鈍感主人公の育て方 本人だけは自分が鈍感だとは気付いていない件について
加糖のぶ
1章 鈍感男と無口少女
第1話 プロローグ
◆
過去、政財界で活躍する若者達を多く輩出してきた高校で、偏差値もかなり高く、中高大一貫校となっている。
その歴史は深く、かつては貴族や華族の子女も多く通っていたという由緒正しい名門校だ。
私立星宮高校は元々お嬢様学校だったのだが、少子高齢化が進んだ事が原因でここ2〜3年で一般の生徒も受け入れる事になった。
ただ、元々がお嬢様高校という事もあり、男子生徒の入学は抽選で決められ、この生徒なら大丈夫と判断された限られた少数の人間しか通う事が出来ない。
元々が中学から入学し、そのままエスカレーター式で高校、大学と進んで行くが、最近受け入れる様になった生徒達は高校からの入学となっている。
そんな伝統ある学び舎から下校している生徒達。
今は放課後の下校時刻ということもあり、帰りの支度をした生徒達が友人やクラスメートとおしゃべりをしながら賑やかにそれぞれの帰路についている。
そんな中、ある生徒は家に帰る事なく夕焼けが照らす屋上で自分が呼び出した生徒を待っていた。
「………緊張する、でもここで成功すれば……俺の薔薇色の生活が──」
夕焼けの下1人呟くのは、私立星宮高校2年生の男子生徒、
三丈健一は大丈夫だと判断された少数の男子生徒のうちの1人になるが……本当にこの高校に入れても良かったのかと言われるほどの……問題児だった。
別に成績が悪いとか、普段の素行が悪いとかは無いのだが、ある一点だけ他の生徒にも先生にも問題視されている事があった。それは──女性への手癖の悪さだ。
ここがお嬢様高校だと知っていたのか、入学当初に何人もの女性に告白をして振られるを繰り返し。
今では校内一の問題児として認識されており、女子生徒は三丈健一に出来るだけ近寄らない様に徹底している。そんな中、今回健一の呼び出しに応じてくれた生徒はかなりのお人好しか、もしくは健一の事を知らない生徒だと思われる。
でも、それでもこのチャンスを逃したくない健一は自分が呼んだ女子が来るのを待っていた。
待っていたが1時間誰も来ず、空が暗くなって来たからもう来ないかと思っていた時、1人の女子生徒が現れた。
その女子生徒は健一もよく見た事がある女子生徒だった。というか知り合いだった。
小柄な体型から何処となく小動物感が出ていて可愛らしいが、日本人形の様な端正な顔立ちをしていて、何故か無表情。何処を見ているのか分からない夜より深い瞳。
暗闇の中でも分かる程の綺麗な光沢を持ったボブカットの黒髪、胸は……まぁ、今後に期待ということで。
そんな彼女の名前は
そんな少女が護衛も連れず(恐らく着いて来てるが何処かに隠れているのだろう)今健一の目の前に立っていた。
でも、正直に言うと嬉しくなかった。だって……だって目の前の少女に一度告白をして完膚なきまでに振られているのだから。
というかそんな事はどうだって良いのだ。まず健一は目の前の少女に伝えたい事がある。
それは──
「──俺は君なんて呼んでない!!」
健一は心から思っていた事を声高らかに叫んだ。
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