100年分の恋をする

茜カナコ

第1話

 天気の良い日だった。


 俺は一人、森で昼寝をしていると目の前に魔方陣が現れた。

「な、何だ?」

 俺は立ち上がり、剣を構える。

 魔方陣から現れたのは、どこかで見覚えのある美しい金髪をした、青い目の少女だった。


「ギルバート!!」

 少女は俺に駆け寄ると、力一杯抱きついた。

「……人違いだ。俺の名はアラン。祖父はギルバートだが……」

 少女は俺の目をじっと見つめて、首を振った。


「私には分かるわ。貴方はギルバートの生まれ変わり」

 少女の手の甲が赤く光った。共鳴するかのように、俺の左手の甲も赤く光る。

「何だ? これは一体!?」

「言ったでしょう? 貴方はギルバートの生まれ変わりだって」

 少女は涙を流しながら言った。

「さあ、新しい世界で一緒に生きていきましょう」


 俺は思い出した。祖父の書斎に隠されるように置いてあった少女の肖像画のことを。

「もしかして、君はシルビア?」

「思い出してくれたの? ギルバート!」

 少女は涙を拭って微笑んだ。

「いや、思い出したのでは無い。俺は君の肖像画を見ただけだ」


「それでも私の名前を覚えていたのでしょう?」

 シルビアはそう言って、俺の頬に口づけをした。

「今度こそ、二人で幸せになりましょう」

 俺は言葉を失ったまま、少女の瞳にきらめく涙のかけらをそっと拭った。


 今、分かった。

 俺はその肖像画の少女に恋い焦がれていたのだ。

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100年分の恋をする 茜カナコ @akanekanako

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