第5話 かぐや姫と玲愛、脱出方法を模索する

「で、月から脱出するのは分かったのですが…」

書類が撒き散らされ、障子には穴が開き、

ホコリが舞っている部屋で玲愛は聞く。

「どうやって月から脱出するんですか?」

玲愛はずっと疑問に思っていた。

月から脱出しようって言っても方法が無ければ仕方ない。

「一応月には移動用として星雲(セイウン)がありますがあれはごく限られた場合でしか使えませんよ」

「玲愛」

「はい、なんでしょうか」

「私が何故地球に行ったことがあるか知ってる?」

玲愛は何かを察したのか、

「なるほど、前と同じ方法を試すのですね。どういう方法で地球に行ったのですか?」

かぐやは少し言うのを躊躇ったが言った


「罪を犯したからよ」

「え」


玲愛は驚きを隠せなかった。

清き正しい月の民が罪を犯すなんてできるはず無いと思っていたからだ。

「…わたしは人間の薄汚い魂が入ってるとかどうたらで、1度地球人として転生させられたのよ。そして…」

「もういいですよ、かぐや様。十分に理解出来ました。つまり、もう一度罪を犯すのですね?」

玲愛は頑張って笑顔を作り言った。

「たしかにかぐや様は人間らしいというか、図々しいというか、そういう一面があったんですよね」

「一言余計よ」

かぐやが平手打ちを玲愛にすると、笑顔を振り撒き、真面目な表情へと移った。

「でもかぐや様、これだけは確認したいことがあります」

「…なによ」


「かぐや様は月での記憶を消されたいですか?」


「…………」

かぐや姫は考えてもない質問が飛んできて、少し困惑する。

「そうですよね〜わたしという1000年以上の付き合いの友達失いたくないですよね〜」

玲愛はぶん殴りたくなるような顔をしていると、

「いいわよ。記憶、消されても」

「へ?」

一瞬沈黙が訪れ、数秒後に

「ちょっと待ってくだしゃいかぐや様!わたしとかぐや様は主従関係でありながらも伊達に1000年以上の付き合いではないじゃないですか!もうちょっとわたしを友達と思ってくれても…」

玲愛は半泣きになりながら叫ぶ。

「ただし」

「へ?」


「あなたも来てくれるならね」


…男だったら激萌え、親友だったら号泣、

そんな一言だが…

「いや、嫌ですよ、あんな汚いところ。地球人なんていう薄汚れた生物と暮らしたくありません」



「……協力条例その1」

「はい?」

「主人の意見は絶対。守らなければ極刑」

―どれほど時間が経っただろうか。

「いい?わたしと一緒に地球に行くの。

これは命令、分かった?」

「はい…分かりました…」

かぐや姫は少しメンヘラ気質になっていた。

何はともあれ、ここからいよいよ月からの脱出が本格的に始まる!


第6話に続く…(折り返しなのであとがき書きます)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る