第二十五話 愛媛の観光地なのです!
カポーン
「「「ふあぁぁぁぁぁぁ……」」」
「皆とろけきってるねぇ」
2回目の異世界、崩界での戦いを終え、扉に入ってから数日の時間が立っていたものの日の出と共に何とか無事戻ってきた四人は、朝から道後温泉本館へ訪れていた。
「だってー……凄く気持ちよくてー……」
「疲れた体に……よく沁みる……」
「あんな大立ち回りしたんじゃ……これくらい蕩けもするものよ……というか、水無月こそ蕩けてもいい物じゃろうに。あんな凄まじい運転して全員の命を救ったんじゃから」
「いやいや、あれくらいの運転でそんな大袈裟な。車1つで高層ビルの屋上飛び移りながらカーチェイスしたり天井走ったりテロ組織のアジトから大統領救出したりとかいうのに比べたら」
「なにがどうしてそうなった」
「みーちゃんって一体どんな……いや、聞かないのです」
「ま、まぁ、この話はここらで切っておくとしようぞ。それよりも、大分の温泉街も賑わっておったが、ここも人が多かったし、そんなに有名所なのか水無月よ」
「そりゃそうだよー。確かに前行った大分は日本有数の温泉地だし、色んな温泉がいっぱいあって凄いけど、ここ道後温泉も引けを取らないんだよー?なんせ日本三古泉の一つなんだから」
「さんこせん?」
頭にタオルを載せ直しながら、得意気にそう言った水無月へロクラエルが首を傾げながら三古泉とはなんなのか尋ねる。
「諸説あるんだけど、ここ愛媛の道後と兵庫の有馬、和歌山の白浜の温泉か、和歌山の温泉を福島のいわき温泉が日本三古泉っていう日本で最も古いと言われてる温泉の事だね」
「で、その温泉のひとつがここという訳か」
「そりゃあ賑わう訳じゃ」
「それに夏目漱石っていう日本じゃ知らない人は居ない小説家の小説にも登場する場所でねー。近くにはその小説のキャラクターが出てくるカラクリ時計があったりもするんだよ」
「へぇー……!所で、この温泉には効能とかってあるのです?」
「ふっふっふっ……!なんとこの温泉、アルカリ性でお肌の美容にとってもいいんだよ!」
「「「おぉー!」」」
「それは長湯せねばのぅ!」
「あと1時間は浸かるのです!」
「つるつるにする」
水無月から効能を聞き、目を輝かせそう言い合う三人と共にこの後四人は存分に温泉を堪能したのだった。
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「わぁー……!あれもこれもとっても綺麗なのですー……!」
「ふふふっ。ここの雰囲気凄くいいでしょ?ここ私のお気に入りなんだー」
天井から吊り下がったガラス傘のランプやライトアップされたガラス製品の数々を、興奮気味に尻尾を大きく揺らしながら見るノルンへ、水無月は微笑ましそうな笑顔を浮かべながらそれを見つめていた。
そんな二人含む四人は、道後温泉を堪能した後一度ホテルで睡眠を取ったりしてから、希少な江戸時代のびいどろや明治大正のガラス作品を多数展示している、ぎやまんガラス美術館へとやってきていた。
「それで、二人はなんでそんなに強ばって居るのかな?」
「いや、だって」
「妾達、翼とかあてそうじゃし……」
「んー、勢いよく全力で翼をぶつけない限りきちんと固定されてるから大丈夫だと思うけど。でも、せっかくの観光なのに楽しめないとあれだしー……そうだ!皆ちょっとついてきて」
「「「?」」」
緊張している様子のロクラエルとヘグレーナを見た水無月は、少しだけ考えた後にそう言うと三人を手招きし、三人を庭園へと案内する。
「ここは……庭園なのです?」
「池の青がすごく綺麗で、木の緑に負けてない」
「それにあの彫像、透明じゃが……もしやあれもガラスなのか?」
「正解。今はお昼だけど夜になるとライトアップされてもっと綺麗になるんだよ」
「ほぉう。それは是非とも拝みたいものじゃの」
「それじゃ、次来る時は夜だね」
ガラスの彫像が立つ青い池と緑が栄える木々の庭園を前に、四人は次に愛媛に来た時の計画を話し合うのであった。
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