないの?」


ミイは、あ!と言いました。


「確かにまだ見たことない!」


「だよねえ、じゃ、この初期の服装じゃなくてオシャレしてからダンジョン行かない?まあ、オシャレっていっても武器を一式揃えて装備を買うだけなんだけどね」


ちなみにダンジョンとは、階層ごとに分かれているこのクリスタルオンラインを次の層に進むために必ず攻略しなくてはいけないものです。


モンスターが沢山います。沢山戦います。とても疲れます。とてもツラいです。ですが、それを攻略し、次の層へ進むことが楽しいのです。


「うん!そうしよ!!」


ミイは賛成でした。



***



お店には沢山のアイテム、装備、武器が売っていました。


鏡も当然のようにあり、ミイは自分の顔を初めて見ます。


「わあああ!!!」


ミイは叫びました。


「え!?なに!?」


装備を見ていたミルクと他のプレイヤーも驚いてミイの方を向きます。


「かわいい!!!!!ねえミルク!私可愛いよ!!」


鏡の中には茶色の髪の毛に可愛らしい顔つきをした少しせが小さい目がくりんとしていて、そのうえ肌が白いとても美しい、いえ、可愛らしい人が立っていました。


「こ、これが私!?」


えへへ、とミルクはくねくねしています。周りから見たらヤバい人と思われるでしょう。リアルでしたら完全に引かれます。リアルでなくても引かれますが。


ミルクは笑って、


「驚きすぎだよ」


と、言いました。


「だって可愛いんだもん!私じゃないよこれ!私だけど!とりあえず可愛い!」


アバターはゲームをプレイしたときに勝手に作られます。すなわち、可愛い、かっこいい、美しいアバターなどといったものはあまり見られるものではありません。


「とりあえずミイ、装備と、武器見てこ」


「あ、うん」


スライムを倒していただけなので、2人とも所持金は多くないです。


「うわあ、いっぱいあるね」


そうミイが言うと、


「そうだね」


と返しました。


ミイには1つの剣が自分のことを呼んでいるように感じました。


それは水色の刃をしたキレイなものでした。


とりあえず値段を見てみます。


3000リコ(注=クリスタルオンライン内での通貨)でした。


ミイの所持金は3056リコ。今の所持金でギリギリ買えます。ついてました。ラッキーです。これもラック値ゆえでしょうか。


なにこれ!すごいかわいい!


「うん、これ買う!」


果たしてほんとうに可愛かったのかは分かりませんがそれは個人それぞれの感じ方です。


左手で武器をタッチするとタブが出てきます。


[〈氷結の桜(初心者向けベルト付き)〉 3000リコ これを買いますか?]


決定を選択。所持金から3000リコが引かれ、腰に茶色のベルトが現れそこに氷結の桜が現れ、つきました。


おおー!


えっと、氷結の桜?じゃあこの子は……ひーちゃん!


