第三十六話 異人の街並みなのです
「「「ふおぉぉおー!」」」
「なんじゃ水無月あの変わった塔は!くびれがあるぞ!」
「あれは神戸ポートタワーだねぇ」
「みーちゃんみーちゃん!あの白いのなんなのです?!」
「あれは神戸海洋博物館だねぇ」
「奥のビルも、すっごく大きい」
「あれは今日泊まる予定のホテルだねぇ」
明石海峡大橋を渡りきり、海沿いに東へ進み神戸市へとたどり着いた三人は、車内から見えた神戸の象徴たる地域の建造物に大盛り上がりしていた。
「それで水無月や、今はどこに向かってるのだ?」
「異人街って所だよ。きっと皆も気に入ると思うよ 」
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「おぉー……!凄いのです、まるで日本じゃないみたいなのです!」
「映画の中で見た街みたい」
「シャレとる街じゃのぅ」
「でしょう?港町としての神戸が開港された後、海外から移り住んだ外国人達がこの高台に西洋風の邸宅を立てて住んでてね、だから日本じゃない雰囲気があるんだよ」
「なるほどのぅ。他の国から来た輩の館の街じゃから異人街か」
「そういうこと」
異人館街独特の雰囲気の中、四人は街並みを眺めつつ北野町広場に繋がる階段を上がっていた。
「っと見えた見えた。あれがこの異人街を象徴する建物の一つ、風見鶏の館だよ」
「「「おぉー」」」
「元の世界の絵本で見たお城みたいなのです!」
「懐かしい。人間の偉そうにしとる輩がこんな家に住んでおったなぁ」
「屋根の上に鶏みたいなのがある。あれが風見鶏?」
「そうそう。あれがあるから風見鶏の館って呼ばれてるの」
「でも凄かったのです!どの町にもない雰囲気があって……もし前に行った世界の人達が暮らせるようになって、こんな感じの異人街ができたら面白いですよね!」
「言われてみれば、私達も異人だ」
「皆のお陰で他の世界が存在するって事は分かったからね。何百何千年後かは分からないけど、いずれかの時代にはそんな未来が必ずやってくるよ」
「そうだと嬉しいのぅ。な、ノルンや」
「はいっ!」
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「ま、いいこと言ってもお腹は空くわけで」
「「はぁううぅぅう……!」」
あの後、いい感じに決まったと思った所で、ノルンとロクラエルのお腹の音が鳴り、お昼ご飯を取りに一行はミシュランでも星のついているお高いお店へと来ていた。
「そ、それで、みーちゃん。お昼ご飯は何を食べに来たのです?すっごくお高そうなお店なのですが……」
「実際すっごくお高いよー……でも、それだけの価値はあるよ。なんたって今から食べるのは神戸牛だからね」
「おぉ、今朝言っておったあの高級牛か。というか、どれだけ高級な店に来たんじゃ水無月よ……」
「なんかトロフィーみたいなの飾ってある」
「あはは……っと、料理が始まるみたいだよ」
お上品な雰囲気漂う店内で、声も小さくそんな戦々恐々とした様子で話す四人の前で、準備が整ったのかシェフが目の前の鉄板で料理を始める。
「ただいまよりコースの方調理させていただきます。山本と申します。今日はよろしくお願いいたします」
「「「「は、はい!」」」」
「ふふふっ。そうお緊張なさらずに。先にお飲物の方をご用意致しますね。今日はまだ運転されるという事で、お飲物の方は天然水の方をご用意させていただきました」
「あ、ありがとうございます」
「それとこちら、前菜の紅芯大根のサラダになります。最初に三陸産のアワビと和歌山の伊勢エビの方を調理致しますので、その間ごゆっくりお召し上がりください」
そんな物腰丁寧な板前さんが料理する前で、四人は新鮮な海鮮や野菜、そして────────
「こちら、神戸牛のフィレステーキとなります。焼き加減はレアとなっております」
「「「「おぉー……!」」」」
「……美味しい…………」
「言葉が……出らんのぅ……」
「満たされるのです……」
「最高……」
目の前でこれまでの料理以上にしっかりと丁寧に調理された神戸牛を食し、存分に舌鼓を打ったのであった。
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