第4話「二人の吸血鬼と竜殺しの英雄と歌う暴君機士(後編)」
高高度の空の彼方、機士達の戦いが始まる。
「ワラキア公国とその国民は我が護る!!」
ワラキア公国、ヴラド・ワラキア公の駆るイーストランド連邦の束ねロケットスカート巨人機、ロケットロボットrr-8-g[ブロンズナイトⅣ(フォー)]は両ロボットアームに巨人機兵装、片手片刃直剣、ロケットロボットウエポンrrw-8-vw-lssヴラド・ワラキア公専用[ロングストレートサーベル(竜の剣)]を装備、通常なら反りのある片剣サーベルだが、ヴラド・ワラキア公は外敵を正面から貫くのを好み、その刀身は真っ直ぐ敵に向う。
ヴラド・ワラキア公はその肩にかかるストレートの黒髪をかきあげ、また垂れた前髪の間から赤く光る瞳を「ギロリ」と除かせた、彼の瞳は何時も何かに抗うようだった。
それは間違いようもなく吸血鬼のそれだった。
「ちょっと待ちなさいよ、一人で先走らないでちょうだいワラキア公!」
マジャルハザール・エリザベート公はワラキア公国の北に位置するマジャルハザール公国から不意をつくため同時に打ち上げられた為少し遅れていた、彼女の巨人機もイーストランド連邦条約でルーシ帝国からの供与巨人機で、束ねロケットスカート巨人機、ロケットロボットrr-8-g[ブロンズナイトⅣ(フォー)]マジャルハザール・エリザベート公機のロボットアームには、機体全長を遥かに超える巨人機兵装
マジャルハザール・エリザベート公はモニター越しのロボットアームに持たれた薔薇の剣を見つめその常に艶やかなスパーロングで毛先のカールした黒髪をそっと撫で深紅に光るのその瞳を細め笑った。
マジャルハザール・エリザベート公はその黒髪も吸血鬼ヴァンパイアの深紅の瞳もとても気に入っていたが、今二人の着るルーシ帝国の緑の軍服と申し訳程度に左胸と左肩に付けられた両国の国旗のワッペンが二人微妙な立場を表していた。
「この人達の兵装、二人して串刺し狂ですか?!」
ジークフリート・ドラコンスレイヤー卿は兵装に悪意を感じる
「確かに~~♪ それは~~♪ 残酷を感じるが~~♪ 余に通じるかな~~~~♪♪」
ネロ・ロームルス卿は楽しそうだ。
***
束ねロケットスカート巨人機、ロケットロボットrr-8シリーズは優秀で信頼性の高い巨人機だったが何度もマイナーチェンジを繰り返し、現ウエストランド円卓帝国の主力機、ロケットナイトRK-3A[ホワイトナイト]になら同等の戦いにもなるレベルにあったが、ここにはウエストランドの新型巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(インディゴ)]と竜殺しの英雄、ジークフリート・ドラゴンスレイヤー卿、ロケットナイトRK-6A[サジタリウス(ブルー)]と暴君機士ネロ・ロームルス卿がいるのだ。
「我らを倒せるか? 竜殺しの英雄!!」
ヴラド・ワラキア公が笑う。
「マジャルハザール公国は領土も国民もあたしのなの、誰にも近づかせないわ」
マジャルハザール・エリザベート公は微笑む。
二人の口元に牙が見える。
「ここまでくれば戦闘は避けられませんね、切り伏せるのみです!」
ジークフリート・ドラゴンスレーヤー卿の巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(インディゴ)]は巨人機兵装、竜殺しの両手剣、ロケットナイトウェポンRKW-5-ZDSP-Bジークフリート・ドラゴンスレイヤースペシャル[タイタン・バルムンク]を構えた。
「ジークフリート・ドラゴンスレーヤー卿~~♪ 余は~~♪ 高見の見物と洒落混むぞ~~~~♪♪」
「は? それはどういう事ですか? ネロ・ロームルス卿??!!」
ネロ・ロームルス卿にはロケットナイトRK-6A[サジタリウス(ブルー)]の巨人機兵装、超長距離二連超重砲、ロケットナイトウェポンRKW-5-NRSP-WECネロ・ロームルス卿スペシャル[タイタン・ダブルエレファントカノン(ネロ・カノン)]を両手に二丁四門を構え、その四足ロケット機でしか仕様出来ない強力な砲を支援にも使わず無駄にするようだった。
「邪魔されるよりましか……」
ジークフリート・ドラゴンスレーヤー卿はネロ・ロームルス卿の気まぐれな攻撃に振り回されるより自分の戦いに集中した方がいいと覚悟し巨人機兵装、竜殺しの両手剣、ロケットナイトウェポンRKW-5-ZDSP-Bジークフリート・ドラゴンスレイヤースペシャル[タイタン・バルムンク]を機体に少し寄せ防御からのカウンターを狙う構えに直した。
ジークフリート・ドラゴンスレーヤー卿は長期戦に成るとふんだのだ。
「ふっ、我が攻撃する必用はないのだよ侵略者どもが!!」
自分から出ておい侵略者もないが、ブラド・ワラキア公が「チラリ」と上方に赤い瞳をやる。
「ジークフリート・ドラゴンスレーヤー卿~~~♪ 上だ~~~~~~~~♪♪♪♪」
ネロ・ロームルス卿が歌う。
「落下加速してきたのよ♡」
マジャルハザール・エリザベート公が勝利を確信する。
「何と!!」
ジークフリート・ドラゴンスレーヤー卿はネロ・ロームルス卿のその声(歌)を聞くやいなや上を見る隙すら惜しいと巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(インディゴ)]の二本足ロケットのロケットエンジンをブラド・ワラキア公の束ねロケットスカート巨人機、ロケットロボットrr-8-g[ブロンズナイトⅣ(フォー)]に向け全快にして放ち、後ろに下がった。
「遅い! 侵略者が!!」
ヴラド・ワラキア公が自分で来たのを置いてそれを叫ぶ!
