第5話「お茶会と着ぐるみの機士」
「まったくレオナがごねるから出発が遅くなっちゃったじゃない!」
レオナ、レオナルド・D・マイスター団長はウェストランド円卓帝国の新型巨人機、ロケットナイトRK-5[パラデイン]RK-6[サジタリウス]の巨人機開発実験団、団長で両機体のロボット機構と兵装開発を中心にしていたがウェストランド円卓帝国マリー・ウェストランド皇后が開発中のその一機を持ち出そうとして騒ぎになったのだ。
マリー・ウェストランド皇后陛下は[わがままマリー]と呼ばれていた。
白地に虹の七色から一色がパーソナルカラーとなり肩にラインを引く巨人機部隊、ウエストランド円卓帝国皇后の護衛兼式典機士団として作られる予定の七色機士団レインボーナイトコーアであったが純粋に護衛機士と呼べるのは単座型のロケットナイトRK-6A[サジタリウス]と同じタイプの四本足ロケット巨人機、直列複座型仕様のロケットナイトRK-6BM[マリー・サジタリウス(イエロー)]とその機士だけであった。
「オソクナッチャッタジャナイ!」
ライオンの着ぐるみを着て更にその上から特注品の白いミリタリーコートのスラリと体格の良い男が白に黄の肩ライン、上半身が人型の四本足ロケット巨人機、ロケットナイトRK-6BM[マリー・サジタリウス(イエロー)]の直列複座の前席で操縦桿を握っている、まるでマリー・ウェストランド皇后の御者のようだ。
「急がないとお茶会に遅れちゃうわ」
マリー・ウエストランド皇后はそのライオン着ぐるみ機士の後ろ、直列複座の後席で宮廷から抜け出した彼女はラフな白いワンピースで少し盛られたセミロングの栗毛の髪を人差し指で「くるくる」していた。
「オクレチャタ!」
着ぐるみライオン機士がただ言葉を繰り返す。
そうこのライオン着ぐるみ機士だけがマリー・ウエストランド皇后の純粋な護衛機士であり、実はこのライオン着ぐるみ機士の武功は神話級に凄まじかったがこのライオン着ぐるみ機士は見ての(読んで)の通りの人だったのでマリー・ウエストランド皇后の護衛機士兼お車係としてこの七色機士団レインボーナイトコーアに配属されているのだった。
***
「マリにちはーー♪ クレオちゃん♪♪」
「クレにちは……? マリー皇后……??」
うちわだけの挨拶と共にウェストランド円卓帝国とイーストランド連邦の国境の南に位置する砂漠の熱々国家郡ミッドランド王国首長国連邦、そしてその首都ミッドランドにマリー・ウエストランドは四本足ロケット巨人機、ロケットナイトRK-6BM[マリー・サジタリウス(イエロー)]で降り立った、まだ出来てもいない機士団の機密扱いの新型機巨人機とライオン着ぐるみ機士を連れて降り立ったその場所は新大陸を巡って対立中の極東連合共和国とウエストランドの間でもあり世界を繋ぐ場所と呼ばれていた。
巨人機開発実験団レオナルド・D・マイスター団長が止めるのも無理は無い、ロケットナイトシリーズはブリテン・ガリア円卓連合王国時代から始まる国家の最高機密にあたるからだ。
「マリー……、今日はゆっくり……出来るのかしら……?」
クレオパトラ・ミッドランド女王はマリー・ウエストランド皇后の後ろに居るライオンのそれを見つめ言葉を濁す。
「ええ、クレオちゃん、今日は立派な御者と馬を連れてきたから警護も万全よ♪♪」
御者=ライオン着ぐるみ機士
馬=国家最高機密兵器
「ところで……そちらの
クレオパトラ・ミッドランド女王は勇気を出してそのデカイライオン着ぐるみ機士を下から覗き込む、白い巻きドレスの腰まである長い黒髪が背から肩をくぐり前へと落ちる。
『砂漠でそのスタイルは危険過ぎますぞライオン殿』と、クレオパトラ・ミッドランド女王は心配を禁じ得ない。
「ヘラクレス・トゥエルブ卿よ♪ 新しく作られる私の機士団、七色機士団レインボーナイトコーアで私の従者になった七人の機士の一人なの、マリーの[サジタリウス]を操縦する謎の機士なのよ♪♪」
マリー・ウエストランド皇后のせいで国家機密がだだもれです。
「ナゾノキシ!」
ヘラクレス・トゥエルブ卿は言葉を繰り返す(なにも考えてないの?)。
「はて? ヘラクレス・トゥエルブ卿と言うてしもうておるが??」
クレオパトラ・ミッドランド女王はマリー・ウェストランド皇后も、ヘラクレス・トゥエルブ卿も、これを許す(たぶん許してない)ウェストランド円卓帝国も大丈夫かと思った。
