朱雀(スザク)編

第6話 かぐや姫、殺害予告を出す

「じゃ、どんな犯罪を犯しますか?」

もうやるからには徹底的にやってやる。と

大分やけになっている玲愛(りな)。

「まず、私たちのやる犯罪には2つ条件があるわ」

かぐや姫はメモを片手に淡々と話を進める。

「1つ目は2人同時に逮捕されなきゃならないこと」

「確かにそうですね。かぐや様がお代官様をぶち〇しても捕まるのはかぐや様だけですし、最終目標の2人で地球に行くことが出来なくなってしまいます」

玲愛はその条件に対しては凄く納得していた。

…次の条件は全くの予想外だったが。

「2つ目は、終身刑になるレベルの罪じゃないといけない事だわ」

「ほえ?」

玲愛は予想外の条件に目を丸くした。

「言ってなかったけど、わたしは成人を迎える頃に月に戻されたのよ」

「…つまり?」

「寿命で死ぬまで地球にいたいってことよ」

「あー…なるほど。かぐや様は本当に地球が好きなんですねー」


少しの空白が挟んだ後、玲愛は口を開く。

「じゃあ、結局何をすればいいんですか?」

玲愛は何をするのか怖がりながらも少し、期待していた。

かぐやはもう考えていたようで直ぐに答えた。

「この世では、紙切れだけで重罪を起こすことができるわ」

またしても予想外の言葉に玲愛は興奮する。

「そんなこと出来るんですか!?なら早く教えてくださいよー!」

玲愛は期待を膨らませていたが、次の一言で瞬時にその期待は砕かれるのであった。


「国家反逆罪よ」

「へ?」


「殺害予告を提出して、捕まれば早いわ」

「殺害予告でそんな…できますか?」

かぐやの予想外すぎる作戦にまるで理解できない玲愛がいた。

「この国をぶち壊すーみたいな内容を提出すれば、関係者も直ぐに捕まるし最も重い罪になるわ」

「なるほど、実際はそんなことしないけどこれが手っ取り早いって事ですね」


だれも血を流さないし、2人の目標は直ぐに達成できる。まさに完璧な作戦だった。

「では、早速書きましょう!」

―2時間後

「はぁ、できたぁ!」

なるべく脅しになるような内容になるように調整してたら時間がかかった。


上官様達へ

我々書類管理グループは現在の月の政治に疑問を持ったため、責任管理者である上官様達を3日後の夜312時に抹〇致します。

残り3日間を有意義に過ごせるよう願っております。

By 書類管理委員会


こんな内容を平然と書けるこの2人はもう末期なのかもしれない。

「じゃ、いつもの業務用書類に混ぜて出しますか」

玲愛はそう言ってもう躊躇うことなく、書類を提出しに行った。

これで、地球に帰れる。

「…意外に呆気ないものね」

そう思いながら、かぐや姫は休日の残りを過ごした。

―ここはかぐや姫の職場の屋根。

「…やっぱりかぐや姫が、あの女がそうだったんだな」

暗闇に輝く隻眼と、月光で跳ね返る、赤髪を纏った美女が、そこにはあった。

「覚悟しておきな」

消し跡だらけの紙を引き裂いて言う。


「絶対に地球へは帰させない」


第7話へ続く…

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