「せめてっ!!!!」
ジークフリート・ドラゴンスレーヤー卿はなんとか反撃の手を考える。
ジークフリート・ドラゴンスレーヤー卿の真上から巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(インディゴ)]にむかって一振の槍が突き立てられた。
「む~~♪ これは~~♪ 無人ロケット投てき槍~~♪ 特攻兵器か~~~~♪♪」
ネロ・ロームルス卿は左ロボットアームと左足ロケットを失ったジークフリート・ドラゴンスレーヤー卿の巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(インディゴ)]を見てこの戦場の確信に触れた、[パラディン(インディゴ)]に突き立てられた敵、巨人機兵装、
「あらやだ、あたしの槍が落とされたわ」
マジャルハザール・エリザベート公が不愉快だ。
「ハア、ハア、反射で切るのが精一杯だった……」
ジークフリート・ドラゴンスレーヤー卿の巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(インディゴ)]は残された剣を持つ右ロボットアームと右足ロケットだけで何とかバランスを取り「フラフラ」と飛んでいる。
「しっかりしろ~~♪ ジークフリート・ドラゴンスレーヤー卿~~♪ まだ終わっておらぬぞ~~~~♪♪」
「……周りにロケットの槍が?!」
ジークフリート・ドラゴンスレーヤー卿は鮫が獲物を狙う様に自身の巨人機の周りを回る無人ロケット槍に、イーストランド連邦ヴラド・ワラキア公、マジャルハザール・エリザベート公が繰り出した新たな戦法に巨人機の戦いが変わったのかと生唾を飲み込んだ。
「ハハハ~~♪ この世の絶望でもあるまいし~~♪ 戦争が小さなこの巨人機だけで決まる訳もなし~~♪ 絶望は~~♪ 人みずから造るのだ~~~~♪♪」
そう歌うとネロ・ロームルス卿は巨人機兵装、無人投擲槍ドローンロケットジャベリンdrj-1[ファントム]の迫るなかヴラド・ワラキア公、マジャルハザール・エリザベート公の束ねロケットスカート巨人機、ロケットロボットrr-8-g[ブロンズナイトⅣ(フォー)]を狙わず明後日の方向にそのニ本四門の砲身を向けた。
「どういう事ですネロ・ロームルス卿? まさか!!」
ネロ・ロームルス卿と付き合いの長いジークフリート・ドラゴンスレーヤー卿が悪らつな彼の意図に気づく。
「そう~~♪ その~~♪ まさかなのだよ~~~~~~~~~~~~~~~♪♪♪♪」
「どういう? あの方角? …………?!、だっ駄目だ!!!!」
ヴラド・ワラキア公が青ざめる。
「なんなの? 何で街の方を狙ってるのかしら???」
マジャルハザール・エリザベート公は何をするかは気づいたが意図がわからなかった。
「さあ~~~~♪♪ 選ぶが良い~~♪♪ ヴラド・ワラキア公~~~~♪♪」
ネロ・ロームルス卿は巨人機兵装、超長距離二連超重砲、ロケットナイトウェポンRKW-5-NRSP-WECネロ・ロームルス卿スペシャル[タイタン・ダブルエレファントカノン(ネロ・カノン)]二丁四門から、ワラキア公国首都ワラキアに向かって爆音と共に四発の砲弾放った、それは一発でも市街地に届けば街と人に致命的被害を与える破壊力を持っていた。
「マジャルハザール・エリザベート公!! 頼む!! あれを防ぐのだーーーーーーーーーー!!!!!!」
「どうせ、一発足りないわよ?」
「たっ、頼む!!!!!!」
「チーイ、しょうがないわね!!」
砲弾を追い飛んで行くのこり三機の巨人機兵装、無人投擲槍ドローンロケットジャベリンdrj-1[ファントム]とヴラド・ワラキア公の束ねロケットスカート巨人機、ロケットロボットrr-8-g[ブロンズナイトⅣ(フォー)]。
砲弾は弾道飛行の距離と共もに減速、ロケットは加速し続け砲弾に追いつく。
しかし砲弾は四発、巨人機兵装、無人投擲槍ドローンロケットジャベリンdrj-1[ファントム]は三機、あとは……
「ざっ! ざせない!! ざぜないぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
砲弾、第一発目。
巨人機兵、装無人投擲槍ドローンロケットジャベリンdrj-1[ファントム]命中、砲弾および[ファントム]大破。
砲弾、第ニ発目。
