第11話 旅路ってハプニングがつきものだよね
冒険者ギルドにお忍びで行ってみたのだがなぜか俺とトッティは実名を出され、指名手配犯になっていた。もう、本当に意味がわからない。そんな中、この国では好きなように動けなくなった俺たちはある決断をした。
この国を出るという決断を。
この決断をしてからは案外すぐことが進んだ。
まず国を出るために必要なものは交通手段だ。もちろん、歩いていくことも可能。なので俺はルイサにどうかと聞いたら、「もし歩いていったら、この国の隣国はここから半年はかかります」と言われ断念した。
そして、悩んでいるときにルイサが提案してきたのは馬車。どうやら、この世界の交通手段はこれしかないらしい。
それからはというと俺たちはルイサのコネを使い、馬車を買うことができた。
「本当に、お前に馬術の備えがあってよかったよ。ルイサ。助かった」
俺は馬の手綱を握っている、俺より大きき背中を「バシバシ」と叩きルイサに感謝した。
そう。
馬車を買ったとしても、馬を扱えるものではないと馬車など意味がなさない。
もし、ルイサがいなかったときの俺たちの状況を考えると鳥肌が立つ。うん。考えるのはやめよう。
「いえいえ。私はあなた方のお仲間になったのです。であれば、その程度のことで感謝されては困ります。なんたって私はあなた方のお仲間なんですから。くくく……」
「あのさぁ……何度も言ってるけど、いい加減敬語やめてくれないか? 自分よりも優秀そうな人に使われると、心がウニョウニョして気持ち悪いんだ」
俺は、元の世界で敬語でなんか話されたことなど殆ど無い。あるとしたら、コンビニの「ご商品温めますか?」ぐらいだ。
なので普段から敬語を使われることのない俺は気分が悪かった。
「いえ! それは無理な相談です! 私はマサル様、トッティ様、ミーちゃ様に敬意を払って敬語を使っているのです」
「マサル! もうやめてあげるのじゃ。お主が気持ち悪いとかそんなことどうでもいいのじゃ。こやつが敬意を払っているのなら好きにさせてやるのが大人って言うもんじゃろ」
「まぁ……そうなのか……?」
俺はトッティの「どうだ!」と、言わんばかりの顔を見て納得させられそうになっていた。
まぁたしかに、敬意を払っているのならそれは仕方のないことだと思う。だけど、なんで俺なんかに……。
俺は、トッティの言ったことがまだあまり納得できないのだが、もういいやと吹っ切ろうとしたそのとき。
「わしは、一度も慕われたことなんてなかったし敬語を使われると気持ちがいいのじゃ」
「おい、それが本心だろ」
トッティは目線を外しながら小声で言った。
俺はその言葉を決して聞き逃すことなく、的確にツッコんだ。
こいつは最初、なんとなくいいようなことを言って後に本心を晒すので本当にたちが悪い。初めて話したやつは、こいつがいいやつだと勘違いしちゃうぞ。
「いくらマサル様のご相談であっても私は受け入れることができません!」
ルイサは流石に馬の手綱を握っているため、振り返りはしなかったが、後ろの荷台にいる俺たちが耳をふさぐような大きな声で言ってきた。
「そうか……まぁそういうことにしておくか……」
「ニャ……。囲まれてい入るのニャ」
話が終わったとき、俺の頭の上に乗り寝ていたミーちゃがに起き上がり俺の膝の上に飛び乗ってきた。
そして、真剣な目つきをしながら俺のことを見据えてきた。
「ミーちゃ。何人だ?」
「…………。大体10のんぐらいニャ」
ミーちゃはピコピコと耳を動かしながら言った。
あぁ……索敵をしているだけなのになんでこんなに可愛いんだ……。俺はとりあえずミーちゃの頭を撫でる。「ゴロゴロ」という音が心地いい。
それを見たトッティは、「こんな状況でお主ら何してるのじゃ……」という呆れた目をしているがそんなのどうでもいい。俺は頭を撫でながらどうしようかと考えていたとき、馬車が止まった。
何事なのだろうかと思っていたのだが、
「ここは私が片づけます!」
ルイサは荷台にあった槍を両手に握りしめ言ってきた。それはもう楽しそうに新しいおもちゃをもらった子どもかのように。
さらに、頬を赤らめながら。
「いや、やめろ!」
「な、なんで止めるのですか!?」
「……お前、殺す気だろ」
「……えぇ。まぁ、盗賊なんて輩は生きている価値などありませんから」
ルイサは鼻を高くし俺に言い放った。
まぁルイサの言っていることは正しい。正しいのだが、俺の心は大ダメージを食らっていた。
なんたって俺のスキルは盗賊。
そして盗賊団なんかもつくったりしていた。
「のじゃ〜……。生きている価値」
トッティは面白おかしくルイサの言った、俺に突き刺さる言葉を繰り返し言ってきた。
「はぁ〜……。殺すのは厳禁だ」