「ユウテシモウテオル!」
ヘラクレス・トゥエルブ卿が言葉を繰り返す(やっぱりなにも考えてない!)。
御者(機士)=ヘラクレス・トゥエルブ卿
馬(巨人機)=ロケットナイトRK-6BM[マリー・サジタリウス(イエロー)]
「まあ、取りあえず妾の神殿に来るがよい、極東連合共和国皇帝妃
クレオパトラ・ミッドランド女王は考えるのは止めた、マリー・ウエストランド皇后はそもそもそういう人だ。
***
巨大な四角い石、柱構造の神殿、マリー・ウェストランド皇后とライオン着ぐるみ機士ヘラクレス・トゥエルブ卿を連れだちミッドランド王国首長国連邦クレオパトラ・ミッドランド女王はお茶会の席へとゲストを自ら案内する、クレオパトラ・ミッドランド女王は気遣いの人だ。
「マリにちはーー♪
「
本物の訳無い! 着ぐるみだ!! 極東連合共和国皇帝妃、唐玉環皇后は天然を炸裂させた、ゆるふわショートボブの光りを通す明るい黒髪が、着ぐるみライオン機士にはしゃぐたび「ふわりふわり」と揺れ動く。
クレオパトラは唐国の伝統的な着物が崩れないか心配した。
「玉環ちゃん、本物じゃないよ、ニセライオン、ニセライオン! 見せたくて連れて来たの♪ 私の機士なの♪ イケメンでしょ♪♪」
「本当♪♪ イケメン可愛い♪♪ マリーちゃん、写メしていい??」
「玉環皇后はものおじせんの……」
クレオパトラ・ミッドランド女王これからこの二人の天然を相手にお茶会するのだ、本当にご苦労様です。
「ヘラクレス、ここまでで良いわ、ありがとう♪」
マリー・ウェストランド皇后は高貴なる秘密のお茶が行われるクレオパトラ・ミッドランド女王のプライベート庭園入り口の扉を閉めつつ半分顔を覗かせ「しっ」って口に人差し指をあてた。
「ヘラクレス! イイワ! アリガトウ!」
ほぼ出オチのライオン着ぐるみ機士は言葉を繰り返す。
大国同士の秘密のお茶会(女子会/姫会)がおこなわれる庭園前までついて来た七色機士団レインボーナイトコーアのライオン着ぐるみ機士、ヘラクレス・トゥエルブ卿は外に在る四本足ロケット巨人機、ロケットナイトRK-6BM[マリー・サジタリウス(イエロー)]の冷房の利いた前席に戻り待機する、そしてこの着ぐるみライオンはお茶会に居たとしても大した会話はしないだろう……ヘラクレス・トゥエルブ卿の本話出番が終了した。
お疲れ様、ヘラクレス・トゥエルブ卿♪
***
クレオパトラ・ミッドランド女王の秘密の中庭、木々と流れる水の庭園、小さな大理石のドーム屋根と六本円柱のガゼボ(西洋式
木々と水の庭園はとても涼やか。
「でも玉環ちゃんトコとは戦争してて大変だよねーー」
ウェストランド円卓帝国のマリー・ウエストランド皇后は紅茶しながらお菓子をパクつき極東連合共和国とのセンシティブな話をあっさりと切り出した。
「そうだよ~~、マリーちゃ~~ん、新大陸の領有権で~~ず~~~~~~~~と戦争! もう嫌になっちゃう!」
極東連合共和国の唐玉環皇后はプーアル茶をいただきライチを頬張る。
「そなたら少し軽すぎないかえ? それに本格的に開戦はしておらんじゃろう?」
ミッドランド王国首長国連邦のクレオパトラ・ミッドランド女王はお茶会と名をうっているにもかかわらず赤ワインを胃に落とす、シラフで天然二人の相手はしていられないのだ。
「そうなのークレオちゃん?」
マリー・ウェストランド皇后がお菓子をぱくり。
「知りませんでした~~パトラさん」
唐玉環皇后がライチをぱくり。
「うむ、取りあえず名前を統一してもうかの?」
クレオパトラ・ミッドランド女王がワインをごくり。
「クトラちゃん!」
「クトラさん!」
「普通にクレオパトラと呼ぶがよい、妾は女王なるぞ」
あはは
うふふ
ふっ
女の子、三人よるとかしましいのだ。
「あっそうだクレオパトラちゃん、ネロおじさま来なかった?」
「おう、来おったぞ、あやつロケットナイトのテストだと称して我が国が誇る三倍偉大なる錬金術の始祖、ヘルメス・スリー・エックス・グレートネス大錬金術師様の作りたもおた巨神機、わが国が誇る砂漠の神獣、神獣型四本足ロケット巨神機、ロケットゴッド、RG-1A[スフィンクス]を四機も食って行きおった!」
「えーー、クレオパトラちゃんごめーーーーん♪」
マリー・ウェストヨーロッパ皇后は手を合わせ謝る、態度が軽い、コイツ損害がよくわかってない??
