第4話 地獄への道は大体のもので舗装できる
緋色(ひいろ)英雄(ひでお)はとあるヒーロー組織のリーダーを務める人物である。
そんな彼の耳に、とんでもない知らせが届いた。
「は? GNOの研究所が潰された?」
『GNO』正式名称『
高い技術力、手段を選ばない悪辣な作戦の数々、非道な人体実験。極めつけは、古の邪神の召喚を企むなど。
この悪の組織は、例のごとく、さも当然の権利とでも言わんばかりに政界に進出、コネで非合法の研究所(偽装はしてある)を手に入れている。
その研究所を守るのは、勿論強力な怪人たちである。
ヒーローですら手を焼いていた巨大組織、末端とは言え、その一部を壊滅した存在に、英雄は脅威を抱いた。
「しかし、誰がやったんだ? できるとしたら、並の能力者じゃないはずだ」
「あの、悪名高い矢倍高校です」
「なッ」
英雄は、ヒーロー兼秘書兼妻(の一人)である、
矢倍高校は、その筋でも有名なキチガイ集団として知られている。
曰く、欲望の渦巻く暗黒の危険区域である。
曰く、学生寮は、かつての九龍城塞のように違法建築マシマシである。
曰く、校舎内は、ある生徒の開発した装置により、ダンジョンとなり、魔物が溢れている。
曰く、プールに巨大怪獣を飼っている。
曰く、無敵の怪物に支配されている。
「よし、ここは初代チームで出動だ。多分、次の目的地は、ここだな。誰かが運び込まれたらしい。彩子、アイツらに連絡してくれ」
「分かりました……貴方、気を付けてね」
「ああ……」
正義の味方には、苦労が絶えなかった。
◇
『ゲヒャヒャ!! 美味ぇ!! この肉美味ぇよ!!』
『あ~、スッキリしたぜ~、いい声で啼いてくれてよ~。まだ使えそうだから、ゼロの力で体内に保存してやったぜ。これでいつでもヤれるな』
『こっちもイケメンがいたから、あたしも保存したわ。便利ね、これ』
邪悪。その一言に集約される会話の内容、そして光景だった。
男も女も犯され、食われ、殺される。中には、死という安寧すら許されない者もいた。
『正義ッ!!! 俺達が正義だァァァァ!!! 死ねぇ!!! 死ねぇ!!!』
「ヒィー!? や、やめ……ゲブジョ!?」
『貴様らはかの超神に楯突いた!!! 楽に死ねると思うなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
「た、助け……ああああ!?」
一部の生徒は、人間から怪物染みた姿へ変貌し、研究所内部にいた研究者や、警備員である戦闘員や怪人を好き勝手に拷問、虐殺、あるいは、口に出すのも
まさに阿鼻叫喚の地獄絵図。しかし、止める者は誰一人としていなかった。
「おーし、そろそろ次行くぞー」
しかし、無敵の号令により、生徒達はいたぶっていた手を止めた。
生き残った者は、僅かながらの希望を見せる。
『ウッス。この生き残り共はどうしましょう』
「んんー?」
無敵は、四肢を引き裂れてなお生きている者や、これから玩具にするために捕らえられている者を見て、考えた。
「別に見逃してもいいんだがな」
『それじゃあ』
生き残りは、目に見えて喜びを露わにした。
しかし、事態は一変する。
『無敵! 地下で実験体にされた連中を見つけた!!』
「何?」
地下を捜索していた生徒が、人体実験の材料にされた者達を見つけてきたのだ。
そして、その中の1人を見て、眉間に皺を寄せた。
「そいつは……」
『ああ。最近行方不明になった、矢倍高校の生徒だ。ひでぇことしやがる……家族ごと拉致るなんて……』
もはや人間とは呼べない異形と化した人々を見て、無敵の怒りメーターは振り切れた。
なお、無敵軍団は自分から異形になったのでセーフである。無理矢理がアウトなだけである。
「
「はっ」
無敵は、土偶羅という生徒を呼んだ。
すると、即座にハニワのような顔をした男子生徒が駆け付けた。彼の目や口は、空洞もかくやというほどに黒々としていた。
「地獄を見せてやれ」
「了解」
土偶羅は、おもむろに服を脱いだ。
「あっ!?」
研究所員の生き残り達は、驚愕した。
彼の鍛え抜かれ、研ぎ澄まされた肉体には、光を反射せず、吸収しているかのような“穴”が開いていたのだ。
「魔物のエサにしてやる……死すら生ぬるい地獄を体験させてやる!」
土偶羅の声とともに、体の穴からドロドロでグチャグチャの怪物の塊が噴出した。
見るだけで、そこに存在するだけで、強靭な無敵軍団すら言い様も無い恐怖を感じる。平気でいるのは、無敵、錦、土偶羅だけである。
それらが、この世で最も哀れな生き残り達を掴み、穴へ引きずりこもうとしていた。
「ヒィーッ!! た、助けてくれー!!」
「お願いじまず!! あの! アレは! あれだげはやめてぐだざい!! お願いじまずぅぁ……ああああああああ!!!」
「こ、殺された方がマシだったぁーっ!!!」
生き残りは、全員穴へと消えた……
そして、土偶羅はそそくさと服を着た。
『無敵殿……今のは?』
「知らん……が、地獄とだけ分かっている。この世の悪意やら邪悪やら、そんなもんを凝縮した空間らしい。まあ、私に恐れをなして逃げ出すレベルの、気休めにもならん場所だ」
『なるほど……』
説明にもなっていないが、生徒達は納得した。脅威のスルースキルである。
「さて、実験された奴らは、学校に
『ああ。空間能力が発現してる奴がいて良かったぜ』
「じゃあ、行くか。多分次んとこにいるだろ」
無敵の号令のより整列した無敵軍団は、再び走り出した。
その目的地は、この地域では最大の大きさを誇るビルだった。
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