第116話 お迎えだぞ

 シルベスターファミリーのナンバー三との邂逅はあって、俺もこいつらバカのように手のひらで踊らされているようですこし癪に障るが、ギラン組をつぶす、バカ金髪の処刑は予定通り進めよう。


 死神を甘く見ているこいつらには少しだけやりえしは必要だがな。

 

「にゃにゃ」

「んー。あとは大きな部屋にいる二人だけなのか」


 テトの報告ではあと生きている人間はベットに寝ている二人だけ。

 数名屋敷から出てきたが、次の瞬間にはうちの黒猫の餌食となっていた。

 おそらく、蹂躙開始から十分ぐらい。

 それだけの時間で三大マフィアの一つを潰し、今も楽しそうに屋敷を解体しているテト。


 これが組長、バカ金髪を気にしなければ、周りの家を気にしなければ一瞬で蹂躙がすんでいたのだろうな。

 今更だが、テトモコの規格外を再度確認できた。

 さすが、神様に認められた従魔。ほんともふもふで優秀とか俺のためにあるような従魔だ。

 神様ありがとうございますっ。


「じゃー、その部屋に向かうか、と言ってももうそこしか屋敷はのこっていないがな」

 

 二人が寝ている部屋が一階部分にあったため、それ以外を残し、すでに屋敷の大部分は除去されている。

 水は便利なんだな。これがモコならそんな器用に破壊することはできなかっただろう。

 これは魔法属性の違いで仕方がないことだけど、やはり火魔法だと部分的に焼却するのは難しそうだ。

 いや、高温で燃やせば、周りに火をつけることなく狙ったところを焼却できるか……?


 前言撤回だ。やっぱりモコでもできそうだ。

 うちの子たちの強さは未知数。うちの子最強だ。


「にゃっ」


 それにしても、ほんとにテトだけでギラン組を壊滅させてしまったな。

 ギラン組がほかの都市でどのように活動しているかはしらないが、帝都の拠点は人を含め綺麗にお掃除終了だ。


 

 その実行犯である黒猫はご機嫌に足を進めている。

 しっぽが左右にゆらゆら。楽しくて仕方がなかったようだ。

 まあ、うちの子が楽しめたならそれでいいか。

 俺の活躍なんてうちの子の遊びに比べたら優先度なんてゴミみたいなもんだ

 

 テトについて行き、扉がついていない、壁の仕切りがあるだけのかろうじて部屋と呼べる物に足を踏み入れる。

 おおー、ベットが六つほどあり、その内二つに死んでいるかのように寝転がっている人が二人。

 言わずもがな、寝ているのは組長とあほ金髪だ。。

 一体どのような手段を使ったのかは知らないが、これだけの惨劇を生んだ後なのに、一向に起きる様子がない二人。

 その手段を知りたくもあり、少しだけ知りたくない。

 やはりこの世界は怖い。薬やスキル、魔法の対処を考えないとな。

 テトモコに頼りすぎはよくない。そう思い始めた今日この頃。


「まずは組長かな?んー。どうやっておこす?」

「にゃー」


 まかせてーと元気に鳴き、こぶし大の水を浮かべるテト。

 そんぐらいの水では起きないと思うんだけど……

 そのまま水玉を組長の口へ入れていくテト。

 念入りに鼻にも小さな水玉を。


 えぐいなぁー。

 これが小さな可愛いもふもふがしていると思うとね……

 やはり俺の師匠はテトモコだ。魔物の常識は知らないが、やることがえぐい。

 まだ俺は死神として成長できそうだぞ。


「……にゃー?」

「……うん。やめよっか。起きる気がしないし、このまま永眠してしまいそうだ」


 息を止めても起きる気がせず、そのままお亡くなりになりそうだったから、プラン変更。

 やっぱり痛覚に訴えかけるか。


 大鎌を取り出し、そのまま寝ているベットごと右腕を胴体とおさらばさせる。


「ぐはぁっ」

「お?起きたかな。やっぱり目覚めは痛みが最適だ。キスで起きるのは物語だけで十分だな」


 組長はおさらばしたばかりの腕があった部分を抑え、痛みに苦悶の表情を浮かべている。


「話せるか?どうもあなたが呼びだしたソラです」

「な、なぜおまえがこの部屋に」

「部屋……ねー」

「なぁ」


 ようやく周りの異変に気付いたのか、あたりを見渡し、部屋を確認する組長。 

 部屋と呼ぶには足りないものが多いよな。

 定義ではこれを部屋と呼んでいいのだろうか。

 

 天井はなく、扉もない。あるのはかろうじてたっているしきりという名の壁だけ。

 んー。俺なら野宿のテントの方がマシだな。

 まあ、この世界のテントは快適すぎるから、比べるのもおこがましいが。


「で、俺を呼びだして実際に会った感想は?」

「ふざけるな。皆の者はなにしておる」


 怒鳴り、周りに聞こえるほどの声をあげる組長。


「すまんな。もう生きているのはあんたとこのバカ金髪だけなんだわ」

「そ、そんなことは……風魔法はこの屋敷では発動できないはず……」


 ふぇー、そんな代物があったのかよ。属性魔法の禁止区域。それをされると魔法使いは

つむだろうな。

 まあ、全部の魔法を禁止ということでないだけマシか?

 

 てか、襲撃まがいなようなものをしておいて、俺がのこのこ屋敷の中に入ると思っていたのだろうか?

 テトが暴れださなくても普通に外から風魔法をぶっ放すぞ?

 

「終わってしまったのか……」

「ん?」

「わしに何の用だ」

「……」


 どこか悟りを開いたように語りだす組長。

 用事……。なんで俺は組長を生かしておいたんだっけか?

 襲撃をしてきたから報復としてやり返した。一応首謀者の話しぐらいは聞こうかと思ったのが一番の理由か?


 んー。もう用済みだな。

 先ほどシルベスターファミリーのやつに話を聞いたからな。だいたいの想像はつくし、生きるのをあきらめ、死を想像しているやつに聞くことなんてない。


「すまんな。死神が介錯しに来ただけだ」

「そうか」


 こんな状況なのにもかかわらず、組長は静かに目を閉じる。

 

 俺はその意を汲み取り、大鎌を取り出し、横に一線。

 声を上げることなく、そのまま静かな死体へと変わっていく組長。

 これが、3大マフィアのトップの死に様か。

 どこかのアホのように慌てふためくようなマネはしないのだな。


 じゃー、次はっと。


「おーい、起きろ。死神が迎えにきたぞ。お前には研究に付き合ってもらうんだ」


そう叫びながら、横で寝ているアホ金髪へと大鎌を振り下ろす。

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