第4話アーサー視点

アーサーはこのパーティに来るのを心底嫌がっていた。


しかし国からの招待状に貴族の独身は必ず主席するとの事で渋々参加していた。


同僚のハンスと共に会場に入ると女性が群がってくる。


「うっ…」


遠慮を知らない女性達がペタペタと自分の体を触り腕を組んで来ることに嫌気がさしてきた頃ハンスに助けられて人の少ない所に逃げ込んだ。


「ふー、お前といると大変だ…」


ハンスにまで文句を言われるが心外だ。

自分だって好きでこうなってる訳では無い。


「アーサー、誰かいい人いなかったのか?さっさと相手を見つけてパーティなんて終わりにすればいいだろ?お前ならどんな女も選びたい放題だろ?」


「そうは言っても…」


私は渋い顔をする。


「あれか?幼い頃に花をくれた初恋の女の子が忘れられないのか?」


「ああ」


私には子供の頃に一度あった少女に一目惚れした。


その子は鍛錬が上手くいかず落ち込んでいる私に花を持ってきて励ましてくれたのだ…


「お兄ちゃん、強くなってね」


その子からしたらたわいない事だったかもしれないが自分に自信がなくなっていた私はその花と少女の言葉に励まされた。


もしかしたら彼女も…と名前も知らない彼女が会場に来てないかと淡い期待もしたが…


そう思ってグラスの酒を飲みながら会場を見ていると…


「ぶっ!」


「うわっ!汚いなぁ!」


思わず吹き出してハンスに盛大にかけてしまった。

でもそれどころではない、今視線の先にあの時の少女の面影のある女性がいた。


「なんだよ!一言の詫びもないのかよ!って何見てんだ?」


ハンスが自分の視線の先を見ると…


「誰だ?なんか地味な感じの令嬢だな、知り合いか?」


「あの人だ、私の初恋だ」


「え!あれが!?」


ハンスは驚いて何度もその女性を見る。

するとムッとしてハンスの顔を自分に向けた。


「あんまり見るな」


「なに一丁前にヤキモチか?なら話しかけて来いよ!お前が行けば一発だろ」


「だ、だが…」


緊張して中々足が前に出ない…どうしようかとウロウロとしていると彼女に他の男が話しかけた。


「あーあ、取られちまったぜ。おお、結構話が盛り上がってるのかな?なんか笑ってるな!」


バリンッ!


「ひっ!」


気がつけば右手に持っていたグラスが割れていた。


彼女はその男と少し話すと頭を下げて離れようとする。


しかし男は彼女に執拗くくらいついてるようだった。


「彼女嫌がってそうだな、いいのか?」


ハンスにそう言われる前に私は足が動いていた。


彼女が隙をついてサッと御手洗に逃げ込むとその男は彼女が出てくるのを待つつもりか入口のそばに居座った。


「なんだよ、振られてんじゃねえか」


その友人らしき男と話しているのが聞こえた。


「あんな地味なの一発で落とせるって言ったのは誰だよ。賭けは俺の勝ちかな」


友人が笑うと男は笑った。


「ばーか、これからだよ。ちょっと優しくしてベッドで抱いてやらすぐに俺に夢中になるさ」


彼女がこいつに抱かれる?


そう考えただけで全身に鳥肌がたち気がつけば男の首を掴んで外に放り投げていた。


その後ハンスの助けもあり事情を説明すると男達に問題ありと会場を締め出されて今後一切出入り禁止となった。


毎年会場を荒らす注意人物だったらしい。

彼女があいつらの被害者にならなくてよかったと胸を撫で下ろした。


彼女は騒ぎの後しばらくして御手洗から出てくるとキョロキョロと周りを確認している。


あの男達が居ないことにほっとした様子で何事も無かったかのように会場に戻った。


それから私は彼女に話しかける事が出来ないが心配で彼女が目につく場所にずっといた。


彼女に近づこうとする男がいるとサッと先に捕まえて話をする。


すると皆快く彼女に話しかけるのをやめてくれた。


「おい!いい加減にしろよ!」


ハンスに何故か急に怒られた。


「なんだ?」


「なんだ?じゃない!いい加減に話しかけろ!でないと彼女が可哀想だ。あの子お前のせいで男性陣からは声をかけたらいけない令嬢として噂になってるぞ!彼女に声をかけたら殺されるっな!そのせいで女性達もなにか感じ取って今じゃ誰も彼女に近づかなくなってるぞ」


「よ、よかったじゃないか…」


「よくねーよ!ならお前が話しかけて相手してやれよ!」


「し、しかしまだ心の準備が…」


「はい、これもって」


ハンスからいきなりワインを持たされる。


「なんだ?」


「いいからこい…」


ハンスに引っ張られて彼女の方へと行こうとしてる。


「ま、待て!」


「いいから行ってこい!」


ハンスに力いっぱい押されて私は彼女にぶつかってしまった…


でもこの友人の行為に後々大いに感謝する事になった。

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