第2話「二人のイケメン侍機士と二人のイケメン機士?」
初めての打ち上げの時は、どれ程の緊張を強いられただろうか?
この全長五〇メートルを有に超える巨人機は両足にある真っ白な円筒とその底にあるロケットエンジンで成層圏の底、ほとんど大気の無い高度十一キロメートルまで達する、その真っ白い練習巨人機、ロケットナイトRK-2T[ナイトトレーナー]のロボットアームを宇宙へと伸ばすとジャン・フラッグ卿は星の世界に手が届きそうなその場所で初めて神の存在を感じたという。
***
「こちら
そう言った七色機士団レインボーナイトコーアの若き隊長ジャン・フラッグ卿は眼下に広がる大陸を隔てる海、
「今日も君はキレイだね」
と呟いた。
***
「シャルル卿なにをやっている、フラフラしない!」
ジャン・フラッグ卿は成層圏前方を水平飛行するシャルル・ガンレイピア卿の白色にパーソナルカラーが
ジャン・フラッグ卿は短く切り揃えた修道士のような髪のしたで眉をひそめる。
「わかってるジャン、でもこの新型、盾が邪魔なんだ」
シャルル・ガンレイピア卿は成層圏で空力がほとんど関係ないとはいえ、そもそもの重さの違う右手の巨人機兵装、単発長銃、ロケットナイトウエポンRKW-5-MR[タイタン・マスケットライフル]と左手の巨人機兵装、橙十字の大型盾、ロケットナイトウェポンRKW-5-RKCSP-RLSレインボーナイトコーアスペシャル[レインボー・ラージシールド(オレンジクロス)]との相性が悪いと着くずした白のミリタリーコート姿で操縦桿をこまめに操作しつつ、ジャン・フラッグ卿に愚痴をこぼす。
シャルル・ガンレイピア卿は目にかかるブラウンの髪を「ふっ」と息で吹き上げた。
「何を言ってる、それでもバランスがとれるように設計されている、私を見ろ! 開発に携わったアイザック・サイエンス博士とテオフラストゥス・アルケミスト教授は三賢者様なんだぞ」
ここで言う三賢者とはこの新型ロケットナイトの開発主任で主にロケットエンジン開発を手掛けたのアイザック・サイエンス博士、開発総監督でありロケットの燃料錬成技術を手掛けたテオフラストス・アルケミスト教授に円卓の導き手アンブローズ・ウィザード導師を加えた三人の事だ。
「あのなジャン、バランスがとれるのと戦えるのは違うんだよ、こんなんで敵と遭遇してみろ速攻死ぬぞ!」
シャルル・ガンレイピア卿はジャン・フラッグ卿の白色にパーソナルカラー緑の肩ラインの入った追加装甲付き重巨人機、ロケットナイトRK-5C[ヘビー・パラデイン(グリーン)]の巨人機兵装、
***
その日二人の侍機士は巨人機を操縦し新大陸ニューランドへの巡回偵察の任務にあたっていた、新大陸ニューランドは未だどこ国の領土とはなっていなかったがその大陸を巡り極東連合共和国とウエストランド円卓帝国が牽制をしあっていた。
「小次郎! 索敵侍機士隊が新大陸に近づく巨人機の機影をとらえた、打ち上げ速度がロケットナイトRK-3ウエストランドの主力機[ホワイトナイト]より速いらしい、新型に出くわしたのかも知れない! 遅れるなよ!!」
真っ黒な極東連合共和国の巨人機、ロケット武者ニ式[テツザムライ]が両足下部にある陰陽式ロケットエンジンから音速の炎を吹き出しその先にロケット雲を作り出す。
「小次郎、急げ! 置いていくぞ!!」
赤く染めたボサボサ黒髪の癖っ毛が熱血を表し、侍機士に軍服などはなく黒の
「オ・マ・エ・は・バ・カ・か!! オレの方が前にいるんだよ!!!!」
隅四目結小次郎の言葉はシンラツだった、黒髪に青いメッシュの前髪、長く伸びたストレートのロングヘアを後ろに束ね襟元正しく着こんだ白の袴着物と青の羽織が礼節を表していた。
「は?!」