巨人機兵装、無人投擲槍ドローンロケットジャベリンdrj-1[ファントム]命中、砲弾および[ファントム]大破。
砲弾、第三発目。
巨人機兵装、無人投擲槍ドローンロケットジャベリンdrj-1[ファントム]命中、砲弾および[ファントム]大破。
砲弾、第四発目……
『国民は我が護る!!』
一発の砲弾をヴラド・ワラキア公が束ねロケットスカート巨人機、ロケットロボットrr-8-g[ブロンズナイトⅣ(フォー)]とその身を持って防ぐ。
束ねロケットスカート巨人機、ロケットロボットrr-8-g[ブロンズナイトⅣ(フォー)]ヴラド・ワラキア機、両ロボットアーム大破(両腕欠損)推進機ロケット五本中、一本脱落、ニ本中破(飛行能力六十パーセント減)、頭部大破(完全盲目状態)、巨人機兵装、無人投擲槍ドローンロケットジャベリンdrj-1[ファントム]全機大破墜落。
ヴラド・ワラキア公の束ねロケットスカート巨人機、ロケットロボットrr-8g[ブロンズナイトⅣ(フォー)]は首都ワラキアを守る代わりにその戦闘能力を完全に失った。
「生きてる? ワラキア公?!」
マジャルハザール・エリザベート公はヴラド・ワラキアの行動が理解出来なかった。
ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、
「ふ、防いだ、防いだぞマジャルハザール公……」
たとえ誰からも理解されなくてもヴラド・ワラキア公は国民を守る、何があろうと何度でも何度でもそうする、そう誓っていた。
ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、
「でもここまでよ……」
マジャルハザール・エリザベート公はヴラド・ワラキア公を哀れと思った、そのくらいの感情はあった。
ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、
「我は国……を……守った……」
だがブラド・ワラキア公の思いをよそにこの戦いは終わっていない。
「弾は~~♪ 命と違って~~♪ 再装填~~♪ 出来るのだ~~~~~~~♪♪♪♪」
ネロ・ロームルス卿は四本足ロケットの巨人機、ロケットナイトRK-6A[サジタリウス(ブルー)]の背部に設置された弾薬庫[アーセナルコンテナ]から巨人機兵装、超長距離二連超重砲、ロケットナイトウェポンRKW-5-NRSP-WECネロ・ロームルス卿スペシャル[タイタン・ダブルエレファントカノン(ネロ・カノン)]の砲弾を取り出し楽しそうに歌いながら再装填し始めたのだ。
ヴラド・ワラキア公は爆発の衝撃波が操縦席の中まで入り込み目と耳を失い満身創痍、すでに意識のほとんどを失っている、彼は吸血鬼でありながら国民の血を望まなかった為にその再生能力のほとんど失っていた。
「さあ~~♪ ヴラド・ワラキア公~~♪ 余にひれ伏せ~~♪ さあ~~♪ ワラキア公国よ~~♪ 余にひれ伏せ~~♪ そして余を称えよ~~~~♪♪ 余のロームルスに~~♪ 栄光を~~~~♪♪ 余に~~♪ 栄光を~~~~~~~~~♪♪♪♪♪♪」
「これじゃどっちが正義かわからないよ、ネロ・ロームルス卿……」
ジークフリート・ドラゴンスレーヤー卿は片手片足の巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(インディゴ)]をなんとか飛ばしながらその操縦席の中でここまで国民を愛する君主を見たことが無いとヴラド・ワラキア公を思った。
「退くわ、ワラキア公!」
ヴラド・ワラキア公の返答がない、いまだネロ・ロームルス卿の歌のなかでもうろうとしている。
「さ~~~~~~~~♪ 滅びの時間だ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪」
「待て、ネロ・ロームルス卿!!」
「なんだ~~♪ 人道主義に駆られたか~~~~~~~~~~♪♪」
「ルイ・ウエストランド皇帝陛下の勅命である、戦闘行動を中止! 停戦せよ!!」
「…………優しい皇帝に栄光を~~♪」
ネロ・ロームルス卿は少しうれいた表情を見せる、勅命など無視して攻撃する事も彼には出来た、しかしそれをしなかったのは自分には決して成れない優しい皇帝の行く末を見てみたいと思ったのかもしれない。
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