SS エイプリルフール

*この話はまったく本編には関係ありません。興味ないぞという方はスルーしていただいて構いません。

 エイプリルフールということで何かやってみたい。そんな気持ちから3月31日に急に書き始めた一話だけの夢物語。

 ティナの大人になった描写が存在しますので、ティナ像を壊したくないという方はスルーしてください。ちなみに、今日は本編あがりません。

 では、筆者の思い付きの一話をどうぞ。

 





「ソラ起きてっ。今日は買い物でしょ?」

「あー。おはようティナ……?」

「?」


 俺のベットの横に黒いゆったりとしたパンツと白いブラウスを着たティナがいる。

 頭には赤いベレー帽をつけ、俺の体をゆすっているが。

 いつそんな服を買っただろうか……


「テトちゃん、モコちゃん、シロちゃんにチュールあげてくるね」

「あー。うん。お願い」


 ティナはテトモコシロにご飯をあげてくるみたいなので、とりあえず体を起こす。

 クローゼットから黒のパーカーとジーパンを取り出し、着替えていく。

 あー、頭もセットしないとな。


 洗面所に向かって、鏡の横に置いてあるワックスを手に取り、セットしていく。

 無造作にだが、まあ、こんなもんだろう。

 てきとーに寝ぐせを治し、外出の準備ができた。


 リビングにいくとテトモコシロが嬉しそうにティナからもらったチュールを舐めている。

 三匹が並んでお皿を舐めている姿はいつ見ても可愛い……


 チュールはなぜあんなに動物の心を射止めるのか。

 以前、何か悪い食材が使われているのかもしれないと調べてみたが、もちろんそんなものなどなく、ただ動物が好きな匂いらしい。

 一心不乱になめまくっているテトモコシロ。

 ほんと癒しだ。


 俺もチュールなめてみようかな?

 ん?チュール?

 そんなものこの世界に……

 あれ?


 あたりを見渡すと、そこには21年間見慣れた電化製製品たち。そして今着ているジーパン。 

 家の作りも、俺が大学生活を3年間送ってきたマンションだ。

 リモコンをとり、テレビをつけてみるが、そこには以前となんら変わりのない朝のニュース番組が映っていた。


「ソラー?朝ごはん食べる?パンにする?ごはんにする?」


 ティナがキッチンから声をかけてきている。

 ご飯……異世界に転移してからまだ食べていないもの。

 

「もう、どっち?食材ないから卵かけごはんになっちゃうけど」

「それがいい」


 ティナの声に答え、卵かけごはんを注文する。

 ん?

 ティナが炊飯器をあけ、ご飯をよそい、小分けにしてある醤油瓶から少量ご飯にかけている。

 

「ティナ。炊飯器の使い方わかるの?」

「もう、バカにしないでよ。もう高校生だよ?ごはんぐらいよそえますっ」


 くちをすぼめて、不機嫌だぞと顔で表現しているティナ。

 高校生……朝起きてから寝ぼけたままティナの姿を見ていたが、確かにすこし大人になった印象だ。

 身長も高くなり、俺の肩ぐらいまでの身長に……

 そこまで頭を働かせて思考して気づいたが、今俺は少年の姿ではなく、地球にいた時の年齢どおりの姿である。


 やばい。頭がパンクしてきている。

 冷蔵庫の中をあさり、常備してある缶コーヒーを開け、一飲み。


 冷静さを取り戻し、あたりを見渡すが……んー。わからん。

 テトモコシロ、ティナが地球にいるということしかわからない。

 

「にゃー」

「わふ」

「きゅうー」

「今日はみんなでお出かけだよ?みんなの服を買いに行くんだよ?」

「きゅ」


 俺が卵かけごはんを食べている間にも、うちの子たちはお出かけの準備をしている。

 いつ買ったのかわからないが、ブラッシングした後に、ティナがテトモコシロにペット用の服を着させてあげている。

 テトモコシロも口をだし、今日着ていく服を決めているようだ。

 もう、何がなんだかわからないが幸せだから気にしないようにしよう。


「ソラっ。行くよ」

「う、うん」


 高校生とティナが言ったが、少し大人になったティナに手を取られ、玄関をでている状況に頭がついて行かない。

 改めて見てみると、5歳の面影を少し感じるが、可愛いらしいというよりは綺麗なモデルさんというイメージへ変わってしまった。

 長いプラチナブロンドの髪はそのままだが、赤いベレー帽との相性もよく、めっちゃお洒落さんだ。

 

 体が動くままにパーカー、ジーパンというラフな格好にしたが、こんな二人が歩くと、不釣り合いなカップルのように映るかもしれない……


「わふ」

「そうだよっ。ソラも足動かして」

「あー。ごめんごめん」


 カップルという単語が頭をよぎるとすべての思考が停止してしまった。それにつられ、体の機能も停止してしまったようで、ティナとモコに怒られてしまった。


 マンションのエレベーターを二人と三匹で降りていく。

 一応、マンション内共用部分はペットを歩かせてはいけないみたいなので、ティナはシロを俺はテトモコを抱っこして、外出していく。


 外に出ると、ありふれた光景だが、道路があり、そこを車が走っている。

 朝だから、通勤の車が列を出して進んでいる。

 

「ペットショップはこっちだよ」


 テトモコシロを地面におろし、歩かせていると、ティナが俺の手を取り、そのまま歩き出す。

 真横にいるティナから俺が日本で使っていたシャンプーの香りがほのかにする。

 五歳のティナとは違い、すこし大人になったティナに手をつながれると、どうしてこうも胸の高鳴りがうるさいのか。

 すこし手が汗ばんでくるが。

 俺の手汗なんて気にすることなく、ティナは知った道のように日本の街中を進んでいく。


「ここだよー。昨日調べたんだけど。ここだとシロちゃんの服も入荷しているみたいなの」

「そうなのか?」


 シロの服。キツネの服なんてペットショップにあったかな?

