2章 ツインテお嬢様は付き合いたい

第26話 プロローグ




 誰も何も話さないまま時は過ぎて行った。


 そんな中、風香は何かを思い出したのか愛莉と未央の2人に話しかけた。


「──貴方達、2年前に誓った約束は……覚えてるわね?」

「当然!忘れる訳ないでしょ?」

「しっかりと覚えてます!」


 風香の言葉に愛莉と未央は堂々と答えた。風香達3人は2年前にある事を3人で決めてたのだ、それはこうだ。



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     2年前に誓い合った約束


・健一が、風香・愛莉・未央の3人の中の1人に告白をしても恨みっこ無し


・誰が付き合おうがいつもと同じ様に接する事


・アピールをしても良い、自分から告白をしてはいけない


・健一を偽デートに誘っても良い


・ライバルが増える様だったらその都度この説明をする


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「──そう、覚えているなら良いわ。でも今の状況はもう違う。以前は健一君の事を狙う女性なんて現れないと思っていたけど、これから現れるかもしれないし──既にもういるのかもしれない」

「「──っ!!?」」


 そんな言葉に愛莉と未央は危機感からか過剰に反応すると身構えてしまった。


 ただ、そんな二人を見て風香は冷静に話を続ける。


、と言ってるのよ。それに本当に健一君の事を好きになっている子がいるかもしれないけど、私達は幼馴染というアドバンテージを持っているわ!」

「その、風香先輩?私、聞いた事があります。幼馴染は負けヒロインだと。それでも勝ち目はあるのですか?」


 威勢良く言う風香に未央は思った事を伝えた。


「………他所は他所よ。別に幼馴染が確実に負けヒロインなんて決まってる訳じゃないわよ?その人物のやる気次第でしょ?それとも──未央ちゃんはもうリタイアかしら?」


 風香はお返しと言うように意地悪な笑みを未央に向けた。向けられた未央は少しムッとした表情になった。


「──リタイアなんてする訳ないじゃないですか。風香先輩より私の方が健一さんを好きなんだから」

「なっ!?……未央ちゃんも言う様になったじゃない?でも、それは否定させて貰うわよ?健一君を1番好きなのは私よ!!」


 未央の言葉に少しカチンと来た風香はクールに接するのを辞め、自分の方が好きだと伝えた。その間愛莉は1人、どうやってこの言い合いを止めるかオロオロしていた。


 そんな中、風香と未央の話し合いはヒートアップしていく。


「………風香先輩、健一さんは好きらしいですよ?それを考えると風香先輩は歳を幾ばくか取り過ぎですね」

「どこ情報よそれ!それに私と貴方は一歳しか変わらないでしょ!!」

「はぁ、分かってないようですね?──その一歳という数字が超えられない壁なんですよ。現実を見て下さい」


 そんな風に「ぎゃー、ぎゃー」と口喧嘩を始めてしまった風香と未央に愛莉は「待った」をかける事にした。


── 悟はその間「青春だな〜」と呑気に見ていただけだが。


「── 2人共少し落ち着きなさい。今、私達で潰し合いをしても意味が無いでしょ?それにもっと大事な決め事があるでしょ?このままじゃぽっと出の女子に健一を取られるわよ?それでもいいわけ?」


「それは嫌よ!」「それは嫌です!」


 愛莉の言葉にさっきまで口喧嘩をしていた2人は声を揃えて否定した。


そんな仲がいい2人に苦笑いを向ける愛莉だが、それも一瞬で大事な話をする事にした。


「ならもっと利己的な話をするわよ。まず、私達は健一が告白をしてくるのを待っていた。それを良い作戦だと思っていた。──でもそれは今は難しくなって来たわ、言葉を変えるなら愚策とも言えるわ。そこで、ここは私達で健一を攻めるのよ!」

「──健一君を攻める?ヘタレな貴女にそんな事、出来るの?」

「そこ!余計な事を言わないの!今からしっかりと説明するから待ってなさい」


 そう前置きをして愛莉が話した事はこうだ。


 健一も言っていた事だが、このままでは幼馴染の関係も無くなり本当に他人になってしまうかもしれない。健一は優しいから本心では言っていないとは思うがそれも時間の問題だ。なら自分達が動くしか無い、そこで愛莉が考えたのはこの3人で健一と偽デートをする事だ。


 偽デートをするのにも理由がある。あんなにも「彼女を欲しい!」と言っていた健一がある日突如、「もう彼女を作るのを諦めた」と言い出したのだ。あんなにも彼女を欲しいと言っていたのにそれは不自然に感じた。


 ただ、本当に何か心境の変化があり、彼女を作るよりも重要な事を見つけたのかもしれない。


 だが、それでは自分達の恋が叶う事は無い、そんな事はあってはいけない事だ。なので愛莉達3人で1人ずつ偽デートという形でデートを行い、健一に彼女というものは良いものだと思い出させると共に鈍感な健一に恋という物を教える事にするのだ。


 勿論、誰が先に偽デートを行うかはフェアに決める為にジャンケンで決める事にする。ジャンケンだったら運次第でどうとでもなるので勝ち負けがしっかりと決まると思ったからだ。


「──と言うことよ。私の話が理解出来てそれで良いと2人が思うなら早速ジャンケンで偽デートの順番を決めるけど、どうする?」

「「………‥」」


 愛莉が説明をし終えると2人に伝えた、その話を頭の中で考えているのか2人は暫し下を向くと無言になり考え込んでいた。


──5分程二人は考え込んでいただろうか?考えが纏まったのか顔を上げる。その顔は何処か決心を決めた時の様な表情をしていた。なので愛莉は二人に問う。


「──二人共、どうするか決まった?」

「えぇ、私は愛莉の提案に乗るわ。ここで何もしないよりは自分から動いた方が賢明だから」

「私も、愛莉先輩の提案に賛成です」


 二人が賛成してくれた事に安堵の息を吐くと気持ちを切り替えた。


「分かったわ、じゃあ今からジャンケンをするけど……これはただのジャンケンだから小細工なんて使っちゃ駄目だからね?」

「分かってるわよ、そんな事しないわ」

「右に同じです」

「………そう、じゃあ行くわよ?」

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