「あれ、ミルクは?」


隣にいると思っていたミルクはそこにいませんでした。


周りを見ると、ミルクは装備(鎧、洋服など)が沢山あるコーナーにいました。またも悩んでいる様子です。


美人なお姉さんだなぁ。


それはまるでモデルさんがオシャレな洋服店でどの服にしようか、と悩んでいる様子に見えました。


「ミルク、どうしたの?」


「あ、ミイ、武器買ったんだね」


ミルクはミイの腰の剣を見て言いました。


「うん!可愛いでしょ!?」


「か、かわいいかわいい」


ミルクは困っているようでした。


「うん、私はこれにしよ!」


ミルクは紺色をした洋服のようなものを左手でタッチし、購入しました。


すぐに装着され、白色のTシャツのような初期の洋服が先ほどミルクが買ったものに変わりました。


「おー!」


ミイは少しだけ驚きました。とても似合っていました。


お姉さんが少しだけモデルさんに近づいたような気がしました。


「あれ、ミルク、武器は買わないの?」


ミイは質問しました。ミルクは


「うん、私はオシャレ優先だからね!しかもこれ防御力プラス30だからね」


ニッコリしながら言いました。


ちなみにステータスのVITとアバターの防御力はVIT値が1上がるごとに5ずつ上昇します。


スキルポイントはアバターレベルが1上がるごとに15ポイント貰えます。1ステータスあげる事に1ポイントが必要です。


攻撃力と防御力もレベルが上がるごとにほんのちょっぴりだけ(1だけ)あがります。


魔力は例外であり、全てのアバターがレベルが上がるごとに同じように上がっていきます。魔力は魔法を使うときに使われます。


だからミイのアバターは


Lv:6

攻撃力:6

防御力:6

魔力:40


です。



***



2人はダンジョンに来ていました。


ミイは毎回のごとく転び、ミルクは魔法を使っています。


新しいスキルも得ました。


ミイは、

【転才(てんさい)】

効果:転んだときに攻撃力が上昇

獲得条件:転んでモンスターを20体倒す


なんだかバカにされているような気がします。


何回転んできたのでしょうか。


ミルクは、

【魔力回復】

効果:使った魔力量に応じて魔力回復量が上昇

獲得条件:魔法を使ってモンスターを30体倒す


すごく使い勝手のよいスキルです。どんな場面でも使えます。


と、気づいたらもうボス部屋でしょうか。


異様にでかい扉が目の前にあります。


「ミイ、多分この奥にボスがいる、気をつけて戦おう。私は出来るだけ回復と攻撃はするね」


ミイは


「わかった。私は……がんばるね!」


何も言うことが思いつきませんでした、


ミルクが大きな扉を開けました。


ギギィ


そこは丸いとても大きな部屋でした。紫色をしています。天井はとても高く見えません。


ミイとミルクが立っている向こうには扉があります。


と、そのとき、無数のポリゴンが現れ、ひとつの場所に集まり、形を作っていきます。


それはドラゴンです。


その上にHPゲージと名前が出ています。


「えっと…ファイヤドラゴン」


ミイが呟きます。


「いかにも炎を出してきそうだね」


と、ミルクが少しだけ笑って言いました。


ファイヤドラゴンが吠えました。


グオォォォォ────!!!


それがまるで勝負の始まりの笛のようでした。


「ミイ!いくよ!!」


「うん!」


「アクアウォーター!」


ミルクの杖から水流が出て、ファイヤドラゴンに思いっきり当たりました。


ファイヤドラゴンのHPが少し減りました。


ミイは走り出し、毎回のごとく転びました。


「ぐべ」


剣は飛んでいき、ファイヤドラゴンに刺さります。


ぐさっ


赤色のダメージエフェクトがファイヤドラゴンから煌めいています。


すると剣が刺さったそこからファイヤドラゴンはヒシヒシとゆっくり凍っていきます。


「え!?なになに!?」


みごとにミイとミルクの声が揃いました。


【氷結の桜】には固有スキルがあります。【氷結決壊】


大型のモンスターには必ず急所、いわゆる弱点、ウィークポイントというものが存在します。

この氷結決壊は相手の急所に剣が刺さるとその場所から-1000℃で凍っていきます。


運営のおふざけでしょうか-1000℃は冷たすぎます。


運よく、ミイの手から放物線を描いて飛んでいったひーちゃんこと氷結の桜はファイヤドラゴンの急所である目と目の間の少し上に刺さりました。運が良かったのです。


そしてファイヤドラゴンは凍っていきます。いつの間にか体全体が凍っていました。ミイはこの固有スキルのことを知りませんでした。


HPはちょっとずつ減っていきます。


「よくわかんないけどなんか上手くいってるよ!今凍ってるから攻撃しちゃお!」


と、ミルクが言いました。


うん、と言い、凍っている龍さんからミイは剣をぶすっと抜き取ります。まだまだすごく冷たいです。


そしてミイが倒してやると思って剣を振り上げたとき、ミルクは


「ファイヤショット!あ……」


炎の攻撃を繰り出しました。その火の玉はミイの方に飛んでいきました。300℃です。照準ミスです。完全に狙う方向を間違えました。


「あ、危ない!ミイ!避けて!」


「え?」


時すでに遅しとはこのことを言うのでしょう。


火の玉はミイに直撃。するかと思ったらミイの振り上げた剣に当たりました。またもや運が良かったようです。ラック値はとても活躍してくれています。


剣は火の玉を受けて燃え始めました!


ぼうぼう、ごうごう。


「え、ええええ!!!???」


ミイは驚きました。自分の剣がいつの間にか燃えているのです。


ですがもうすでに300℃の炎の剣を振り下ろし始めてしまっています。


そして-1000℃の龍さん、いえ、ファイヤドラゴンに300℃の剣は直撃しました。


とても冷たく、高圧力の空間ものに熱いものが当たったらどうなるでしょうか。


当然、氷は一気に昇華し、水蒸気なります。

つまり、水蒸気爆発です。


ドゴオォォン!!!!


「うひゃゃゃー!!!!」


すごい音でした。ミイは叫びながら吹き飛ばされます。


少しだけダメージをうけました剣が小さいミイの体を守ってくれました。


煙が立ち込め、そして消えます。


そこにファイヤドラゴンの姿はなく、ポリゴンが散っていました。


その散ったポリゴンは再び1つの場所空中に集っていきます。

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