第6話

 とある土曜日。

 宿題を終えて本を読んでいた。

 すると琴美がやってきた。

「ヤッホー。小太郎!小太郎っていつもここ

 にいるから、わかりやすい」

「普通自分の部屋にいて当たり前だろ」

「そっか。うちのぱくは、いつもいないから

 さ。やっぱ犬と猫じゃ違うね」

「誰が犬だ」

「アハハ」

 

 

「そうだ琴美。誕生日のキスの反対のやつだ

 けどさ…」

「うん。肉ね」

 はいっ⁇肉…⁇

 そうか…琴美にとって魚の反対は、肉なの

 か…

 一緒に長年いて気がつかなかったなんて…

 

 

 

 しかし危なかったぜ。

 変な事言うところだった…

 ってか、危うく告白するところだったぜ。

 

 

「ねぇ、小太郎。」

「ん?」

「私達、きょうだいだったらよかったね。」

「なんで?」

「だってわざわざ玄関でる暇がはじけるじゃ

 ん⁉︎」


 はじける⁈

 省けるだろ…

 

 でも、そっか…

 琴美は、きょうだいみたいにオレの事みて

 るんだなー。

 

 

「きょうだいかー」

「やだ?」

「ううん。」 

 

 ピカッ!

 ゴロゴロ。

 

 

 

 あー、なるほど。

 琴美は、雷が大の苦手だ。

 だから、そんな事言い出したのか。

 きっと、すぐ隣なのに雷だから少しでも外

 に出たくなかったんだな。

 

「琴美。気がつかなくてごめん。そっちに行

 ってやればよかったな。」

「ううん。いいんだよ。私が勝手に怖がって

 るだけだし」

「じゃ、下の部屋に降りるか」

「うん」

 

 

 なんで下の部屋に移動するのかって言うと

 二階だと、音も近いし落ちたらどうするっ

 て事らしい。

 実際、琴美の家は二回雷が落ちたっぽい。

 そして、テレビが壊れたそうだ。

 

 

 カーテンを全部しめて電気をつけて読書を

 するオレ。

 その隣で耳を塞いで怯える琴美。

 

 どんどん雷が酷くなるにつれて怯える琴美。

 たまに、耳を塞いだまま寝てるのかって思

 うくらい静かだ。

 

 

 でも、雷が少し遠くなると安心したのか途

 端に話し出す。

「なんで予報雷なのに、お母さん出かけちゃ

 うんだろ」

「な。一緒に買い物連れてってくれてもいい

 よな。」

「えっ、誘われたよ」

「じゃあ、なんで行かなかったんだよ」

「だってぇ、車だとダイレクトにピカッピカ

 光るじゃん」


 ピカッピカって…

 

「確かに光るのはやだな。」

 

 

 でも、台風とかじゃないからな…

 普通出かけちゃうかな。

 

 

「ねぇ、鬼ってさ、本当鬼だよね!」

「え?なんで?」

「だって、空から光の球投げつけてくるんで

 しょ?」

 

 え…んなわけないよ…

 

 

「それは、違くね⁉︎」

「そうなの⁉︎じゃあ、ベロンギの仕業⁇」

「誰だよ‼︎ベロンギ⁉︎」

「空想の妖怪」

「あぁ、そう。ってかさ肩に糸くず付いてる

 よ」

「えっ‼︎肩に田所ついてるの⁈やだ〜。早く

 とってよ〜」

 

 肩に田所がくっつくってどんなんだよ…

 

 

「糸くずな」

「も〜びっくりした〜。よかった。田所じゃ

 なくて。」

「うん。よかったな」

 

 

 誰だよ…田所。

 ってか、肩に乗ってたらこえーよ。

 

 

 すっかり雷がおさまった頃、ちーが水を飲

 みにやって来た。

 

「あー、お母さん。雷から子供たちをよく守

 りきったね!えらいよ。ちー」

 ちーをワシワシ撫でる琴美。

 ちょっと迷惑そうに水を飲むちー。


 ちーに向かって話しかける琴美。

「ちー、よく聞いて。このお水はね、わざわ

 ざ私が台所まで行って息を切らしながらく

 んできたお水なんだからね。よく味わって

 飲みなさいよ」

 

 何を山まで行って名水汲んできました風に

 言ってんだよ…

 

「息切らしたのは、水汲み過ぎて重かっただ

 けだろ」

「うん。ちょっと欲張り過ぎた。一度で済む

 ようにおうちゃくしました。てへ」

「てへじゃない」

「ふふ」

「もういいから」

「あーあ、ならばどれどれ、あたしゃそろそ

 ろおいとましようかねぇ」

「どこの婆さんだよ」

「そこの婆さんだよ」

「そうか。気をつけて帰れよ。婆さん」

「あぁ、じゃあな。ベロンギ」

 

 

 オレベロンギかよ⁉︎

 琴美の空想の妖怪だろ!

 

 オレは、琴美にとって妖怪の部類なのか⁉︎

 ならきょうだいの方がよかったよ!

 

 すると、ドアをあけながらこちらを振り向

 いて琴美は、

「ねぇ、けんたろうさん。今日は、ありが

 とう」

 と微笑んだ。

 

 

 

 ベロンギの次は、けんたろう…

 オレっていろんなあだ名があるんだな。

 

 

 まっ、なんでもいっか!

 琴美がそばにいてくれればそれでいーや。

 

 

 

 ブォーン

 

 

 お、琴美のお母さん帰ってきたみたいだな。

 そして、雷の一日が終わった。

 

 

 

 

 続く。

 

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