「オレの方が三〇秒も前に居ると言っている!!!!」
隅四目結小次郎とその機体は索敵侍機士隊の陰陽念話通信を聞くや九曜巴武蔵より早く要撃行動をとっていた。
「ヤベ! おれ、また遅刻か小次郎?!」
「何時ものようにな武蔵……」
九曜巴武蔵の巨人機の前をよく見ると既に点のようになった隅四目結小次郎の同型機ロケット武者ニ式[テツザムライ]がロケット雲を引いている。
のちの世に剣聖と呼ばれる二人の剣豪侍機士ではあるが、今はただイチャつくイケメン侍機士に過ぎない……。
***
「見えた! 撃つ!!」
シャルル・ガンレイピア卿はなんのためらいもなく極東連合共和国の巨人機、隅四目結小次郎のロケット武者ニ式[テツザムライ]に右手の巨人機兵装、単発長銃、ロケットナイトウエポンRKW-MR[タイタン・マスケットライフル]をぶっぱなした、砲弾はみるみる隅四目結小次郎の機体に向かって行く。
「遠距離攻撃など笑止!」
隅四目結小次郎の巨人機、ロケット武者ニ式[テツザムライ]は一瞬身構えるとその背に二つ折りにして固定された巨人機兵装、
「秘剣燕返し!!」
隅四目結小次郎の巨人機、ロケット武者ニ式[テツザムライ]の二倍程にもなる巨人機兵装、超長野太刀[大・備前長光(物干し竿)]から初手から使うんだから秘剣でも何でもないだろう秘剣、燕返しが炸裂しその砲弾を叩き落とした。
「ふっ、ちょろい」
隅四目結小次郎はカッコつけだ。
「ちょろいのはオマエだ馬鹿!!」
遅れて来た九曜巴武蔵が突然隅四目結小次郎の巨人機の前に現れる。
「チッ! しくった!!」
侍はえーよ。
そこにはシャルル・ガンレイピア卿の機体、ロケットナイトRK-5A[パラディン(オレンジ)]の右ロボットアームに持つ巨人機兵装、
「あーーーー! レインボーラージシールド(オレンジクロス)がーーーー! マスケットライフルがーーーー! 大切な帝国神民の税金がーーーーーーーー!!」
シャルル・ガンレイピア卿の後ろで彼が身軽に成るため捨てた巨人機兵装、単発長銃、ロケットナイトウエポンRKW-MR[タイタン・マスケットライフル]と巨人機兵装、橙十字の大型盾、ロケットナイトウェポンRKW-5-LKCSP-RLSレインボーナイトコーアスペシャル[レインボー・ラージシールド(オレンジクロス)]が新大陸ニューランドの大地に刺さっていた。
「うっさい! 早く加勢しろジャン!!」
そう言うやいなや、シャルル・ガンレイピア卿はロケットナイトRK-5A[パラデイン(オレンジ)]の盾を捨てたその左ロボットアームに今度は機体後ろ腰部に配置された巨人機兵装、二連拳銃、ロケットナイトウエポンRKW-5-SGSP-HGシャルル・ガンレイピア卿スペシャル[タイタン・ダブルデュエル(ダルタニアン)]を抜き、九曜巴武蔵のロケット武者ニ式[テツザムライ]頭部センサー部に一発、更に機体を回転させ巨人機兵装、細身両刃突剣、ロケットナイトウェポンRKW-5-R[タイタン・レイピア]で切付ける。
『これマジか! 速い! 弾はギリよけられるか? 反撃はどうだ? 無理!! 弾かわして、機体を逆立ちして、重力方向にロケット推進そのまま下を回って奴の後ろを……それも無理!! もう一回転されてレイピアが来る! それをかわすとまた拳銃の攻撃!? 反撃は詰むぞ!! それなら!!』
九曜巴武蔵はそこまでシャルル・ガンレイピア卿の動きを詠むと機体を逆立ちさせ素直に下方向に逃げ出した。
「戦略的撤退ーーーーーー!!!!!!」
「アイツ逃げ出した??」
侍機士って敵に背を見せないって聞いたけど、とシャルル・ガンレイピア卿の思考が一瞬停止する。
「秘剣、燕返し!」
「しまっ!!」