「わかりました。では、片づけて参ります!」
「あ……あと、盗賊は生きてる価値ないとかもう俺の前で金輪際に言うんじゃないぞ」
「……? わかりました? では今度こそ!」
「頼む」
ルイサは俺の言った言葉の意味はわかるはずないだろう。まぁわからなくていい。
■□■□
「しゅごいのじゃ〜……」
「一瞬だったな……」
そう、ルイサはお得意の槍で木の陰に隠れていたやつや襲いかかってきていたやつなど次々に「バッタバッタ」と容赦なく突き刺していった。
もちろん俺が言った通り殺すことはせず、突き刺すというのは刃とは逆の方で体を突いたという意味だ。
「マサル様! 」
「あぁ……ご苦労様。少し休憩するか」
「ん? 今マサルって言っていなかったか?」
ルイサが縄でまとめた盗賊の中でまだ気絶していなかったやつがその言葉に、反応しルイサにきいた。
「黙れ盗賊!」
ルイサは俺の前で盗賊がしゃべったことが気に食わなかったのか、槍の刃の方を盗賊に向け今にも殺しそうな勢いだ。
「ちょっ、ちょっとまってくれ。少しおま……このお方に聞きたいことがあるんだ」
「そんなこと聞ける立場だと思っているのか!?」
「俺は別にいいぞ?」
俺は荷台の窓から顔を出してそう言った。
俺たちは正直、路頭に迷っていると言っても過言ではない。ここにいる盗賊が俺のことを知っているというのであれば一体どこまで行けば俺たちは人の目を気にせず、暮らせるというのだろうか? そう疑問に思った。
それに、この盗賊なら世間から見られている俺の姿というものを明確に理解できるというものだ。
「……マサル様がいいと言うのなら……。おい盗賊。マサル様の寛大さに感謝するんだな!」
「あ……えっと、まずマサル様ありがとうございます。え〜とおいらがきたいことって言うのは、別に何も知らないんだけど……。」
「前置きが長い! マサル様が呆れるだろ! 早く本題に入れ!」
「ひっ……。あ、あぁわかった。えっとあなたってまさか、あの伝説のマサル盗賊団、初代マサル様ではないですか!?」
「は? お前何言ってる。このお方はたしかにマサル様だが、盗賊団などつくるはずがない」
「そうだぞ」
「そうなんですか!?」
ルイサは信じられないものを見たかのように「バッ」とこちらを向き、目を見開いて聞いてきた。
「あぁ、まぁな」
「さ、先程はあなたが盗賊団の初代マサル様だとしらず、大変無礼な言葉を……」
「いやいいさ……。俺はもう盗賊なんかやめたし」
「そうなんですかい!?」
今度は盗賊のほうが信じられないものを見たかのように「バッ」とこちらを向き、聞いてきた。
なんかこいつら時間差でシンクロしてて面白いな。
「あぁ、今の俺は今冒険者だからな」
「そうなんですか……もうやめたのか……。でも! おいらはマサル盗賊団にたくさん助けてもらったんだ。だから、なにかお手伝いさせてくだせぇ!」
「そんなこといきなり言うな! マサル様が困るだろ!」
盗賊は急に気持ちが高ぶったのか、体を縛られているにもかかわらずその場で土下座のようにおでこを地面にこすりつけてきた。
そしてそれをルイサは、「カーン!」という気持ちのいい音を立てながら槍で頭を叩きつける。
なんかこの二人は色々な意味で息がぴったりだ。コントとかさせたら面白くなりそうだな。
って、今はそんなことどうでもいいか。
えっとそうだな……お手伝いか?
う〜ん……お手伝い……。
「そうだな……。俺たちは最近、指名手配になったのは知っているか?」
「はいっ。風のうわさで知っています! なんか、牢獄から脱獄したとかしてないとか……」
「まぁそんなところだ。それを踏まえて聞きたいんだけど、俺たちの名前を知らない場所ってないか?」
「そうだなぁ……。シャリア王国は隣国が遠いんだけど、なぜか他国への情報伝達が以上に早いということで有名なんだよな……」
あの国、シャリア王国って国名だったんだ。
気にもしていなかったから知らなかったわ。
「……だから、おそらくですがもう世界中はあなたの敵になっていると思うんですよ……」
「そ、そ、そ……そんな〜なのじゃ!」
トッティが嘆きたくなる気持ちもわかる。
まぁ……俺は一応この場で一番偉いからな。
嘆いたときには周りの奴らを無駄に心配させることになってしまう。トッテイが嘆く分にはいくらでも嘆いてもらって構わないけど。
「だけどおいら、一つだけ犯罪者でも歓迎してくれる国を知ってます!」
「…………。そこはなんてところだ?」
「混沌の街、ダーサイドフィニッシャーんだ」
「「なん(だ)(じゃ)そのダサい名前!」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます