こたつ
ガタガタと屋根が叩かれる。冬の早朝は暗く、芯が冷える。それに加えてこの不規則な自然の猛威の騒音で、活動のやる気は削がれてしまう。
暖房を入れたばかりの部屋はまだ寒く、唯一熱があるのは足を差し込んでいるこたつだけ。男は外気との差に眠くなっていた。
のそり隣の寝室からと起き出してきた同居人の男が、こたつの中で冷えた足を重ねてきた。そして何食わぬ顔でテレビをつける。
冬の日常だ。この田舎で同級生同士、一軒家で同居をしているという奇妙さも、男はだいぶ慣れてきた。
「……風が強いな」
男は言った。
「風だけじゃねえべや。大雪だってよ」
同居人は大きなあくびをする。足の指先が器用に丸められ、男の足をぎゅむと包む。
「出られると思う?」
「入り口まで塞がれった」
雪深い地域だから、覚悟をしなければならない運命ではあるが、その事実を聞くと何度聞いても軽く絶望をしてしまう。
「マジか、明日仕事行けるかな」
男がため息をついて、こたつに頭を押しつける。同居人は笑った。
「休んだれ」
「年寄りがこまる」
「大変だこと」
同居人は足の爪で、男の足の甲をツウとなぞる。男はびくりと足を跳ねさせ、同居人の顔を見つめる。
「こんな雪なら、ジジババも外さ出ねよ」
ふ、と彼のまぶたが弧を描く。男は喉の渇きを感じた。
突然、ニュースの音声が乱れた。テレビを見ると、画面にグリッチが走り、映像が止まった。
「……これアンテナ折れたな」
二人は同時に視線を屋根に向けた。
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