第30話 私も従魔がほしいのよ
「それでね、あなたたち、天使の楽園に依頼することがあるの」
衣装発表会が終わったあともなぜかここに居座り、もふもふタイムに浸っていたフィリアが突然話し出した。
「依頼?テトモコシロとは今ふれあえていると思うんですけど」
「その依頼ではないわ。」
あら、違ったのか。
てっきり、後日また来てほしいぐらいの依頼かと思った。
「私も従魔がほしいの」
「はー……」
「ちゃんと聞いているの?」
「すみません。聞いているのですが、それとどう俺らが関わっているのかさっぱりで」
「あなたたちはもう従魔がいるでしょう?だから私と相性がいい従魔を探してほしいの」
フィリアは何を言っているのだろう。
従魔を探すってなんだ?
森とか草原にでて、魔物に話しかければいいのか?
そんなこと普通無理だと思うんだが。どちらかというと狩る対象だし。
ドーラも言っていたが、知能ある魔物はそんなに多くないらしいから、街の近くからいける場所には従魔になってくれそうなやついないと思うんだけどな。
「えっと、そもそも従魔を探す方法がわからないのですが……」
「え?従魔屋で買ったのじゃないの?」
「買ってないですね。それに従魔屋とは?」
「魔物を飼育し、売っているところよ」
「では、そこにいけばいいだけなのでは?」
「それが大変なのよ。魔物を購入するのには一週間ぐらい時間をかけて、魔物とふれあい相性を調べる必要があるの」
「なるほど。で、俺たちはなにをしたらいいんですか?」
「テトモコシロちゃんは賢いでしょ?あなたたちも意図をくみ取っているようだし、一緒についてきてもらって魔物との相性を教えてほしいの。ね、ティナちゃん」
「魔物いっぱい?」
フィリアの呼びかけでティナが魔物に食いついた。
「そうよー。ティナちゃん。魔物がいっぱいる楽しいところだよ」
「いきたいっ」
「でしょう?お仕事のついでに魔物と遊びましょ?」
「うんっ」
俺がめんどくさいと顔に出したら、攻略対象をティナに変えやがった。
ティナは魔物に会いたいと言っているし……
そして、簡単に攻略されたティナ。
しかたがないか。
「わかりましたよ。行きます」
「ありがとう。ついてきてくれると思っていたわ」
「従魔屋なんてどこにあるんですか?」
「ここから近かいところで、一週間ぐらいでいけるヘンネルという街があるわ」
「なるほど。依頼内容としては護衛兼従魔の購入手助けですか?」
「そうなるわね。一応護衛には騎士数名もいるから安心して。だいたい一か月ぐらいよ」
「わかりました。ギルドへの依頼をお願いしますね。色々準備すませたら、受注します」
「じゃ、そうゆうことで。頼んだよ」
そういって、フィリアは優雅に部屋をさっていった。
「旅行だー」
「きゅいー」
シロとティナは旅行気分でベットの上ではしゃいでいる。
「えーと、準備するものは、食材はあるから、調味料を少し買っておくのと。宿泊道具がないから、テントに毛布、布団なんかもあってもいいか。運べるしな。それと……」
「お団子っ、アメ、クッキー」
「にゃっ」
「わふ」
「そうだな、おやつの甘いものね。肉串はいるか?たぶん、道中でも俺がつくれるよ?」
「にゃー」
屋台のは味がちがうと。
まぁ、確かに、あのたれは再現できんな。
「じゃー、いっぱいつくってもらって、後でとりにいけるようにするか」
「わふ」
宿をでて、屋台通りへと向かう。
「肉串のおにいちゃん、肉串いっぱい買いたいんだけど、どんぐらいある?」
「おう、死神の坊ちゃんか。そうだな、100本ぐらいは売れるが冷めてしまうぞ?」
「大丈夫。あとでとりにくるから作っといてよ」
「おうよ、ありがとな」
次は団子で、飴とかは瓶で売ってるから買う時でよくて、クッキーのところにはいかないとな。
次々と屋台をめぐり、大量注文していく。
屋台の人たちは急な要望だったけど、よろこんで準備してくれるらしい。
夕方に取りに来ることを伝え、ベクトル商会へと向かう。。
「あら、ソラ、ティナちゃんどうしたの?」
ミランダさんから声がかかる。
この人って商会長じゃなかったかな。
なんでいつも店にいるんだ?
