第6話アーサー視点3

朝起きると隣にソフィアはおらず、アーサーは虚しさにボーッとしていた。


昨日の甘い時間は夢だったのか…


あんなにも熱い時間がまぼろしだった?


いや、今も自分の胸にある熱い思いがあの時間は確かにあったと感じる。


ではなぜソフィアはいない?


頭を抱えていると程なくルークとクロエが部屋にやってきた、そして私の様子を見るなり信じられないと首を振る。


「ち、違う!」


慌てて手を振るとルーク達は淡々と汚れた部屋を片付けながらため息混じりに声をかけてきた。


「この脱ぎ散らかした服をみて何が違うと?」


「そ、それは…違くないがちゃんと同意のうえだ!彼女も私の事を…」


そこまで言って昨夜のソフィアの顔を思い出し頬が熱くなる。


「それならよろしかった、今夜はパーティーに行かずにお二人で過ごされますか?」


キョロキョロと彼女の姿を確認する。


「いや…それが起きたら姿が無くて…」


そう言ってまた頭を抱えた。


するとルークが机を片付けながら何かを見つける。


「二人の秘密…ですか…」


ルークは手紙らしき紙を見ながら意味ありげに頷いた。


バターン!


するとノックも無しにハンスが部屋に入ってきた。


「おお、アーサー彼女とはどうだった?少しは仲良くなれたか?」


「ハンス様おはようございます。アーサー様はいい仲に慣れたご様子ですよ」


「おい!ルーク!」


アーサーが顔を赤くしてルークに文句を言うとハンスはニヤニヤと笑いながらルークの持つ手紙に目をつけた。


「おっとこれはなんだ」


サッとルークから奪うと内容をみる。


「なになに?今夜の事は二人だけの秘密だと!」


「え?ま、まさかそれはソフィアからの?」


私は慌ててそれを奪い取るとじっと見つめる。

ハンスはニヤニヤと笑いながら聞いてきた。


「二人の秘密ね…なんかしたのか?」


「いや…その…愛し合っただけだ…」


照れながらそう答えるとハンスとルークは顔を見合わせた。


「これは恥ずかしいから今夜の事は人には話さないで…という意味かもしれませんよ」


「なに!確かに…どうしようもうお前達に見つかってしまった…」


「俺達がソフィアちゃんに話したらお前確実に振られるな!」


面白そうだとハンスが笑う。


私は無言で立ち上がり剣をとった。


「え?アーサー…どうした?そんな怖い顔で無言で近づくな!」


ハンスが後ずさりするといつの間にかルークは違う場所へと移動していた。


「私はアーサー様の従者です。主人の秘密は絶対ですから…」


そう言って胸に手を当てて頭を下げた。


私は剣を鞘から抜くと刃先をハンスに向ける。


「この事は絶対にソフィアに秘密だぞ…」


ハンスはこくこくと青い顔で頷いた。


「全く…冗談も通じないのか…」


ハンスがボソッとつぶやくがソフィアとの繋がりを絶たれるわけにはいかない。


ほっとして私は一度湯浴みをしに浴槽へと向かった。



アーサー様が居なくなるとクロエがボソッと呟いた。


「でもこれって違う意味にも例えられますよね…今夜の事は忘れてくださいと…」


確かに…


ルークとハンスとクロエは顔を見合わせた。


「アーサーに抱かれて部屋を出ていく女なんているか?」


「いませんね」


「この事アーサー様に言いますか?」


「誰が言う?」


三人はアーサーの置いてった剣を見つめた。


「よし、気が付かなかった事にしよう!」


ハンスの言葉に皆無言で同意した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る