第三十話 香川の神社なのです!
「橋が橋してないのです」
「渡れない、というか柵で通れない」
「えーっと……水無月や、これはどういう事なのかの?」
橋板が1枚もかかっていないコンクリート骨組みだけの封鎖されている、そんな世にも珍しい橋を見たヘグレーナは水無月へそう尋ねる。
「この橋は津嶋神社っていう神社があるあの小島に繋がってるんだけどね、8月の4日と5日の夏季例大祭の時だけ橋が架けられて参拝しに行く事ができる神社なんだよ」
「4日と5日……ギリギリ間に合わなかった奴なのですー」
「じゃがそんな限定的でその津嶋神社は大丈夫なのか?寂れて潰れたりはせんのじゃろうか」
「それがそんな心配は無用なんだなこれが。なんたってたった一日で参拝者数は約5万人、二日合わせれば10万人も来るからね!」
「10万じゃと?!」
「す、凄いのです……たった二日でそんなに人が来るなんて……一体どんな神様が祀られているのです?」
「子供の健康と成長の守り神だね。私はあんまり寺社仏閣には詳しくないけど、子供の神様っていうのは全国的にも珍しいらしいよ」
「なるほど、だからお客さん多い」
「かもしれんのぅ。まぁ今こそ関係ないが、妾達も女子じゃしその内世話になるかもしれんな」
「拝んでおくのです」
「私も拝んどこう」
そう言うと四人は、橋の入口で手を合わせ遠くに見える小島の神社を拝むのであった。
ーーーーーーーーーーーー
「お店がいっぱいなのですー!」
「土産食い物土産土産……凄いのぅ、ここまで観光地観光地しておる場所は初めてじゃ」
「学生も多い」
「そりゃそうだよ。なんたってここは金刀比羅宮、その表参道なんだから」
ガヤガヤと賑やかな左右両側に土産屋や飲食店の立ち並ぶとても賑やかな表参道の中、今度は金刀比羅宮へと四人はやって来ていた。
「それで水無月や、お主先程表参道と言っておったが、ここは神社なのか?」
「でも神社って言う割にはお店ばっかりなのです。なんなら鳥居すら見てない気がするのです」
「ここの神様は商売の神様だからね、それにあやかる為にこんなにお店が多くあるんだよー」
「なるほど。だからこんなにお店あるのか」
「でもお店の数だけだと思うこと無かれ、個性的なお店も多いんだよー……っとほら、これとか」
「これはー……ダルマ?」
「色んな模様があって可愛いのですー!」
「所で水無月や、その杖は一体どこから持ってきたのじゃ?」
「さっき寄ったお店で借りてきたの♪」
「借りてきたの♪って、そんな杖が必要な場面があるのです?」
「ふっふっふっ、行けばわかるよー」
「まぁ妾達は種族的な年齢でいえば水無月程年寄りでは無いしの、杖など不要じゃ」
「なんだとこの120歳」
「煩いわ三十路手前」
軽く言い合った後、他二人を引き連れて前をゆくヘグレーナを見て、水無月は不敵な笑みを浮かべるのだった。
そして十数分後、一の坂をようやく登りきり大門の前へとたどり着いた頃には────
「こひゅー……はひゅー……!」
「あっれぇー?私程年寄りじゃないんじゃないのヘグレーナちゃーん?」
「う、うっさいわ……!まさかこんな階段が長いとは……」
ヘグレーナは見事にバテていたのだった。
「ふっふっふっ、戦いは始まる前から始まっているのだよ。なんせこの神社は奥社に着くまでに1368段もあるからね」
「せんさんびゃくっ────!?」
「まぁそんなヘグレーナちゃんはおいといて、2人は大丈夫?」
「ん、問題ない」
「余裕なのです!かまたまソフトも美味しかったのです!」
「流石前衛職、存分に楽しみながら登る辺り体力あるねぇ。でもここらで軽く休憩しよっか、丁度いい物もあるしね」
水無月はそう言うと階段の端っこの方に座って休むヘグレーナの所に二人を待たせ、大門を潜って中にある露店で買い物を済ませ戻ってくる。
「お待たせー。ほら、ヘグレーナちゃんも起き上がって、皆でこれ食べて登りきろ!」
「わっ!大きな飴なのです!」
「手のひらよりおっきい……これ、どうやって分けるの?」
「気になる?それじゃあロクラエルちゃん、これでこの飴、加美代飴の真ん中を叩いてみて?」
「こう?あっ」
「割れちゃったのです!」
水無月に言われるがまま付属されていた小さな竹の槌でロクラエルが叩いて割った加美代飴を、わたわたとする二人の前で水無月はひょいっと一欠取ると口に運ぶ。
「あっ、もしかして」
「そ、こんな風に割った加美代飴を皆で食べるのがこの飴の分け方なの」
「ほぅ、面白い分け方じゃのぅ。それじゃあ妾はこれを……」
「あ!それが一番大きいのです!ヘグちゃんずるいのです!」
「小さいの小分けにして食べる方が、好き」
「ふふっ♪これも加美代飴の醍醐味だね」
その後、加美代飴で栄養補給を済ませた四人は体力ギリギリになりながらも何とか頂上までたどり着き、香川の景色を堪能したのであった。
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