侍相手に二対一は不味かったかも? とシャルル・ガンレイピア卿は思った。
「えーーーーーーーーーーい!!!!」
「なっ?! ジャン??!!」
「味方ごとかあ!!!!!!」
ジャン・フラッグ卿の巨人機、ロケットナイトRK-5C[ヘビー・パラディン(グリーン)]がその追加装甲と重量をかさにシャルル・ガンレイピア卿の同、巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(オレンジ)]ごと押し、隅四目結小次郎のロケット武者ニ式[テツザムライ]に叩きつけた。
「ちっ、近すぎて物干し竿が!!」
「これ殺れるか?!」
シャルル・ガンレイピア卿は接触した二機の巨人機械の状態で巨人機兵装、二連拳銃、ロケットナイトウエポンRKW-5-SGSP-HG-1シャルル・ガンレイピア卿スペシャル[タイタン・ダブルデュエル(ダルタニアン)]の攻撃が有効と判断、隅四目結小次郎のロケット武者ニ式[テツザムライ]の腹の辺りに残り弾数一発のそれを押し当てた。
「この距離はマズイ!! 反撃も逃走も出来ん!!」
隅四目結小次郎は撃墜を覚悟。
「小次郎! 下だ! 押せ!!!!」
陰陽念話通信から九曜巴武蔵の叫ぶ声が聞こえた!
隅四目結小次郎には九曜巴武蔵位置は確認出来なかった、しかしそこに居ると確信があった。
『居る、あのまま下に逃げた武蔵はこの巨人機が身動きとれない状況を必ず狙って来る! 重力方向なら、あっ、こいつら新型だ(今気づいた天然)、後ろの巨人機、随分と重そうだな、行けるか?!』
隅四目結小次郎は押し付けられたシャルル・ガンレイピア卿のロケットナイトRK-5A[パラディン(オレンジ)]に対し自らのロケット武者ニ式[テツザムライ]を上へと這い上がらせそのまま下方向に押し込んだ。
「シャルル下!!」
ジャン・フラッグ卿が叫ぶ!
「バラける!!」
シャルル・ガンレイピア卿が指示!
ジャン・フラッグ卿とシャルル・ガンレイピア卿はお互いの巨人機、ロケットナイトRK-5C[ヘビー・パラデイン(グリーン)]とロケットナイトRK-5A[パラディン(オレンジ)]を回転と同時に反対方向に押し突き放した。
「あの二刀流の侍機士、まだ狙ってたのか? ジャンは無事か?!」
シャルル・ガンレイピア卿はセオリーどうりまず安全圏に逃げる。
「嘘だろ、あのタイミングでかわすのかよ、後ろのやつ重そうだったのに二人で押し合った反作用か? あっ、小次郎無事かな?(今気づいた天然)」
九曜巴武蔵はひとしきり戦闘解析をしたあと隅四目結小次郎の事を思い出す。
「シャルルここまでだ、燃料が危険域に入った!」
ジャン・フラッグ卿の言葉に『それはそうだ、お前の巨人機重いんだ』とシャルル・ガンレイピア卿は心のなかで思った。
「ハァハァ、武蔵、相手は逃げるぞ、どうする?」
隅四目結小次郎は息を切らしている。
「フゥ、おれ無理! 無茶な推力使ったからロケットエンジンが溶けかけてる」
九曜巴武蔵はパイロットシートにずれ落ちる。
九曜巴武蔵と隅四目結小次郎は遠ざかるヨーロッパの新型巨人機械を静かに見送った。
新大陸ニューランドの大地にはシャルル・ガンレイピア卿の捨てた巨人機兵装、単発長銃、ロケットナイトウエポンRKW-5-MR[タイタン・マスケットライフル]と巨人機兵装、橙十字の大型盾、ロケットナイトウェポンRKW-5-LKCSP-RLSレインボーナイトコーアスペシャル[レインボー・ラージシールド(オレンジクロス)]が刺さり、原住民の少女が彼女らの土地を巡る遥か空高く有る戦いのロケット雲を「じっ」と見上げていた。
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