第11話 新魔法の開発

 幼児の頃と違ってお手伝いをしたり、大人同伴なら狩りに行けたりするので、昔のようにひたすら暇を持て余すという事はなくなったが、魔法の勉強がなくなった分だけ時間が余る。

 そういう時は、思いついたオリジナル魔法や改良魔法をこっそり実験する。

 成功したのは『ウォーターカッター』。

 水魔法を使って出した水球を風魔法を使って圧縮し、高圧水流の要領でものを切り開く。前世の人なら、一度は考えるアレをやってみた。

 想像していたより、かなり大量の魔力が必要だったが、木ぐらいなら何とか切り倒せる。

(もう私には、レアアイテムの斧は必要ありません。まあ、誰も見ていない時限定ですけど)

 失敗した代表例は『フライ』。

 魔法で空を飛ぶ事を夢みて、体から下方向に風を起こして、反作用で空中に留まれる事を目標として開発してみた。

 これをしてみよう思いついたのは、風魔法を体の直前を起点にして使っても、自分は後ろに吹っ飛ばない事に疑問を感じたからだ。

 魔法の発動命令は一つの命令ではなく、複数の命令のセットで実行する。

(もしかしてこの中に、反作用を消すものがあるのではないでしょうか?)

 と仮定して、いろいろ試してみたらうまくいったので、調子に乗って、目指せアイ・キャン・フライ。

 かなり強い風にしても浮き上がるほどではないので、こっそり実験するのはあきらめた。

 空の彼方に飛んでいかないように、イベントハンドラを応用して、風力の増減を調整できるようにしたが、地面に腹ばいになって体をまさぐる不審者の出来上がり。

 空を飛べなくても、緊急時に自分を後ろに吹っ飛ばすだけでも便利なので、里を出た時に継続研究予定。

 ちなみに魔法の発動トリガーは、そのまま前世の言葉を使っている。その辺りの自重は、既に投げ捨てた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る