無口少女とお昼休憩

第18話 無口少女の恋心①




 その後は健一と花丸は一言、二言喋ると1時限目の授業が始まる時間になってしまったので、教卓に身体を向けて授業を聞く体制になった。担当の教科の先生が来て授業が恙なく進んで行った。そして時間が進み、昼休み。


 健一はさっき花丸に小声で話した通り、4限目が終わると共に朝に買ったコンビニ弁当が入ったレジ袋を掴み、そのまま後ろのドアから廊下に飛び出した。


 教室から飛び出す時に一瞬見えた委員長の顔が憤怒の表情に見えたが──アレは気のせいだと思う事にして、そのまま廊下を早歩きで進んで行った。


 走れば良いじゃ無いかと思うかも知れないが、これがまた面倒な事で。廊下を走る行為は由緒正しいここ私立星宮高校では校則違反──まぁ、簡単に言うと禁止だそうだ。理由は簡単で廊下を走るがはしたないからだそうだ。


 なので、かけ足ながらぼっち飯をする場所へと健一は向かう事にした。


 今までも1人で食べる時は何度もあった為何処に人が居ないなど既にリサーチ済みだ。


(──今、俺をと思った奴らがいるだろう?だがな?こう考えてみてくれ……1人の時間が手に入ると、な?だってそうだろ?あんな沢山の人間といたら窮屈で息が詰まってたまらん。俺は思う、もっと自分の心を曝け出そうぜ!)


 ──と、ぼっち健一は誰に言っているのか1人心の中で呟くのだった。


 ここで一つ皆に聞こう。ぼっち飯をする時どこで食べるか?皆だったらどうする?図書館だったり、屋上だったり、あまり無いとは思うがトイレなんてあるかも知れない……今はこの言葉が廃れているかもしれないが、昔はなんて物もあった。


 だが、健一はそのどれでも無い。じゃあ何処で食べると言うと──


「勿論、職員室だろ」


 健一は必ずそう言う。


 まずそれにも理由がある。何とこの私立星宮高校は先生達が拠り所にしている職員室があるがそれとは別にお昼になると先生達が集まりお昼を皆で共にする部屋があるのだ。


 これは堂本先生から聞いた話だが先生曰く「男性の教員がいないから女子会みたいな事をお昼に開いている」と言う。


 なので全ての職員がそのお昼だけに集まる部屋にいるらしい、何とそれはこの学校の校長や理事長までもいる。なので昼休みは職員室内に誰もいなくなる為、健一がぼっちの事を知っている堂本先生の配慮でお昼の時間は好きに使って良い事になっている。


 貴重品とかはもし無くなっていたら、犯人は健一1人しかいないからそこは物を盗む生徒では無いと信頼を置かれてるので、安心らしい。


 勿論、他のぼっち飯候補はあるがまず出てくる図書館は飲食禁止なので駄目。屋上は沢山のお嬢様方が「キャッ、キャッ、うふふ」してる為論外。トイレなどの意見も当然却下だ。男子の場合はそもそもが職員トイレを使っている為、それだったら借りて良い事になっている職員室を使えば良いじゃ無いか──となる。


 他の候補もあるがどれも同じ感じなので却下となっている。


「今日は眠いから昼飯を食った後はゆっくりと眠ろうかねぇ〜」


 この後の事を考えてウキウキとしている健一は職員室のドアを開けた。


「さあ、俺のパラダイスは今、ここに!」


 健一は自分1人しかいないと思っているからかテンションを上げて職員室のドアを開けたら──中に先客がいた。


「………‥」

「………‥」


 しばし見つめ合う2人。どちらとも何も喋らないままだったが健一がすぐ様に動き、職員室のドアを閉める事にした。


「………すみませんでした〜どうぞ寛いで下さい〜」

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