 そもそもキツネってペットにしていい動物だったかな?

 頭の中に疑問が浮かぶが、そのままティナは入店していく。


「あー。みんなご飯は後だよ。先に服を買おうねっ」


 一目さんにテトモコシロはジャーキーなどが置かれている食品コーナーに向かっていったが、ティナの一声で戻ってくる。

 三匹ともしっぽがふりふりのご機嫌さんだ。


「んー。どれがいいかな」

「にゃー」

「わふー」

「きゅー」


 一人と三匹は、服が置かれているところを行ったり来たり。

 一つをティナが持って、みんなにあてがっているが、どれも似合いそうで可愛い。


「わふっ」

「これがいいの?」

「にゃー」

「きゅう」


 モコが言っているのは黒と白のボーダーの囚人服のような服と、黒を基調とした白の斑点がある服だった。

 あきらかに、色味にかけるが、黒と白が入っている服がいいらしい。

 それにシロの服はあまり種類がないみたいでテトモコシロがおそろいで着れる黒と白はこれだけだと。

 モコが熱くティナに説明している。


「ソラこの服がいいみたいっ」

「うん。それにしよっか」


 とりあえず、その二着かける三匹分の六着をカートに入れる。


「じゃー、ご飯選んできていいよ。おもちゃはみんなで三つまでだよっ」

「にゃー」

「わふー」

「きゅうー」


 ティナの許可を得たテトモコシロは店の中を走り出す。

 周りを見ると、他の人もペットを離しているので、ここは自由にさせてもいいだろう。

 

 ティナはテトモコシロについていくので、俺も後を追い、ペットショップを回っていく。

 日本にいたときはペットショップに立ち寄ったことなどなかったが、思ったより品揃えがある。

 ペットのための栄養食品なども取り揃えてあり、食品コーナーだけでも結構な量がある。


 ティナはテトモコシロの話を聞き、食べたいものをカートにどんどんと入れていく。


 あ、お金。

 ジーパンの後ろポッケに入れてある長財布を取り出し、中身を確認すると、そこには十万ほどの現金が入っている。

 まあ、問題はなさそうだ。


 みんなの欲しいものはすべて選び終わったようなので、そのまま会計をし、お店を出る。


「きゅうきゅう」

「じゃー、公園いこうねっ」

「公園?」

「そー、ペットが遊べる公園あるでしょ?そんなに遠くないし、みんなおもちゃで遊びたいみたいっ」


 ティナが公園を知っているというので、そのままついて行くことに。

 もちろん手をつないでの三匹を放し飼いにした散歩だ。


 公園につくとそこは芝生がある広めの場所だった。

 とりあえず、ボールやフリスビーを買ったみたいなので、それを投げ三匹に取りに行かせる。


「にゃっ」


 テトも楽しそうにボールを追っかけている。

 あまりこういう遊びを猫はしないと思うんだけどね……

 満足するまで、俺の肩がつぶれるまで投げてやる。

 

 数十分後、それに満足すると三匹でロープの引っ張りあいを始めたので、俺は木の影で芝生に寝転ぶ。


「ソラっ。腕っ」

「ん?」

「右腕広げてー」

「あー、ほらっ」


 ティナにお願いされるがままに右腕を頭の下から真横に広げる。


「ありがとっ」


 そのままティナは何の躊躇をすることなく、右腕に頭を乗っけて、寝転び始める。


「みんなが気に入る服があってよかったねー」

「あー。そうだな」


 俺の方に体を向け話しかけてくるティナ。

 右腕にかかる重みが五歳の少女のものではなく、大人のものなのですこし緊張するが、見つめてくる顔はティナそのものだ。

 ぱっちり二重の瞳が綺麗で、太陽の光で白く輝く髪がより美しく思える。

 とりあえず、空いている左手でティナを撫でる。


「ん―。お腹がすいたけど、こうしていると眠たくなるねっ?」

「気持ちいいもんな。まだ朝だけど。テトモコシロが遊んでいる間に寝ちゃうか?」

「うんっ。そうするー」


 そういうとティナはより一層俺に近づき、体を寄せる。

 ほのかに甘いティナの匂いがするが、その匂いの心地よさと、光の暖かさにより、重い瞼がゆっくりと閉じていく。



「わふ」

「にゃー」

「きゅうー」

「ん??もう遊びは終わったの……か……」


 テトモコシロの鳴き声で眠りから目が覚めるが、視界にはだたっ広い草原と、右腕に頭を乗せている小さな少女の姿。


「なんだ。夢か」

「にゃー?」

「ううん。なんでもないよ」

「わふ?」

「きゅう?」


 俺に近寄り甘えてくる三匹を空いている左手で撫でていく。


「ごはんにして、それから今日は買い物にしよっか」

「にゃにゃにゃ」

「わふわんわん」

「きゅきゅきゅうー」

「屋台でもベクトル商会でもなんでも買っていいよ。今日は欲しい物全部買ってあげる」


 テトモコシロはその言葉で大喜びだ。

 もふもふの体を俺に寄せて甘えてくる。


「ん-。おなかすいたー」


 右腕に頭をのせたまま、俺に抱き着いてくる天使。


「ごはん食べよっか」

「うんっ」

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