006 風花【お題:涙】

 彼氏に振られた。自分が本命じゃなかったことがわかったのだ。

 これは付き合っていたと言えるのか。少なくとも私はそのつもりだった。

 腹が立つやら悲しいやら、今まで気づかず付き合っているつもりになっていた自分に呆れるやら。感情が忙しい。


「だってお前、可愛げがないんだもん」


 そう言ってのけたあいつ。悔しくてその場で微笑みながらさよならしてやった。

 やっぱり可愛げがない。仕方ない、これが私なのだ。

 駅前の雑踏を抜けると、白く舞うものが見えた。


「雪?」


 晴天なのに。街頭ビジョンからアナウンサーの声が聞こえる。


「晴れている日に降る雪を風花と言います」


 笑っているのに泣いているみたいだ。

 今の自分と重なり、一筋の涙が零れた。


(診断メーカーお題:涙)

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