八つ当たりされたティッシュ

20歳の学生時代、とある授業で「家の近くにある本屋の情報をリサーチしなさい 」という課題がでた。

配布されたプリントには「名前」「連絡先」「創業日」「従業員数」「本の数」「資本金」「年間売り上げ数」等の項目が記されていた。

担当講師は「本当に伺って聞いたか学校から電話でその店に確認するので、自分で勝手に書いてもバレます」とホラー映画に出てくるピエロの様な顔でそう告げると、うすら笑いの残像を学生の脳裏に焼き付け教室を去った。

コミュ力が皆無に等しい僕は、勇気を振り絞り、赤穂浪士の討ち入りの如く近所の本屋に電撃訪問した。

レジにいた店員に事情を説明したところ、奥から店長が登場。

再度事情を説明し、必須項目を一つひとつ聞くも、「答えられません」のたった一言で全項目返された。

このクソみたいな対応に怒り心頭した僕は、帰宅後、部屋にあったティッシュ箱をおもいっきり壁に投げつけた。

まるで、真っ白のキャンバスに白の絵の具をぶちまけ、「これがアートだ」と言う奇才の芸術家の様に…


あれから20数年、もし今本屋の店長で、いきなりボソボソ喋る若者が来て、従業員数や資本金の事を聞いてきたら、絶対にあのときの店長と全く同じ対応をする自信が僕にはある。

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