会長って、お偉いさんとの商談や、事務仕事が多いイメージなんだがな。
「えっと、今度旅行するのっ」
ティナが元気よく反応する。
「そうなのね。じゃーそれの準備かしら?」
「そうだよー。えっと、テントと毛布と……」
「あとは布団なんかがあればいいかなと」
「うちにあるわよ。なんでもそろえるベクトル商会で有名なの」
まあ、大商会ですからね。ほんとなんでもあるよ。
そのまま先に行くミランダさんについていく。
「テントはみんなが寝れるサイズがいいよね。それだとこれかしら」
ミランダさんが手に持っているのは四角い箱である。
「?それがテント?」
「ちょっとみててね」
ミランダさんはそう言うと、箱に魔力を流し始めた。
そして、魔力のこもった箱を投げると、店の床に三角形の茶色のテントが現れた。
「へぇー、すごい技術だな。これだと、モコが大きいからだで入っても十分寝れそうだ」
「でしょ、革命的な技術だわ。これで移動の荷物が半減するようなものなのよ」
日本だと骨組み含め、丸めることができるが、持って歩くとしたらかなりの重量になる。
しかも、この大きさだと嵩張るだろうし。
そして、最大の利点は、設置が魔力でポンだ。
キャンプをしたことがあったが、大人数寝れるテントを立てるのに二十分以上かけた気がする。
日本であれば、大ヒット間違いないな。
「でも、中に物がある状態で箱に戻しちゃうと、中のものがでてきちゃうのよ」
「そうなのか。俺たちには関係ないかな」
テントの中のものが入ったまま、箱にできるなら、マジックバックとしても使えることになる。
そんな便利なものが、大銀貨数枚で買えるわけがないだろう。
そんなことがあれば、この世がテントであふれかえってしまう。
しかもマジックバックは魔道具として作成できておらず、ダンジョン産オンリーだそうだ。
だからこそ、スキル収納もちは重宝され、大商会で働いていたり、冒険者のクランに入ったりして収入を得ているそうだ。
「ティナこれがいい」
ティナが指さしているのは、真っ黒なマットレスと、真っ白な掛け布団。
ちゃんとみんなが寝れそうな大きさだ。
「じゃー、それで」
ついでにクッションも買い足しておく。
商売上手のミランダさんに、バーベキューセットみたいなのも進められ、買わされてしまった。
でも、確かに必要なものであったので、正直助かった。
こういう時の商売人はたまには役に立つものだ。
次は冒険者ギルドかー。
ベクトル商会を出て冒険者ギルドに向かう。
「ソラ様、お待ちしておりました。依頼の件ですね」
ギルドに入って受付に並んでいると、エレナさんから声をかけられた。
「あー、うん。」
「すでに受注書は作成できておりますので、こちらにサインをお願いします」
「ありがと」
受付の列からでて、カウンターの横で名前を書く。
「これで依頼に関しては以上になりますが、他に要件はありますか?」
「いや、ないよ。助かったよ」
さらっとギルドの用事が済んでしまった。
領主様の依頼だから優遇されたのかな?
すぐに行くとは言っていたし。
あとは、宿屋で厨房を借りて、料理を作りだめしておかないと。
何をつくろうかな。
筆者より。
今日は日曜日ですのでもう一話19:00に投稿します。
フォロー☆♡をもらえると筆者が喜びます。
では良い休日を。
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