第4話 言葉でも刃になる事は多々ある①
もう諦めてしまった健一は暴れる事も喚く事もしなくなったので自衛隊の人達は航空機の中に静かになった健一を入れようとしたその時。
「──貴方達待ちなさい。恐らく鈴様とその少年の間には勘違いが生まれています。だから開放してあげて下さい。プッ!──失礼」
屋上に入る為の扉を開けて双葉達によく通る声で待てと伝えてきた。
その女性は銀色の美しい髪を月の光に照らしている。スタイルも完璧でとても美人な女性だった。──最後少し笑っていた様な気がしたが、健一を助ける為に来てくれた様だ。
その女性の声が聞こえた為、双葉は振り返ると知り合いなのか話し出した。
「レイナ、何が勘違いなの?邪魔しないで。それに貴女は私の護衛なんだから元の位置に戻って誰かが屋上に来ないか見張ってて」
「あらあら、お嬢様ったらそんなに怒らないで下さいまし」
「──怒ってない」
双葉は少しむすっとした顔になり、そう自分の護衛だと言うレイナという人物に答えたが、レイナと呼ばれた女性はいつもの事だと言うように軽く受け流している。
その光景を間近で見せられている健一はこのレイナという女性が双葉の護衛をしている事を初めから──知っていた。
この女性、名前をレイナ・アッシェルトといい。双葉のメイド兼護衛役も行なっている凄腕の人物なのだ。元々日本とロシアのハーフだと言うが他の護衛の
(──出てくるならもっと早く出てきてくれれば良いのに。どうせこうなるのが分かっていたから扉の裏にでも隠れてこの状況を楽しんで見ていたんだろ。笑っていたしこの人……だから苦手なんだよ──美人だしスタイルも最高だけど、この人は無いわ)
未だに拘束されて喋れない状態の健一だが、心の中でそう恨み辛みを言っていた。
健一の内心を知ってたか知らないか、一度健一の顔を見て「クスッ」と笑うとレイナは双葉に健一の無実を証明する様に話だした。
「お嬢様。先程私はお嬢様の勘違いと言いましたが、あれは事実でしょう」
「………なんでそう思う?」
双葉にそう聞かれたレイナは口の端を吊り上げると話した。
「簡単な事ですよ。この──誰でしたっけ?えっと──そう!男・性○様でしたね!」
「んぐっ──!!?」
レイナが言った健一の不明様な名前に流石に黙っている訳にもいかなく、健一は呻いていた。
(誰の名前が男・性○だ!?この女……助けてくれるのはありがたいが一々こっちをおちょくってきやがってからに──)
今直ぐにも自分の名前を訂正したかったが、何も出来ない事に踠いていた。その様子を
そんな中、双葉が健一の名前を訂正してくれた。
「レイナ、名前違う──三丈健一。頭の中は男・性○だけど」
「そうでしたね。三丈性○様……覚えました。それより鈴様、お上手ですね!」
「私もやれば出来る!」
「………‥」
(何も上手じゃねぇよ!?こいつら頭おかしいのか?それに最終的に俺の名前性○になってるじゃねえか!)
ツッコミたい。今直ぐにも目の前の女性達に言ってやりたい事は山程あったが、喋れない事がもどかしい。
「まあ、冗談は置いといて。ちゃんと三丈様が無実な訳があります。鈴様も内心は分かっていると思いますが……それは………」
「それは?」
「それは──この三丈健一、16歳。彼女がいない歴年齢=のお方にそんな事が出来ると思いますか?それも童○で他の女性と
「──ゲヘッ!?」
レイナのその心を抉る様な言葉の数々に健一は吐血を吐いてしまった。
(ぐはっ!?──事実だが、事実なのだが。言って良い事と悪い事があるだろうが………)
そんな事を内心思っている健一だが、健一を抑えている自衛隊の人達も流石にこの公開処刑はキツいと哀れんだ瞳で見ていた。
レイナの言った言葉を聞いていた双葉はそれも一理あると思ってくれたのか。
「ん、それもそう。健一が女性にそんな事出来る訳無い。女性どころか男性ともそんなに友達がいない生粋のコミュ症だから」
「………‥」
双葉のその言葉に返す言葉も心の中で考える言葉も何もなかった。もう健一のライフはゼロだ。
「そういう事です。だから今回は三丈様も伝え方が悪かった様ですが、鈴様の勘違いだという事です。ですので開放してあげて下さい」
「ん、分かった。皆悪いけど健一を開放してあげて」
双葉にそう言われた扇達は直ぐに健一を開放した。
「わ、分かりました。少年──その、すまなかったな?」
「──いえ、良いんです。貴方達は言われた事を実行しただけなので」
「だけど、すまなかった!」
扇達は皆それぞれ頭を下げて謝ってくると健一を立ち上がらせてくれた。その様子を見ていた双葉は健一に謝ってきた。
「健一、ごめん。私の勘違いでこんな事になってしまった。償いをさせて欲しい」
「いや、良いよ──俺もさっきレイナさんが言った様に言い方が悪かったから俺も悪かったんだし」
「でも………」
それでも謝ってくる双葉を見て、健一はいきなり双葉の頭を撫でだした。
「ん!?──健一、何する」
いきなりの事で驚き抵抗していた双葉だったが、男の健一に勝てる訳が無く。されるがままに子供の様に頭を撫でられていた。
「双葉、俺とお前はどっちとも謝ったんだ。ならおあいこって事で良いだろ?そしたら元通りだ。だからな、双葉もあまり深く考えんなって、な?」
「──むぅ、健一がそれで良いなら……」
双葉は一応理解してくれたのか健一に頭を撫でられ、渋々ながら返事を返してくれた。
その後は今日集まってくれた自衛隊の皆さんに双葉が謝り帰ってもらうと──レイナが話だした。
「いや〜、良かったですね!仲直り出来て!これで元通りですね!」
「アンタが言うな!最初から助けてくれればこんな事にならなかっただろ………」
「──はて?何のことですか?」
「………この、女」
健一がさっき言えなかった不満をレイナに伝えたが、素知らぬ顔をしてきた。それもまたムカついたが、何を言ってもこちらが負けるだけだと思い、もうどうでも良いやと思い始めた。
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