「言い方軽いわ! 弁償せい!!」
クレオパトラ・ミッドランド女王はワイングラスを握りしめる、国家規模の大損害なのだ!!
「OK♪ じゃあ[ケンタウルス]あげるよーーーー♪」
マリー・ウェストランド皇后の高度な外交努力!!
「なんとウエストランド円卓帝国の四本足ロケット巨人機、ロケットナイトRK-4B[ケンタウルス]をかえ!?」
ロケットナイトRK-4B[ケンタウルス]はロケットナイトRK-6BM[マリー・サジタリウス(イエロー)]と同じ巨人の上半身と四本足ロケットの下半身をもつ巨人機で現在ウエストランド円卓帝国がイーストランド連邦との国境とウェストランド円卓帝加盟国ヘッラス共和国とミッドランド王国首長国連邦の国境付近に配備した重量級四本足ロケット巨人機であり、とっても攻撃力が高く、とっても高価な巨人機だった。
「ホントは、新しいのあげたいんだけどーー、アレ今二個しかないの(グスン)」
マリー・ウエストランド皇后が勝手に持ち出したヘラクレス・トゥエルブ卿の四本足ロケット巨人機、ロケットナイトRK-6BM[マリー・サジタリウス(イエロー)]とネロ・ロームルス卿のロケットナイトRK-6A[サジタリウス(ブルー)]の事である。
『しもうたの、こんな事ならネロのやつにもっと壊させておくべきじゃった……』
クレオパトラ・ミッドランド女王の中で外交的そろばんが弾かれる!!
「お話終わった~~?」
唐玉環は退屈そうだ。
「おお、すまなんだな玉環皇后、ところでそなたの方はどうかの?」
「う~ん、なんだか~~ウチも~~新型機作るって言ってたけど~~和国の人がエンジンくれなくて禁軍の人困ってたよ~~」
唐玉環の言う禁軍は皇帝直轄軍の事。
「本当かえ玉環皇后、なんと禁軍でも独自に新型巨人機の開発を?」
極東連合共和国の軍事機密が駄々漏れです。
「でも何で和国が技術出さないの? 侍機士の和国って極東連合共和国で唐国のお友達なんでしょ?」
マリー・ウェストランド皇后、良い質問した!
「え~~よくわからないけど~~組織が違う~~の??」
「確かアレじゃの、政治を司る皇帝と軍事を司る征夷大将軍の綱引きが行われておるのだろう?」
極東連合共和国は大陸の唐国に政治の中心が、東の島、和国に軍事の中心がありパワーバランスが微妙なのだ。
「なんか~~、信長ちゃんって将軍が意地悪するんだって~~、
極東連合共和国、和国征夷大将軍、
「
内に天然、唐玉環、外に魔王、織田木瓜信長とは……。
このお茶会ではしばし政治の情報が交換される、それは一見たわいない会話に聞こえるかもしれない、しかし高度な外交なのだ決して天然二人に経済および軍事的に劣るミッドランド王国首長国連邦の気遣い女王、クレオパトラ・ミッドランド女王が振り回されてる訳ではないのだ。
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